前原誠司国土交通相は6日、国交省発注の業務をほぼ独占的に受注している同省所管の公益法人、建設弘済会について、事業を段階的に民間へ移管したうえで、3年以内を目途に解散させる方針を明らかにした。全国の空港で駐車場を運営している公益法人の空港環境整備協会(整備協)についても、事業を大幅に縮小する考えを示した。
両法人とも国交省からの天下りの受け皿になっており、建設弘済会には4358人の職員のうち548人が国交省OB。一方、整備協にも68人の国交省OBが天下っている。前原国交相は会見で「天下り団体をなくすという毅然(きぜん)たる態度で臨む」と強調した。
前原国交相は建設弘済会について今後、外部有識者を交えた検討チームを省内に設け、民間事業者への事業譲渡や職員4千人の再就職について検討する方針を示した。弘済会が保有する預金や有価証券など計約420億円の資産の一部を職員の退職金などに充当し、残りを国庫に寄付する。
一方、整備協が保有する約170億円の資産について前原国交相は「(空港の)駐車場料金の値下げに使うのか、国庫にどの程度寄付できるのか今後議論していきたい」と述べた。
感想:当然ですよね。4000人の再就職先の確保が問題と言うが、それこそ官の論理であって、民間なら再就職先は保障されないのが常識。ハローワークに行って職をさがすのが当たり前なのだが、ハローワークには、こんなおいしい就職先は絶対ないし、それがわかってるので、醜く屁理屈つけて反対するだろうなあ。それと、3年後政権が代わっていたらどうなるんだろう。自民党時代は温存されてきたわけだし。官の常識 民間の非常識!
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建設弘済会解散について
2010.07.07:yuchan:[いろいろ記事]
中高年に必要なのは情感を満たす性愛です
高樹 のぶ子
対談
渡辺 淳一
「枯れない人」になるために
中高年に必要なのは
情感を満たす性愛です
たとえ好意を持っていても、一歩踏み出せない人が老若男女問わず増えている昨今。
生涯¨現役¨でいる秘訣から、異性の思いを知る方法まで、
恋愛と性を描き続けるおふたりが語り尽くしました。
ラクで簡便な愛ばかりの時代
高樹 最近、恋愛することに臆病な人がすごく増えた感じがします。恋愛感情が100あったら98は成就しないのだから、ダメもと精神で、行っちゃえばいいのに、傷つくのが怖いのね。
渡辺 男が元気をなくしちゃってるからね。本来口説くのが男の仕事なのに、それをしようとしない。
高樹 だから、女性の側が動かないと、恋愛が成立しないんですよ。
渡辺 男の性って、イマジネーションだけで満たされて、射精にまでゆきつける。その意味では自立した性だからね。女性の体がなくても、十分な快感を覚え、まっとうできるところがあって。
高樹 あら、女性にもセルフサービスで快楽を得る人はいますよ。
渡辺 自慰でも得られるかもしれないけれど、本当の満足を得るには、男性に優しく抱かれたり、愛撫されて、性的な興奮が、高まって結ばれる、というプロセスが必要でしょう。でも男は一人で完結できる。
高樹 でも、それと恋愛におけるセックスの快楽とは、全然違うでしょう。
渡辺 たしかに違う。でも、快感に関してだけ言えばほとんど変わらない。いや、自慰のほうが自己中心な分だけ、満足感が高いかもしれない。それに較べると、女性と結ばれるまでの恋愛や結婚に伴う煩瑣な条件を考えると、一部の男性が自慰に走って満足するのは仕方がないかも。
高樹 煩瑣ねえ、セックスも面倒なのかな。自分とは全く違う対象に欲望を覚え、自分のほうに引き寄せ、あるいは相手に歩み寄り、なんとか関連性をつけていく、という行為そのものが。
渡辺 それが望ましい姿だけど、結婚している夫でも、妻に、「今夜いい?」「眠いから明日にして」「そこをなんとか」みたいなやりとりが面倒で、一人でポルノ見てオナニーをしているケースって多いんじゃないかな。ラクで気をつかわなくてもいいようにと、そこだけ求めていったら、やがてはお互い触れ合わず、オナニーするという形になっちゃうかも。
高樹 生身の女性よりもアニメのキャラクターに欲情する人も出てきたでしょう。生理的に人間が変わってきちゃったのかな。
渡辺 生活が簡便でラクな方向へ動いていくと、風速も変わり、やがて愛まで変わっていく。でも愛にかかわる人間関係の煩瑣を否定するのは怖いことですよね。本当は楽しくて素敵なことなのに。
年をとるのは性的にもチャンス
高樹 中高年の場合、恋愛に臆してしまうのは、自分の容色の衰えを自覚しているから、ということもありますよね。加えて男の人は精力の衰えもある。もうオジサンだしオバサンだし、という負い目を乗り越えて、一歩踏み出すのはたいへんなエネルギーがいります。渡辺さんは、そのあたりはどうしていらっしゃるの?
渡辺 いや、僕は年をとることって、ある意味でチャンスだとおもっているのね。なんか、年齢とともに、少し自信が出てきたようで。
高樹 性的自身が!
