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『気密性能はなぜ重要か』のお話

気密性能は何故重要かについて考えます。

今回は、冬型結露は熱気球の原理で起こりますという記事をご案内します。

「熱せられた空気の膨張率は非常に大きく、熱気球は空気の膨張力だけで大空高く舞い上がります。住宅も暖房すると同じように室内の空気が膨張します。旧基準に示されていたⅢ~V地域の基準値、気密性能C値=5cm2/m2の場合を想定してみると、熱気球に1m2当り5cm2もの穴が開いていることになります。暖められた空気はその穴から漏気して、熱気球はとても飛び立てないでしょう。住宅の場合も全く同じように、暖められた室内空気がかなりの力で隙間から壁の中を通って外に逃げていきます。グラスウールなどの繊維系断熱材が使用されている場合は、室内の暖湿気が壁に侵入し外気に冷やされて壁内結露を発生させます。

 逆に熱気球のように気密性能が高ければ、熱せられた空気は無駄に逃げていかないので暖房熱の供給量が少なくても、住宅全体が温かくなり省エネルギー暖房が可能になります。気密性能が高い住宅では、暖房熱の供給量が少なくても壁や床・天井が輻射熱で温められ寒さを感じないので、20℃前後の温度でも全館を暖めることが可能になります。」

冬の結露を抑える為にも、気密性能を高めることが重要ですね。

 

2017.12.03:m-seino:コメント(0):[清野 光芳/レポート集]

『高断熱化と脳血管疾患』のお話

今回もNEB(ノンエナジー・ベネフィット)関連のお話で、高断熱化と脳血管疾患の記事をご紹介致します。

 

 上のグラフは、平成7年(1995年)、平成12年(2000年)、平成17年(2005年)、平成22年(2010年)の脳血管疾患及び脳梗塞の都道府県別年齢調整死亡率をグラフにしたものです。

 脳血管疾患・脳梗塞の死亡率は、各県とも年々減少して来ていますが、調査が開始された平成7年の段階では、宮城県が男女ともに日本一の脳血管疾患・脳梗塞の死亡率でした。

 脳血管疾患・脳梗塞は塩分の取りすぎている地域の代表として秋田・青森・岩手県などが多いと思われがちですが、実際には太平洋側に面して東北地方では比較的に温暖な宮城県が日本一の罹患率だったのです。

 しかし平成12年(2002年)の調査では、宮城県の罹患率は男女ともに急激に減少しています。この減少が意味するところは、宮城県の住宅性能向上の歴史が符合しています。

 平成4年(1992年・新省エネ基準:等級3)以来、調査年の平成12年の前年に施行された平成11年(1999年・次世代省エネ基準:等級4)までの間に、宮城県は住宅の温熱環境を格段に高めて行ったのでした。それが数値の減少につながっていますが、他県でも省エネルギー基準の改正の後は、罹患率が格段に減少しています。

 宮城県と同じように福島県や茨城、栃木、群馬なども脳血管疾患・脳梗塞が多いのですが、これは南九州の鹿児島や南国土佐の高知県とも一致した現象として考えることが出来ます。

 この地域に住んでいる皆さんは、自分の住んでいる地域は、暖かい地域であると自認している方々が多い、昔からの伝統的な夏型の住宅を実践してきた地域です。

 住宅の断熱施工は、現代では寒さ対策と言うよりも温暖化で暑くなっている、暑さ対策で考えられることが多くなっています。九州や四国のような蒸暑地域では、夏のエアコンが欠かせないものになってきているからです。35℃以上も記録する気候条件では、窓を開けて風通すという涼風を自然に求める生活は不可能になっているからです。

 夏の冷房のための断熱が必要になってきており、それは冬の暖房効果も高めることになります。夏の省エネルギーが動機でも、断熱・気密性能を高めることで、冬のヒートショックも防ぐことが出来ます。

 

健康維持の為に、高断熱化が是非とも必要なことは、よく分かりますね。

2017.11.19:m-seino:コメント(0):[清野 光芳/レポート集]

『24時間暖房が健康の要』のお話

家族の健康を維持し、快適な住環境を造りだすためには、住宅の高断熱化・高気密化がとても重要であることは皆様も理解して頂けると思います。

今回ご紹介する記事は、冬期間の寝室の温度を調べて24時間暖房の必要性について述べられている内容です。健康維持のためにはとても重要なポイントだと思います。(24時間暖房が健康維持の要)

 

■なぜ、24時間暖房は必要なのでしょうか。

【なぜ住まいの断熱化は、せきや喉の痛み、目や肌のかゆみ、アレルギーなど様々な症状の改善に効果が出るのでしょうか。私達の調査でも、まだ、はっきりしたことは分かっていませんが、そもそも人の体は温度が低くすぎると不調になることは誰もが認めることです。

