札幌のハンマーダルシマー奏者 小松崎 健さん
(2005/01/13)
木箱に金属の弦を張り、木製のばちでたたいて演奏する打弦楽器「ハンマーダルシマー」。ピアノやチェンバロの祖先とされる楽器で、アイルランド音楽など民族風の旋律によく合う。札幌市東区の小松崎健さん(45)は、日本では目にすることも耳にすることも珍しいこの楽器の澄んだ音色にほれ込み、演奏を続けている。
(森井 雄一)
「星の瞬く」音色と出合う
アイルランドの伝統、バンドでも ばちで弦をたたく楽器、ハンマーダルシマーを演奏する小松崎さん。素朴で、美しい音色が響く
中高生時代、ボブ・ディランやビートルズが好きな「普通の」ギター少年だった小松崎さんは、駒沢大学(東京)在学中、ブルーグラスなどアメリカのカントリー音楽に興味を持ち、バンジョーを弾くようになった。「もっと個性的な楽器を演奏したいと思っていた」(小松崎さん)と振り返る。
大学卒業後、一時はサラリーマンとして働いたが、「自分の性格に合わない」と退職。札幌市東区で音楽喫茶を始めた。
ハンマーダルシマーと出合ったのは、その音楽喫茶の経営とバンド演奏という二足のわらじを履いていた1986年、27歳のこと。アメリカの音楽番組を収録したビデオで、司会のフォークシンガーが楽しそうに演奏しているのを見たのがきっかけだった。
「冬の夜の、星の瞬きのような音色。北海道にぴったりだと思った」と小松崎さん。
しかし、演奏しようにも、ビデオの映像だけが頼り。楽器を入手するすべもなく、最初は、ホームセンターや金物屋で木板やピアノ線を買い、楽器の手作りから始めた。
「適当に作った割に、思いがけず澄んだきれいな音色が響いた」のに気を良くした小松崎さんは、札幌市内の書店や図書館を回ったり、楽器製作家に教えてもらったりして、約1年間楽器製作に没頭した。
バンド演奏には、ヤギの皮を張った片面の太鼓ボウラン(右から2番目)など、アイルランドの伝統楽器が使われる
さらに、「みんなと音を合わせたい」と考えるようになった小松崎さんは、もともとバンド仲間だった妻の操さんや音楽仲間とともにアイリッシュバンド「HARD TO FIND」(ハード・トゥ・ファインド)を結成。その後、輸入品のダルシマーを購入し、演奏に磨きをかけた。他のメンバーも「ボウラン」というヤギの皮を張った太鼓や「ペニーホイッスル」と呼ばれるたて笛など、アイルランドの伝統楽器を演奏する。
素朴な音色と物珍しさからか、店やイベントなどの出演依頼が増え、CDも発売した。仕事が増えてスケジュール調整が難しくなったため、98年、臨時休業が増えてきた音楽喫茶を友人に譲り、小松崎さんはミュージシャンに専念することを決意。今では多くのアーティストらとも共演し、年間100件を超えるコンサート活動を行っている。
小松崎さんは仕事のない日もハンマーダルシマーを手放さない。天気のいい日には、屋外演奏もする。ヨーロッパの風情を感じさせる小樽運河一帯は、その格好の舞台。
冬が過ぎ、暖かくなれば、小樽運河のほとりで、楽しそうにハンマーダルシマーを弾く小松崎さんに出会えるかもしれない。
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