渡辺 ほとんどの男性は、セックスというものを、「あそこをがんばらせて、一生懸命やればいい」と思っているけど、性の快楽ってそんなものじゃないでしょう。それより、優しく抱き寄せてゆっくり愛撫する、素敵だねと言葉をかける…そうした情感が満たされれば燃えあがるのに、かなりの男は、へたなモノを入れて激しく動いて終わり、ですよね。
高樹 みんなわかってないから…。
渡辺 そう、自己というか、男性中心の考えが強くて。
高樹 ただ、若いころのように自分のモノでは、もはや相手を満足させることができないという男としての哀しみみたいなものはあるでしょう。
渡辺 それはある程度仕方がない。でも愛撫にはいろいろな方法があるから。ある年齢から、男は射精しなくなるんです。交感神経が強くないと射精ってできないから。
高樹 だけど、射精しないと男の満足は得られないんでしょ?
渡辺 そういう満足じゃなくて、愛する女性が満足する姿を見る満足。
高樹 ふーん、女性が満足すれば、射精しなくてもおとなしくなるんだ。
渡辺 そもそも、なぜ男が女性に対して一生懸命セックスしたり、愛情をかけたり、お金を使ったりするかというと、自分というものを受け入れ、愛するようにさせるため。それが男の快感だから。
高樹 なついてくれる人がいい。
渡辺 なつくというか、優しく受け入れてくれる人、自分の意見に賛成してくれる人。
「背中掻いて」といったら、すぐ掻いてくれる人。男は、そういうことで受け入れられ、
認められて強くなる生き物だから。
高樹 だから、男性が年齢を積み重ねて弱くなってきたら、女性もそのぶん優しくならないと成立しない。
渡辺 いや、違う。
高樹 えっ?違うの?
渡辺 無理して合わせるというのでなく、愛で満たされていたら、女性は自然に優しくしてくれますよ。
高樹 なるほどね。でも、いぬにちゃんとえさをやれば、なついてくれる、みたいな感じもするけれど。
渡辺 つまり僕がいいたいのは、射精する能力が衰えても、カバーする方法は十分にあるということ。広い意味でのスローラブかな。それを実行していけば、それなりの存在感を持つことができる。自分がここまで尽くして、その結果、女性はこれだけ自分につくしてくれるんだ、と。
高樹 じゃあ、単純に射精だけが男女の関わりだと思っている男性は、年をとったとたんにコミュニケーション能力がガクンと落ちますね。
渡辺 定年になって奥さんに突然冷たくされる男は、そのタイプかも。
いい男の陰に年上女性あり
高樹 今のお話、ぜひ男性に聞かせたい。すごく勇気づけられると思うな。「オレはもう勃たないから、女性とはかかわれない、恋愛できない」とあきらめる必要はないってことですよね。いっぽう、私たち女性にとっても、自分がいつまで性的な対象でいられるのかはとても気になるところ。私、酔っぱらうとついリサーチかけちゃうもの。「ね、私を抱ける?『うん』っていっても、『ではひとつよろしく』とはいわないから、心配しないで正直に答えて」って(笑)。この年になると、男性が40歳だったりすると、この人にとって私は女か女でないかを考えてしまうわけですよ。
渡辺 僕は40代のときに60歳になったばかりの女性と関係したことがありますよ。
高樹 ほんとに?それ、私の夢なんですけど。ぴちぴちギャルがいっぱいいるのに、60歳の彼女のなにがよかったの?
渡辺 セックスが素敵だった。それからそこまでの過程も素敵で。その人のご主人とも僕は知り合いだったんだけど…。
高樹 じゃあ、そのご夫婦の間にはセックスがなかったのね。
渡辺 ところがね、あるパーティーでご夫婦といっしょだったとき、奥さんに「渡辺さん踊りましょうよ」と誘われたんです。そして踊っているうちに奥さんが吸いつくようにぽったり体をつけてくる。それで僕があって、「ご主人、見てますよ」とささやくと「いいのよ。あの人、こうすると興奮して今夜私を抱くの。だから、もっとくっついて」って。
高樹 かなりの女性ですね、それは。
渡辺 そんなことをしているうちに、関係ができるのは当然でしょ。
高樹 当たり前です。その人がベッドで若い男をどれだけ狂わせるか、想像がつくなあ。
渡辺 そのころ、僕にはほかにも女性がいたのに、奥さんの方にひかれちゃった。セックスもいいけど、とにかく雰囲気がいい。なんともいえない柔らかな。
高樹 ああ、包んでもらえるような大きさがあったんですね。いいお話。
渡辺 年齢を重ねた女性の方が素敵ですよ。そう思う男は少なくないと思うな。
高樹 私のリサーチによると、何歳の女性までならOKかという線引きは、その男性の年齢には関係なく、女性へのキャパシティ次第。これまで私が恋したいい男たちや、たいてい若いころにうんと年上の女性とつきあった経験がある。そういう経験を持つ人は、女性のキャパも広いんですよ。年齢じゃなくて、その女性の持っている何かに感応する力が磨かれているっていうのかな。それって、いい男の必須条件ですよね。