 上図は、約40件の住宅の寝室の温湿度変動の冬期間全体の平均値を表しています。横軸は温度、縦軸は絶対湿度という空気中の水蒸気量です。

 右上がりの曲線が相対湿度です。図中、右上ピンクで示したゾーンがいわゆる快適ゾーンと呼ばれますが、ここに入っている寝室はありません。冬中、暖房を使いっ放しの欧米の生活に対し、私たちの暮らしでは、就寝中に暖房を使われていないことが一般的です。平均温度が10℃より低くなるのは、そのためです。

 寝ている間は布団などの寝具の中にいます。寝具の中さえ暖かければ、困ることはないように思いますが、私たちは深夜から朝方に掛けて、トイレに行くこともしばしばあり、その時にこの冷たさが私たちの健康をじわじわ蝕んでいると考えられます。欧米並みに24時間暖房をしても経費のかからない高性能住宅が必要なのは、省エネだけではなく健康を維持するために必要です。】

 最も快適ゾーンに近い札幌の住宅は、湿度が相対湿度で36%で5~10%程たりません。金沢の住宅は相対湿度は45%と合格ラインに達していても温度が3~5℃たりません。

 無暖房室の温度は最低10℃必要とされていますから、半分以上の住宅の寝室は、合格ラインに達していないことがわかります。

 また我々日本人の場合は、寝室を快適ゾーンにして寝る習慣はあまりないようですが、エアーコントロールがしっかりとなされている寝室では快適に寝ているのです。シティーホテルの寝室の温度がこの快適ゾーンに入っている寝室で、欧米の寝室はだいたいこのような温度コントロールがなされています。

 湿度の低い我が国の寝室では重い布団の中で汗をかいて寝ていますが、こんな処にも住宅性能の差がハッキリと現れます。シティーホテルの寝室が暑くて眠れないという人は少ないはずです。

 

住宅を高性能化することは、経費のかからない24時間暖房を可能とし、快適でより長く健康を維持するためにもとても重要なことですね。

 

2017.11.05:m-seino:コメント(0):[清野 光芳/レポート集]

『健康を阻害しない温度』のお話

寒くなってきましたので、この話をしたいと思います。

以前にもご紹介した記事ですが、なぜ高断熱・高気密が必要なのか・・・

住宅性能で健康を阻害しないための大事なお話です。

 

断熱施工が行われる理由は、理想的には住宅全体を均一な温熱環境に近づけるためです。上の図は、同じ住宅モデルを用いて、昭和55年(1980年・省工ネ基準:等級2)、平成4年(1992年・新省工ネ基準:等級3)、平成11年(1999年・次世代省工ネ基準:等級4)、平成11年(1999年・次世代省工ネ基準:等級4+α等級:2012年基準相当)の4種類の住宅の一日中暖房していない1階トイレの温度を表したものです。(盛岡Ⅲ地域)

2012年基準相当の断熱性能が高い住宅ほど、終日温度が高くなっていることが判ります。起床時間の6時の温度を比較すると1980年基準の住宅と比較して、1999年基準の住宅では4.7℃、2012年基準相当では6.7℃も高くなっています。

ヒートショックの危険のある温度は、室温10℃以下からリスクが高くなり増加してくることが判っています。従って健康を守るためには、トイレなどの無暖房室でも室温は10℃以下に下げない事が重要になります。

1999年基準(次世代省工ネ基準:等級4)の温熱環境は、健康を守るために最低限必要な温度環境であることが判ります。

しかし現状では既存住宅5000万戸の内、5%ぐらいしか1999年の「次世代省エネルギー基準」に達している住宅は無いと言われています。ほとんどの住宅が暖房設備が稼働していない状況では、10℃という健康保全温度を満たすことは出来ません。

断熱性能が重要なのは、暖房していない部屋の温度も低下させない効果です。断熱性能が高いと冬季間の窓からの日射熱や人体、照明、家電からの熱も屋外に放熱させにくくするからです。

従来の高断熱住宅は冬場対策だけが考えられて、日射遮蔽等の夏場対策が不足していました。そのために高断熱住宅は、夏暑いというマイナスイメージがありましたが、冬の環境を快適にするダイレクトゲイン等の夏場対策と共に、自立循環型住宅など夏・冬共に快適な高断熱住宅が開発されています。

我が国の省エネルギー基準もようやく、住宅が無暖房状態でも人の命を守れる水準を実現できるレベルに達してきています。

 

