ぼくのニワトリは空を飛ぶー菅野芳秀のブログ
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正月に読んだ本
あけましておめでとうございます。
皆さんはどのようにお正月を過ごされたでしょうか?
我が家族は当然ことながら、まったく普段と変わらない暮らしでした。ニワトリにエサをやり、玉子をとってパック詰め、曜日がくればそれを配達する。変わったのは元旦の朝、お酒をいただいたのと、伝統的な風習に従って、決められた料理で食事をしたぐらいのことでしょうか。
あらためて年頭のご挨拶をいたしますが、今回はお正月の間に読んだ本を紹介させてください。
山形市に齋藤たきちさんという農民がおります。その方が昨年の秋「北の百姓記(続)」(東北出版企画)という題名の本を出版されました。一昨年に出された「北の百姓記」に続いてのことです。両方とも読み応えのある本です。どんな本かを「書評」風に書けば・・こんな本です。(以下)
三十五年ほど前になろうか。まだ私が東京の学生だったころ、よく読んでいた書物の中で幾度か「齊藤たきち・山形県・農民」の著名入りの文章に出会った。
当時、私は農家のあとつぎとして期待され、農学部に在籍してはいたものの、その道がいやで、何とか田舎に帰らない方法はないものかと考えていた。そのくせ、人生の方向を見つけられないまま、成田で起こっていた農民運動などに顔をだしていた。
その時のたきちさんの文章は、同じ農民という立場から、運動を担う成田の農民に心を寄せて書かれた、どっしりとしたものだった。農民であることに誇りをもつ、土の香りがする文章だった。
「山形にもこんな方がいるんだ。」同じ山形県人であることに親近感をもちながらも、当時の私にそれらの文章は重くこたえた。
やがて私も農民となるのだが、その時以来ずっと今日まで、「齋藤たきち」の名前はいつも気になる存在として私の中にあった。
齊藤たきちさんは山形市門伝で農業を営むかたわら、農民の立場から詩をつくるなどの創作活動に精力的に取り組んでいる方だ。山形県を代表する詩人で野の思想家、真壁仁がおこした「地下水」の同人でもある。
そのたきちさんが昨年の秋、「北の百姓記(続)」(東北出版企画)を出した。一昨年の春に出版された同名の本の続編である。「あとがき」に、先に出した本には「六十年余に渡る私の『百姓暮らしの叫び』」を、このたび出した続編には「百姓としてどう生きているか」を書いたとある。
読みながら、三十数年前の感情がよみがえってくるのを感じた。たきちさんはずっとあの時の姿勢のまま生きてこられたのだ。
彼は単なる知識人ではない。それは彼の広い肩幅と、厚い胸、がっしりとした体躯をみたら分かる。田畑に働くことでつくられた身体だ。そこから出てくる情感、思想を詩人の言葉でつづったのがこの本である。作物や郷土に対してそそがれる目がやさしい。
たきちさんは自らを「百姓」という。彼にとって百姓とは単なる職業なのではなく「生き方」そのものである。
まさにこの本には、土の上で懸命に生きてきたひとりの百姓、齋藤たきちの生き方があり、哲学があり、世界観があり、詩がある。
そのたきちさんがついに自分を「最後の百姓」と呼ぶに至った。そこまで彼を追い詰めたものは何なのか?我々とて決して無縁ではない。
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書評風の紹介はこれで終わりです。たきちさんは今月の21日、真壁仁を記念して設けられた「野の文化賞」」を受賞されます。
この二冊の本は、農業に従事されている方だけでなく、広く社会人、学生にも読んでもらいたい本です。
ナンカ、オオマジメニ、カタッチャッタナ・・・。
2007.01.10:
kakinotane
:[
メモ
/
「ぼくのニワトリは空を飛ぶ〜農業版〜」
]
本
本の紹介をありがとうございました。
さっそく、続のほうを注文しました。
読んだら、感想を書きます。
楽しみです。
2007.01.11:くさふみ:
修正
/
削除
ちょっと酔っぱらっていますが・・。
くさふみさま、「くさふみ」って、文学的にはふかーい意味合いがあるんだってね。
「続」の前に「北の百姓」をよんでください。多少重いですが、いい本だとおもいます。「くさふみ」っていう名詞を知っている方なら、楽しく接することができるのではないかとおもいますよ。書評を楽しみにしています。
2007.01.11:菅野芳秀:
修正
/
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https://kanno-nouen.jp/
菅野農園のホームページで
お米を販売しています
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「ぼくのニワトリは空を飛ぶ〜農業版〜」
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皆さんはどのようにお正月を過ごされたでしょうか?