渡辺 僕の初体験は18歳だったけど、全然うまくできなかった。でも、その後長くつきあった7歳年上の洋裁学校の先生とは、素晴らしい体験をしたな。
高樹 ね、だから、渡辺さんもキャパが広い。男の人にも、もう少し豊かになってほしいと思うな。シワの数にごまかされないで、女性の中のセクシーさに反応する感性を持ってほしい。そうすれば、お互いにときめくことができるのに。つまらない男ほど「女は若い方がいい」といいますよね。
渡辺 うん、なにもわかっていない男はいっぱいいるね。妻がヨン様に夢中になり、韓国まで追っかける姿を見て「バカなことをしてる」と冷笑する夫がいるじゃないですか。でもバカなことをさせているのは自分だ、ってことに気がつかないんだな。自分がつまらない夫だから、妻はヨン様にときめくことで満たしているのに。僕は日本中の中高年の女性に、もっともっとときめいてほしいと思う。ときめく相手は、ヨン様でもだれでもいいから。
本命か遊びかを見抜く試薬とは
高樹 日本の男性は女性に対して言葉が足りないと思います。渡辺さんには、決めゼリフはありますか。
渡辺 素敵な部分をほめることかな。
高樹 でも、ほめるって案外難しい。相手が自信を持っていて、かつ客観的に見てもいい、という美点をまず見つけ出さないことには、的はずれになっちゃう。
渡辺 いいの、的はずれでも。とにかく言葉が大事。「今日はキレイだね」「肌が輝いている」など、顔をほめるのが難しかったら「ヘアスタイルが決まってるよ」とか。日本の男はそんなことをいうと軽く見られると思うのか、あんまり女性をほめないよねえ。でもある意味、心を入れなければほめるのは簡単なんだけど。
高樹 心を入れないと、相手に見破られてしまうのでは?
渡辺 そんなことはない。ほめられればだれだってうれしい。
高樹 いわれ慣れしている人も?
渡辺 それでもほめる。「高樹さん、最近、とってもいい小説を書いていらっしゃいますね」っていわれたら悪い気しないでしょ。
高樹 当たり前です。もっといって、もっといって、と思う。(笑)
渡辺 それと同じですよ。
高樹 じゃあ、この女を口説いてベッドに誘いたい、というときは?「素敵だよ」「キレイだよ」だけじゃなく、「君と寝たい」とか「君の体に触れたい」という決定的な言葉がやっぱり必要じゃないの?
渡辺 もちろん。最近の男はそれをいわない?
高樹 その一言がないために、いっしょに食事に行ったり、飲みに行ったりはするけれど、その先へ進めず、相手の気持ちを測りかねてうじうずする女性が多いんですよ。渡辺さんのようなアグレッシブな男性は近頃とても少なくて、恋愛も結婚も女性が主体にならないと動かない時代です。それを見ていると、男に使う「試薬」脈ありかどうかを判断するものとは何なのかを、女性たちに提示してあげたいの。
渡辺 なるほどね。ただ、男から口説くときに、相手の行為の度合いをテストする方法はあるよ。僕は愛のテスティングって、いってるんだけど。
高樹 試薬とはまさにそう、テスティングなんですよ。
渡辺 たとえば、いっしょに飲んでいて、だいぶいい感じかな?もう一歩近づきたいなと思ったら、「これ、うまいよ」といって、口をつけたグラスを差し出す。受け取って飲んでくれたら有力。
高樹 ええっ、私も飲みますけど、有力かどうかわからないですよ。
渡辺 でも、嫌いな人のなら絶対飲まない。それから、バーのカウンターで並んで座っているとき、軽く膝を触れあう、パッと引かれたら可能性なし。触れたまま黙っていたら、可能性あり。また、「ねえ」と軽く肩に触れ、さらに紙に触れても避けない。そこまでいったら、かなり有力。
高樹 今おっしゃったことを女性が男性にした場合、嫌がる人はいませんよね。男は女に触れられてイヤだとは思わない生き物ですし。でも、女は好きな男ならうれしいけど、好きでもない男だと嫌悪感を覚える。そこが根本的に違うところで…。
渡辺 たしかに、女が男の気持ちを測るテストとしては、少し違うかも。
高樹 いよいよもって、女性が主体的に関係をつくっていこうとするときの困難が見えてきましたねえ。
渡辺 あと、女性は何でもハッキリさせたがるじゃないですか。でも男は、あんまり本当のことをいわない。今抱き合っていて幸せなのに、明日はどうするの?昨日は何をしていたの?と、問い詰められるのはうっとうしい。昨日は他の子とデートしてた、なんていえないでしょう。
高樹 女にとっては問いかけること自体が愛なんですよ。大切だからこそ、自分は本命なのか遊びなのか、試薬を振りかけながらリサーチする。男は真実に対して受け身で、女は真実の追究者だから、そのせめぎあいがおもしろくもあるんだけど、女としてはいらだちが出てくる。
渡辺 僕のことが好きなら、僕の好きなようにさせてほしい。そんな気持ちになることもあるね。
高樹 それって、究極の男のわがまま。そういう男女の決定的な違いによって、恋愛のあらゆる懊悩が出てくるんです。でも、幸せですね、渡辺さん。そんなことをぬけぬけといえる男性はめったにいませんよ。