しっかりとした断熱・気密施工のされた高性能住宅でなければ、長きにわたり家族の健康を維持することは、難しいでしょう。無暖房状態でも人の命を守れる水準を維持し、快適な住環境を創造することが、私達住宅産業に携わる者の使命であると考えています。

 

2017.10.29:m-seino:コメント(0):[清野 光芳/レポート集]

『EB(エナジー・ベニフィット)とNEB(ノンエナジー・ベネフィット)』

  • 『EB(エナジー・ベニフィット)とNEB(ノンエナジー・ベネフィット)』

今回は、NEB(ノンエナジー・ベネフィット)について、考えてみます。(以前にも一部ご紹介した内容です)

地球温暖化防止のために化石燃料の大幅削減は、これからの地球に生きていく全ての人類にとって、大変重要な問題であることはご存知の通りです。

その為には、住宅の高性能化を推進していく必要があります。

今までは、化石燃料の消費を削減することにより経済的な恩恵が大きいと言うことで、その手段として取り組まれてきたのが住宅の高性能化なのですが、そのことによりエネルギー消費削減の他に素晴らしい副産物が潜んでいることが建築・住環境・医学等の各分野から公表されています。それがNEB(ノンエナジー・ベネフィット)という考え方だそうです。

ここでノンエナジー・ベネフィットについてお話致します。

まずは、エナジー・ベネフィットという言葉がございます。EB(エナジー・ベネフィット)とは、エネルギー削減による効用のことで住宅を高断熱化することにより、電気代が減ったなどと言ったことです。

ノンエナジー・ベネフィットとは、それ以外のことで例えば住宅を高断熱化することにより、健康性(手足の冷え・肌のかゆみ・アレルギー性・・・など健康面での改善効果)や快適性・遮音性など省エネルギー以外の効用のことだそうです。

省エネルギー化推進のため、そしてこれからの住環境を考える意味でもNEB(ノンエナジー・ベネフィット)の考え方は、非常に大事なことであると考えます。

それでは、NEB(ノンエナジー・ベネフィット)についての記事がございましたので、要約してご案内させて頂きます。

 

今までは、住宅の断熱・気密を向上させる目的として、暖房エネルギーが削減され省エネルギーに繋がるというEB(エナジー・ベネフィット)が強調されてきましたが、それは節電や地球温暖化防止などの社会貢献と共に建て主のメリットとなる光熱費の削減という金銭的なメリットが主に施主の説得材料として使われてきましたが、家全体を暖める連続暖房が主体の欧米に対して、間歇暖房が習慣の日本の暖房エネルギー消費量は3分の1~4分の1に過ぎず、高性能住宅にしても暖房エネルギーの削減金額だけでは、断熱強化分のコスト回収に長い年月がかかります。それに日本の場合は、暖房期間も欧米と比較すると短期間ですからその期間だけ、今まで通り寒い家でも厚着で乗り切れば「やがて暖かい春が来る」と言われると高断熱・高気密の話しもそこで立ち消えになってしまうといったEB(エナジー・ベネフィット)という視点だけでは、住宅の高性能化はなかなか進まないでしょう。

そこで、NEB(ノンエナジー・ベネフィット)の考え方を広めていくことが、非常に大事であると考えます。NEB(ノンエナジー・ベネフィット)は、EB以外に得られる効果に着目してEBとNEBの両輪で断熱・気密性向上の意義を語っていくことです。我が国の医療費が36兆円(2009年)で毎年1兆円ベースで増えている。その中には住環境に起因するものも多く、住宅の高断熱・高気密化はEBよりもNEB効果の方が大きいことが国交省の「健康維持増進住宅研究会」から報告されるようになって参りました。つまり我が国の住宅は、冷暖房経費を節約した分、医療費が増えるという温熱環境的には、最も不健康な住宅になっているということです。

NEBの効果は、住宅の断熱性能を上げると暖かい部屋から寒い廊下やトイレ・浴室に行ったときに起こるヒートショック(脳血管疾患・心臓病など)の危険性が低下し安全性が向上します。また住宅の快適性に関しても、断熱・気密性能を上げることで、遮音性も格段に向上し生活騒音の住宅からの出入を防止する防音効果も高くなります。さらに風邪の罹患率が低くなったり、気管支炎やアトピーが出にくくなったり、不眠が改善されたりという効果が認められたという調査・研究も発表され、高断熱・高気密住宅のNEBに対する一般消費者の関心が非常に高くなっています。

 

高断熱・高気密による住宅の高性能化は、省エネだけでなくNEB(ノンエネジー・ベネフィット)の効果により、快適で健康な住環境をつくりだしより長く維持する事を、可能にしてくれると私は考えます。

 

2017.10.22:m-seino:コメント(0):[清野 光芳/レポート集]