美術館大学構想

■写真:天台宗の高僧にして京都を代表する洋画家・齋藤眞成師の画室と、御歳90を迎える師のポートレート。
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【4月18日:京都極楽真上寺真如堂へ】
天台宗の名刹として知られる京都真正極楽寺真如堂の貫主でありながら、京都洋画壇の重鎮として、これまでバルセロナ、リスボン、ニューヨークで大規模な個展を開催するなど、国際的に活躍する齋藤眞成師。6月中旬から、美術館大学構想室長の山田修市学部長の肝いりで、今年、90歳を迎える師の画業を記念する展覧会「SHINJO SAITO 一心觀佛」を洋画コース主催で開催することになりました。

18日は、齋藤師の熱心な支援者である山形美術館長の加藤千明館長と、出品作品の選定のため、山形空港から伊丹を経て新緑の京都へ向かいました。JR京都駅に降り立ったとたん、故郷の奈良を思い出し、もう無条件に里心が…。高校時代は四条にある銅駝美術工芸高校に通っていた双子の兄を訪ねて、河原町界隈で遊んだなぁ、当時の同級生たちは何をしているだろうかと感慨に耽りながらタクシーの車窓から町並を眺め、京都はさすがに街の文化的密度がすごいとつくづく実感。

京都極楽真上寺(真如堂)は、燃え立つような紅葉がつとに有名で、今の季節は新緑が眩しいほど鮮やかでした。しかし何故か、敷地内はグレーのスーツに身を包んだ新入社員たちで混雑模様。真如堂は三井財閥の菩提寺で、毎年グループの新入社員は全員、貫主である齋藤眞成師の法話を聴くのが習わしなのだそうです。仏僧として高名な方だとは、事前に加藤館長から伺っていましたが、実際にお寺を訪ねて、その伽藍の規模と格式に気圧されっぱなしでしたが、本坊でお会いした齋藤師は、とても御歳90歳には見えない凛とした静かな方でした。加藤館長を交え、しばし展覧会の構成などについて確認したのち、嵯峨野の山際に建つという画室へおじゃましました。

洋画家らしいモダンな空間には、立派な画集のコレクションと、大きな和紙に描かれたドローイングや、書の作品、そして長年使い込まれた画材が堆積し、仏僧の修行と並行して進められた、70年にも及ぶ創作の歴史を、シンと張り詰めた空気とともに物語っていました。壁面には現在制作中の巨大な曼荼羅風の抽象画が掛けられ、山形での新作展に、たいへん意欲的に取り組んでくださっている様子が伺えました。
その画風は軽妙かつ自由奔放。初期の作品はカルマ(業)をテーマにした、アバンギャルドな寓意画だったのですが、現在は天台声明の響きのように、寓意以前の色と光が、軽妙なリズムとともに、絵の中で延々と生動しているかのようです。
「このごろは何も考えずに筆を動かして、偶然生まれたり、消えたりする形のなかに、阿弥陀さんの姿を探しているような心持ちで描いているのです…」

加藤館長にもアドバイスをいただきながら、学生たちに見せるにはどのような作品がいいか打ち合わせた結果、画室から15点程、7階ギャラリー出展する作品を選ばせていただきました。その内容は1ヵ月後、山形でお目にかけます。展覧会の初日には、齋藤師に学生たちの前で書の公開制作をしていただく約束もとりつけました!

その夜は、お二人に連れられて生涯2度目の祇園へ。翌日は、春から京都精華大学の教授に就任した西雅秋さんと久しぶりの再会。

『SHINJO SAITO-一心觀佛-』
会期:2007年6月13日[水]〜6月28日[木]
開館時間:10:00〜18:00(日曜休館/入場無料)
会場:東北芸術工科大学7Fギャラリー 
企画:美術科洋画コース、美術館大学構想室
協力:京都極楽真上寺、山形美術館

開催記念講演+公開制作
「紙に点を打つところから」
日時:2007年6月13日[水]16:30〜18:00
会場:東北芸術工科大学7Fギャラリー

宮本武典(美術館大学構想室学芸員)


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