渡辺 高樹さんのいいたいことはよくわかりました。これまで女性は受け身で積極的に自分から動くことがなかった。それを変えたいという、それは大切なことだよね。
高樹 私は女性たちに、記憶のどこかにこびりついている、人を恋うるやるせなさを思い出してほしいの。人を好きになって損はありません。若くなろうとするし、キレイにもなるれ。満たされない結果に終わっても、恋はしないよりしたほうがいい。
渡辺 もう何歳だから恋はできない、ときめつける必要はない。年をとればとるほど個人差が大きくなる。「最近の若者」とか「最近の30代」とひとくくりにできても、60代、70代になると共通項がない。老けこんでいるいる人もいるし、活発な人もいて、ひとつにくくれない。60歳の女はダメ、なんていっている男は、最初から相手にしないことですよ。もっともっと柔軟な男がこの世にはいるから。
高樹 なんだか私、欲が出てきちゃった。40代の男を探して、悪魔的なかわいい女になる。よし、がんばるぞ、という気持ちになりました。
対談
渡辺 淳一
「枯れない人」になるために
中高年に必要なのは
情感を満たす性愛です
たとえ好意を持っていても、一歩踏み出せない人が老若男女問わず増えている昨今。
生涯¨現役¨でいる秘訣から、異性の思いを知る方法まで、
恋愛と性を描き続けるおふたりが語り尽くしました。
ラクで簡便な愛ばかりの時代
高樹 最近、恋愛することに臆病な人がすごく増えた感じがします。恋愛感情が100あったら98は成就しないのだから、ダメもと精神で、行っちゃえばいいのに、傷つくのが怖いのね。
渡辺 男が元気をなくしちゃってるからね。本来口説くのが男の仕事なのに、それをしようとしない。
高樹 だから、女性の側が動かないと、恋愛が成立しないんですよ。
渡辺 男の性って、イマジネーションだけで満たされて、射精にまでゆきつける。その意味では自立した性だからね。女性の体がなくても、十分な快感を覚え、まっとうできるところがあって。
高樹 あら、女性にもセルフサービスで快楽を得る人はいますよ。
渡辺 自慰でも得られるかもしれないけれど、本当の満足を得るには、男性に優しく抱かれたり、愛撫されて、性的な興奮が、高まって結ばれる、というプロセスが必要でしょう。でも男は一人で完結できる。
高樹 でも、それと恋愛におけるセックスの快楽とは、全然違うでしょう。
渡辺 たしかに違う。でも、快感に関してだけ言えばほとんど変わらない。いや、自慰のほうが自己中心な分だけ、満足感が高いかもしれない。それに較べると、女性と結ばれるまでの恋愛や結婚に伴う煩瑣な条件を考えると、一部の男性が自慰に走って満足するのは仕方がないかも。
高樹 煩瑣ねえ、セックスも面倒なのかな。自分とは全く違う対象に欲望を覚え、自分のほうに引き寄せ、あるいは相手に歩み寄り、なんとか関連性をつけていく、という行為そのものが。
渡辺 それが望ましい姿だけど、結婚している夫でも、妻に、「今夜いい?」「眠いから明日にして」「そこをなんとか」みたいなやりとりが面倒で、一人でポルノ見てオナニーをしているケースって多いんじゃないかな。ラクで気をつかわなくてもいいようにと、そこだけ求めていったら、やがてはお互い触れ合わず、オナニーするという形になっちゃうかも。
高樹 生身の女性よりもアニメのキャラクターに欲情する人も出てきたでしょう。生理的に人間が変わってきちゃったのかな。
渡辺 生活が簡便でラクな方向へ動いていくと、風速も変わり、やがて愛まで変わっていく。でも愛にかかわる人間関係の煩瑣を否定するのは怖いことですよね。本当は楽しくて素敵なことなのに。
年をとるのは性的にもチャンス
高樹 中高年の場合、恋愛に臆してしまうのは、自分の容色の衰えを自覚しているから、ということもありますよね。加えて男の人は精力の衰えもある。もうオジサンだしオバサンだし、という負い目を乗り越えて、一歩踏み出すのはたいへんなエネルギーがいります。渡辺さんは、そのあたりはどうしていらっしゃるの?
渡辺 いや、僕は年をとることって、ある意味でチャンスだとおもっているのね。なんか、年齢とともに、少し自信が出てきたようで。
高樹 性的自身が!
渡辺 ほとんどの男性は、セックスというものを、「あそこをがんばらせて、一生懸命やればいい」と思っているけど、性の快楽ってそんなものじゃないでしょう。それより、優しく抱き寄せてゆっくり愛撫する、素敵だねと言葉をかける…そうした情感が満たされれば燃えあがるのに、かなりの男は、へたなモノを入れて激しく動いて終わり、ですよね。
高樹 みんなわかってないから…。
渡辺 そう、自己というか、男性中心の考えが強くて。
高樹 ただ、若いころのように自分のモノでは、もはや相手を満足させることができないという男としての哀しみみたいなものはあるでしょう。
渡辺 それはある程度仕方がない。でも愛撫にはいろいろな方法があるから。ある年齢から、男は射精しなくなるんです。交感神経が強くないと射精ってできないから。
高樹 だけど、射精しないと男の満足は得られないんでしょ?
