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Hard To Find :旭川文化企画

全国に推奨したい北海道在住の演奏家は、と尋ねられて、「Hard to Find」と答える人は、かなり演奏音楽の本質を知っているひとだと言える。
 今夜、ほぼ十年ぶりで彼らの演奏を聴いた。懐かしかった。アイルランド民謡をベースにした演奏スタイルには多くのファンがいて、プログラムが進行するにつれて会場には拍手や掛け声とともに熱気が満ちた。僕はコーヒーをすすりながら、時に目をつぶってじっくり耳を傾けた。メリハリがあって明快なアイルランド生え抜きの演奏家達にはない、東洋人ならではの控えめで穏やかな演奏風情に、聴衆は親しみ癒され聴き入ったようである。
 ハンマーダルシマを奏でるリーダーの小松崎さん、奥さんの操さんはヴァイオリン、ギターの星さん、そして、笛やマンドリンやボーランを奏でる扇柳さんの四人が、年齢を重ねた分、音色に安定と丁寧さが増したように感じた。
 プロになる前、彼らは野外での演奏を頻繁に行っていた。場所は小樽運河の時もあれば、札幌駅前通りの山野楽器店の軒下でもあった。僕はよくそうした街角の雑踏の中で黙々と演奏をする彼らの音色に耳を傾けたものだった。時折自動車騒音にかき消される演奏は、それでも歩く人々の足並みを遅らせ、あるいは立ち止まらせた。「ストリート・ミュージシャン」などと敢えて気取る風でもなかった。豪華客船タイタニックの契約演奏家たちが、船体が傾き間もなく沈みゆく中、乗客が避難を終える直前まで演奏し続けた姿に、街角での彼らが重なって見えたものだった。ただしHard to Findの四人は、人々のためにというよりは、音楽のために演奏をしている、という風であった。
 札幌というマチの文化を考える時、ここで生まれ育って今も暮らしている僕は、かなり自虐的に批判的にこのマチを見つめてきた。納税者や住民は確かにいても、住民がマチの文化の共有感が持てないのはなぜかと、このマチに疑問を持ってきた。市民構成が開拓期以来いつの時代も生え抜きよりも流入者が圧倒してきたので、良くとも悪くとも自前の文化が育たなかったのだ。それが特に演奏音楽に対する聴衆の姿勢にも現れている。素直に演奏に心酔できないのだろうか、どこか構えたり妙に冷えていたり尻込みをして聴いているようなのだ。それが演奏者にも伝わるのは当たり前であろう。
 そんな札幌の街角で、わずかばかりの投げ銭で手練の演奏を聴かせ続けてくれたHard to Findに、一抹の感謝心を抱く僕であった。正にグループ名の意味「見出し難い」音楽グループである。彼らは数少ない生え抜き演奏家として北海道人の誇りとすべき存在だといえよう。
2006.01.17:

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