我が家族は当然ことながら、まったく普段と変わらない暮らしでした。ニワトリにエサをやり、玉子をとってパック詰め、曜日がくればそれを配達する。変わったのは元旦の朝、お酒をいただいたのと、伝統的な風習に従って、決められた料理で食事をしたぐらいのことでしょうか。
あらためて年頭のご挨拶をいたしますが、今回はお正月の間に読んだ本を紹介させてください。
山形市に齋藤たきちさんという農民がおります。その方が昨年の秋「北の百姓記(続)」(東北出版企画)という題名の本を出版されました。一昨年に出された「北の百姓記」に続いてのことです。両方とも読み応えのある本です。どんな本かを「書評」風に書けば・・こんな本です。(以下)
三十五年ほど前になろうか。まだ私が東京の学生だったころ、よく読んでいた書物の中で幾度か「齊藤たきち・山形県・農民」の著名入りの文章に出会った。
当時、私は農家のあとつぎとして期待され、農学部に在籍してはいたものの、その道がいやで、何とか田舎に帰らない方法はないものかと考えていた。そのくせ、人生の方向を見つけられないまま、成田で起こっていた農民運動などに顔をだしていた。
その時のたきちさんの文章は、同じ農民という立場から、運動を担う成田の農民に心を寄せて書かれた、どっしりとしたものだった。農民であることに誇りをもつ、土の香りがする文章だった。
「山形にもこんな方がいるんだ。」同じ山形県人であることに親近感をもちながらも、当時の私にそれらの文章は重くこたえた。
やがて私も農民となるのだが、その時以来ずっと今日まで、「齋藤たきち」の名前はいつも気になる存在として私の中にあった。
齊藤たきちさんは山形市門伝で農業を営むかたわら、農民の立場から詩をつくるなどの創作活動に精力的に取り組んでいる方だ。山形県を代表する詩人で野の思想家、真壁仁がおこした「地下水」の同人でもある。
そのたきちさんが昨年の秋、「北の百姓記(続)」(東北出版企画)を出した。一昨年の春に出版された同名の本の続編である。「あとがき」に、先に出した本には「六十年余に渡る私の『百姓暮らしの叫び』」を、このたび出した続編には「百姓としてどう生きているか」を書いたとある。
読みながら、三十数年前の感情がよみがえってくるのを感じた。たきちさんはずっとあの時の姿勢のまま生きてこられたのだ。
彼は単なる知識人ではない。それは彼の広い肩幅と、厚い胸、がっしりとした体躯をみたら分かる。田畑に働くことでつくられた身体だ。そこから出てくる情感、思想を詩人の言葉でつづったのがこの本である。作物や郷土に対してそそがれる目がやさしい。
たきちさんは自らを「百姓」という。彼にとって百姓とは単なる職業なのではなく「生き方」そのものである。
まさにこの本には、土の上で懸命に生きてきたひとりの百姓、齋藤たきちの生き方があり、哲学があり、世界観があり、詩がある。
そのたきちさんがついに自分を「最後の百姓」と呼ぶに至った。そこまで彼を追い詰めたものは何なのか?我々とて決して無縁ではない。
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書評風の紹介はこれで終わりです。たきちさんは今月の21日、真壁仁を記念して設けられた「野の文化賞」」を受賞されます。
この二冊の本は、農業に従事されている方だけでなく、広く社会人、学生にも読んでもらいたい本です。
ナンカ、オオマジメニ、カタッチャッタナ・・・。