渡辺 そういう満足じゃなくて、愛する女性が満足する姿を見る満足。
高樹 ふーん、女性が満足すれば、射精しなくてもおとなしくなるんだ。
渡辺 そもそも、なぜ男が女性に対して一生懸命セックスしたり、愛情をかけたり、お金を使ったりするかというと、自分というものを受け入れ、愛するようにさせるため。それが男の快感だから。
高樹 なついてくれる人がいい。
渡辺 なつくというか、優しく受け入れてくれる人、自分の意見に賛成してくれる人。
「背中掻いて」といったら、すぐ掻いてくれる人。男は、そういうことで受け入れられ、
認められて強くなる生き物だから。
高樹 だから、男性が年齢を積み重ねて弱くなってきたら、女性もそのぶん優しくならないと成立しない。
渡辺 いや、違う。
高樹 えっ?違うの?
渡辺 無理して合わせるというのでなく、愛で満たされていたら、女性は自然に優しくしてくれますよ。
高樹 なるほどね。でも、いぬにちゃんとえさをやれば、なついてくれる、みたいな感じもするけれど。
渡辺 つまり僕がいいたいのは、射精する能力が衰えても、カバーする方法は十分にあるということ。広い意味でのスローラブかな。それを実行していけば、それなりの存在感を持つことができる。自分がここまで尽くして、その結果、女性はこれだけ自分につくしてくれるんだ、と。
高樹 じゃあ、単純に射精だけが男女の関わりだと思っている男性は、年をとったとたんにコミュニケーション能力がガクンと落ちますね。
渡辺 定年になって奥さんに突然冷たくされる男は、そのタイプかも。
いい男の陰に年上女性あり
高樹 今のお話、ぜひ男性に聞かせたい。すごく勇気づけられると思うな。「オレはもう勃たないから、女性とはかかわれない、恋愛できない」とあきらめる必要はないってことですよね。いっぽう、私たち女性にとっても、自分がいつまで性的な対象でいられるのかはとても気になるところ。私、酔っぱらうとついリサーチかけちゃうもの。「ね、私を抱ける?『うん』っていっても、『ではひとつよろしく』とはいわないから、心配しないで正直に答えて」って(笑)。この年になると、男性が40歳だったりすると、この人にとって私は女か女でないかを考えてしまうわけですよ。
渡辺 僕は40代のときに60歳になったばかりの女性と関係したことがありますよ。
高樹 ほんとに?それ、私の夢なんですけど。ぴちぴちギャルがいっぱいいるのに、60歳の彼女のなにがよかったの?
渡辺 セックスが素敵だった。それからそこまでの過程も素敵で。その人のご主人とも僕は知り合いだったんだけど…。
高樹 じゃあ、そのご夫婦の間にはセックスがなかったのね。
渡辺 ところがね、あるパーティーでご夫婦といっしょだったとき、奥さんに「渡辺さん踊りましょうよ」と誘われたんです。そして踊っているうちに奥さんが吸いつくようにぽったり体をつけてくる。それで僕があって、「ご主人、見てますよ」とささやくと「いいのよ。あの人、こうすると興奮して今夜私を抱くの。だから、もっとくっついて」って。
高樹 かなりの女性ですね、それは。
渡辺 そんなことをしているうちに、関係ができるのは当然でしょ。
高樹 当たり前です。その人がベッドで若い男をどれだけ狂わせるか、想像がつくなあ。
渡辺 そのころ、僕にはほかにも女性がいたのに、奥さんの方にひかれちゃった。セックスもいいけど、とにかく雰囲気がいい。なんともいえない柔らかな。
高樹 ああ、包んでもらえるような大きさがあったんですね。いいお話。
渡辺 年齢を重ねた女性の方が素敵ですよ。そう思う男は少なくないと思うな。
高樹 私のリサーチによると、何歳の女性までならOKかという線引きは、その男性の年齢には関係なく、女性へのキャパシティ次第。これまで私が恋したいい男たちや、たいてい若いころにうんと年上の女性とつきあった経験がある。そういう経験を持つ人は、女性のキャパも広いんですよ。年齢じゃなくて、その女性の持っている何かに感応する力が磨かれているっていうのかな。それって、いい男の必須条件ですよね。
渡辺 僕の初体験は18歳だったけど、全然うまくできなかった。でも、その後長くつきあった7歳年上の洋裁学校の先生とは、素晴らしい体験をしたな。
高樹 ね、だから、渡辺さんもキャパが広い。男の人にも、もう少し豊かになってほしいと思うな。シワの数にごまかされないで、女性の中のセクシーさに反応する感性を持ってほしい。そうすれば、お互いにときめくことができるのに。つまらない男ほど「女は若い方がいい」といいますよね。
渡辺 うん、なにもわかっていない男はいっぱいいるね。妻がヨン様に夢中になり、韓国まで追っかける姿を見て「バカなことをしてる」と冷笑する夫がいるじゃないですか。でもバカなことをさせているのは自分だ、ってことに気がつかないんだな。自分がつまらない夫だから、妻はヨン様にときめくことで満たしているのに。僕は日本中の中高年の女性に、もっともっとときめいてほしいと思う。ときめく相手は、ヨン様でもだれでもいいから。
本命か遊びかを見抜く試薬とは
高樹 日本の男性は女性に対して言葉が足りないと思います。渡辺さんには、決めゼリフはありますか。
渡辺 素敵な部分をほめることかな。
高樹 でも、ほめるって案外難しい。相手が自信を持っていて、かつ客観的に見てもいい、という美点をまず見つけ出さないことには、的はずれになっちゃう。
渡辺 いいの、的はずれでも。とにかく言葉が大事。「今日はキレイだね」「肌が輝いている」など、顔をほめるのが難しかったら「ヘアスタイルが決まってるよ」とか。日本の男はそんなことをいうと軽く見られると思うのか、あんまり女性をほめないよねえ。でもある意味、心を入れなければほめるのは簡単なんだけど。
高樹 心を入れないと、相手に見破られてしまうのでは?
渡辺 そんなことはない。ほめられればだれだってうれしい。
高樹 いわれ慣れしている人も?
渡辺 それでもほめる。「高樹さん、最近、とってもいい小説を書いていらっしゃいますね」っていわれたら悪い気しないでしょ。
高樹 当たり前です。もっといって、もっといって、と思う。(笑)
渡辺 それと同じですよ。
高樹 じゃあ、この女を口説いてベッドに誘いたい、というときは?「素敵だよ」「キレイだよ」だけじゃなく、「君と寝たい」とか「君の体に触れたい」という決定的な言葉がやっぱり必要じゃないの?
渡辺 もちろん。最近の男はそれをいわない?
高樹 その一言がないために、いっしょに食事に行ったり、飲みに行ったりはするけれど、その先へ進めず、相手の気持ちを測りかねてうじうずする女性が多いんですよ。渡辺さんのようなアグレッシブな男性は近頃とても少なくて、恋愛も結婚も女性が主体にならないと動かない時代です。それを見ていると、男に使う「試薬」脈ありかどうかを判断するものとは何なのかを、女性たちに提示してあげたいの。
渡辺 なるほどね。ただ、男から口説くときに、相手の行為の度合いをテストする方法はあるよ。僕は愛のテスティングって、いってるんだけど。
高樹 試薬とはまさにそう、テスティングなんですよ。
渡辺 たとえば、いっしょに飲んでいて、だいぶいい感じかな?もう一歩近づきたいなと思ったら、「これ、うまいよ」といって、口をつけたグラスを差し出す。受け取って飲んでくれたら有力。
高樹 ええっ、私も飲みますけど、有力かどうかわからないですよ。
渡辺 でも、嫌いな人のなら絶対飲まない。それから、バーのカウンターで並んで座っているとき、軽く膝を触れあう、パッと引かれたら可能性なし。触れたまま黙っていたら、可能性あり。また、「ねえ」と軽く肩に触れ、さらに紙に触れても避けない。そこまでいったら、かなり有力。
高樹 今おっしゃったことを女性が男性にした場合、嫌がる人はいませんよね。男は女に触れられてイヤだとは思わない生き物ですし。でも、女は好きな男ならうれしいけど、好きでもない男だと嫌悪感を覚える。そこが根本的に違うところで…。
渡辺 たしかに、女が男の気持ちを測るテストとしては、少し違うかも。
高樹 いよいよもって、女性が主体的に関係をつくっていこうとするときの困難が見えてきましたねえ。
渡辺 あと、女性は何でもハッキリさせたがるじゃないですか。でも男は、あんまり本当のことをいわない。今抱き合っていて幸せなのに、明日はどうするの?昨日は何をしていたの?と、問い詰められるのはうっとうしい。昨日は他の子とデートしてた、なんていえないでしょう。
高樹 女にとっては問いかけること自体が愛なんですよ。大切だからこそ、自分は本命なのか遊びなのか、試薬を振りかけながらリサーチする。男は真実に対して受け身で、女は真実の追究者だから、そのせめぎあいがおもしろくもあるんだけど、女としてはいらだちが出てくる。
渡辺 僕のことが好きなら、僕の好きなようにさせてほしい。そんな気持ちになることもあるね。
高樹 それって、究極の男のわがまま。そういう男女の決定的な違いによって、恋愛のあらゆる懊悩が出てくるんです。でも、幸せですね、渡辺さん。そんなことをぬけぬけといえる男性はめったにいませんよ。
渡辺 高樹さんのいいたいことはよくわかりました。これまで女性は受け身で積極的に自分から動くことがなかった。それを変えたいという、それは大切なことだよね。
高樹 私は女性たちに、記憶のどこかにこびりついている、人を恋うるやるせなさを思い出してほしいの。人を好きになって損はありません。若くなろうとするし、キレイにもなるれ。満たされない結果に終わっても、恋はしないよりしたほうがいい。
渡辺 もう何歳だから恋はできない、ときめつける必要はない。年をとればとるほど個人差が大きくなる。「最近の若者」とか「最近の30代」とひとくくりにできても、60代、70代になると共通項がない。老けこんでいるいる人もいるし、活発な人もいて、ひとつにくくれない。60歳の女はダメ、なんていっている男は、最初から相手にしないことですよ。もっともっと柔軟な男がこの世にはいるから。
高樹 なんだか私、欲が出てきちゃった。40代の男を探して、悪魔的なかわいい女になる。よし、がんばるぞ、という気持ちになりました。
2010.01.31:yuchan:[いろいろ記事]
高橋恵子 いつでも「初めて」をあじわえる
いつでも「初めて」を味わえる
別々の性に生まれたのだから、
それを堪能したい 高橋 惠子
同世代の方々が再婚したり、恋愛したりしている姿を見ると、いい時代になったなと思います。
出会ってしまったのなら突き進むのも悪くない50代はこわいものナシ
50代も半ばになりましたが、以前にもましてのびのびおおらかといいますか、どんどん自由になっていく気がします。
北海道の原野で育った私が、年齢とともに”自然児”に還っていく感じ(笑)。30代、40代のころは母として、ずいぶん時間や気持ちを傾けたきたけれど、だんだん役割の比重が軽くなり、ようやく一人の女性として自分がやりたいことに好きなだけ向き合えるようになった。50代ってまさにそういう年齢なのでしょう。
私はいったい何のためにこの世に生まれてきたんだろう?なあんていう、まるで思春期のころに考えるようなことを今一度考えてみたりしましてね。そうすると答えはひとつ。
好奇心の赴くままに、意のままに生きる、ということ。そのうえ、年齢を重ねるにつれて、失敗を恐れたり、ひるんだりする気持ちがほとんどなくなってしまったものだから、もうこわいものナシみたいになってしまって。(笑)私が舞台を始めたのは40代になってから。社交ダンスに挑戦したのは、50代になってからですし、一昨年は初めて舞台で歌ったんですよ。できないことができるようになっていくプロセスは、本当に楽しい。
これから先、どんな「初めて」が私を待っているのか、と思うとワクワクします。
もう50代だから行動を自重する、という感覚はわたしにはまったくありません。
”冒険家”などと周囲から呼ばれているのも、こんな性格だからこそなのかもしれません。
日本人って、若さに固執しすぎだと思いませんか?私は16歳のときに、はじめて仕事でヨーロッパに行き、大人の魅力を尊ぶ文化に触れました。みんないい感じで年齢を重ねていて、あっちにもこっちにも素敵な大人がいっぱい。年齢が醸し出す威厳や落ち着き、豊かさ、たおやかさ。ああ、私もあんな大人になりたいと思っていましたね。実は、一度「老けたな」と「トシ」を自覚したことがあったんです。確か39歳のときでたが、その瞬間はかなりショックを受けたけれども、16歳の強烈な大人文化体験が蘇り、悪あがきすることなく、現実を受け入れることができました。
お話をしていて思い出すのは、40代の時に、共演した歌舞伎俳優の方が、「女性は50代が一番いいんだよ」と言ってくださったこと。いろいろな経験を積んできているうえに、まだまだ体力もある、気力も充実している、50代こそ最高だよ―この方の言葉どおりだったな、と54歳のいま思います。年齢を重ねることで磨かれていくもの、満たされていくものって、やっぱりある。だから、私は若い頃に戻りたいとはまったく思いません。
もちろん失われていくものもあるけれど、そんなものを数えるよりも、新たに手に入れたものを大切にしたい。たとえば、つまらないことに神経を煩わされなくなったぶん、集中力が増したこと、自分のことだけでなく周囲に目配りする余裕ができできたこと…。
女優としてだけでなく、人として生きていくうえで、必要な力がやっとついてきた感じがします。
夫婦が長続きする秘訣は
夫婦の関係も、ずいぶん変わりました。結婚当初は、まだ20代の血気盛んな頃で、ケンカばかり。私は、よよと泣き崩れるような女性をたくさん演じてきましたが、実は立ち向かっていくタイプなので、なかなか激しいバトルもありました。そんな私たちも結婚して27年。その間に、息子と娘を授かり、さらには二人の孫にも恵まれ、気がついたら、ケンカにならない形で、自分の意見を言い合う大人の知恵を身につけていました。夫(映画監督の高橋伴明さん)との会話は、かなり多いほうだと思います。二人とも白黒つけたがるタイプなので、なあなあで丸く収めてしまうと気持ちが悪い。だから、結論がでるまで話す。ケンカではなく、意見を感情的にならずに伝え合います。意見が平行線で、絶対に一つの結論を導き出すことができないときは、じゃあ、あなたはこうしてね、私はこうするわ、というふうに落ち着くことが多いですね。自分の意見は譲れないけれど、相手が別の意見であることは認め合う、という感じでしょうか。なんていうと、たいへんな議論をしているかのようですが、そんなことはまったくなくて、お話しするのが少々恥ずかしいような些細なことでなぜか意見が分かれるんですよ。先日は、「携帯電話での連絡方法」が争点になりました。うまい解決法を見つけられるようになったのも、年の功。いかげさまでさじ加減というか、塩梅がわかってきました。長続きの秘訣があるとしたら、詮索しないということでしょうか。何年ともに過ごしたところで、相手を知り尽くすことできない、と最初から思っているところが私にはあります。あります。あります。すべ知りたがるのは独占欲で、それこそしがらみのもと。相手には相手の人生があり、私には私の人生がある。それぞれの人生という二つの輪は一部分だけ共有していて、その共有部分について濃密であれば十分という気がするんです。そもそも人って固定的なものではなく、成長したり、衰えたり、変化したりするものなのだから、知り尽くそうなんて傲慢です。わからない部分が残っているからこそ、相手にドキドキもできるし、幻滅させられることもある。
それこそが、人生の味わい深さではないかと思います。
更年期のトンネルを抜けて
振り返ってみると、やはり更年期はひとつの区切りだったように思います。48歳のとき、理由もないのに体が重く、食欲もない、首も痛む…という日々が続くようになりました。驚いたのは、なにをするにもプラス思考の私が、「だめかもれない」と、マイナスの発想をするようになったこと。つらくなると病院に行き、ホルモン補充の注射を打ってもらい、漢方薬も飲みました。そんな日々が2年くらい続きましたが、気がついたらトンネルを抜けていて、再びプラス思考全開の私に戻っていました(笑)。娘によると、私は、更年期を境に[NOと言える人]になったとか。人生の残り時間を意識するようになったので、つまらないことに時間を割いていたらもったいない、と思うようになったせいかもしれません。とはいえ、あと何十年もあるのだからまだまだ相当なことができる。私と同世代の方が、再婚したり、恋愛したりしている姿を見ると、いい時代になったなあと思います。
出会ってしまったのなら突き進むのも悪くない。恋に落ちるなんてありえないとか、すべきでない、とは思わない方がいいように思います。夫婦の間でも安心しきって中性になってしまうのは、なんだか悲しいですよね。せっかく別々の性に生まれたのだからそれを堪能しないと。異性を意識するということは、いくつになってもとっても大切。わからないところ、自分とは違うところがあるからこそ、男と女は惹かれ合うんだと思うんです。だから、私は、相手に常に興味を持ち、相手の優しさや強さ、自分の持っていないものに感動できる人であり続けたいです。そのためには自分もまた相手に、興味を持ってもらえる人でいなくては。年齢を重ねるにつれて、人には多くを求めてしまう。私ってまだまだだな、と思う。そんな気持ちが私を前へ前はと向かわせるのかもしれませんね。
年齢を重ねることで磨かれていくもの、満たされていくものって、やっぱりある
プロフィール
高橋 惠子
たかはし けいこ 女優。
1955年、北海道生まれ。70年、映画「高校生ブルース」でデビュー。82年、映画監督の高橋伴明と結婚し、関根惠子から高橋惠子に改名。2009年、舞台『ガブリエル・シャネル』『細雪』などに、出演。テレビ、映画などで活躍中
別々の性に生まれたのだから、
それを堪能したい 高橋 惠子
同世代の方々が再婚したり、恋愛したりしている姿を見ると、いい時代になったなと思います。
出会ってしまったのなら突き進むのも悪くない50代はこわいものナシ
50代も半ばになりましたが、以前にもましてのびのびおおらかといいますか、どんどん自由になっていく気がします。
北海道の原野で育った私が、年齢とともに”自然児”に還っていく感じ(笑)。30代、40代のころは母として、ずいぶん時間や気持ちを傾けたきたけれど、だんだん役割の比重が軽くなり、ようやく一人の女性として自分がやりたいことに好きなだけ向き合えるようになった。50代ってまさにそういう年齢なのでしょう。
私はいったい何のためにこの世に生まれてきたんだろう?なあんていう、まるで思春期のころに考えるようなことを今一度考えてみたりしましてね。そうすると答えはひとつ。
好奇心の赴くままに、意のままに生きる、ということ。そのうえ、年齢を重ねるにつれて、失敗を恐れたり、ひるんだりする気持ちがほとんどなくなってしまったものだから、もうこわいものナシみたいになってしまって。(笑)私が舞台を始めたのは40代になってから。社交ダンスに挑戦したのは、50代になってからですし、一昨年は初めて舞台で歌ったんですよ。できないことができるようになっていくプロセスは、本当に楽しい。
これから先、どんな「初めて」が私を待っているのか、と思うとワクワクします。
もう50代だから行動を自重する、という感覚はわたしにはまったくありません。
”冒険家”などと周囲から呼ばれているのも、こんな性格だからこそなのかもしれません。
日本人って、若さに固執しすぎだと思いませんか?私は16歳のときに、はじめて仕事でヨーロッパに行き、大人の魅力を尊ぶ文化に触れました。みんないい感じで年齢を重ねていて、あっちにもこっちにも素敵な大人がいっぱい。年齢が醸し出す威厳や落ち着き、豊かさ、たおやかさ。ああ、私もあんな大人になりたいと思っていましたね。実は、一度「老けたな」と「トシ」を自覚したことがあったんです。確か39歳のときでたが、その瞬間はかなりショックを受けたけれども、16歳の強烈な大人文化体験が蘇り、悪あがきすることなく、現実を受け入れることができました。
お話をしていて思い出すのは、40代の時に、共演した歌舞伎俳優の方が、「女性は50代が一番いいんだよ」と言ってくださったこと。いろいろな経験を積んできているうえに、まだまだ体力もある、気力も充実している、50代こそ最高だよ―この方の言葉どおりだったな、と54歳のいま思います。年齢を重ねることで磨かれていくもの、満たされていくものって、やっぱりある。だから、私は若い頃に戻りたいとはまったく思いません。
もちろん失われていくものもあるけれど、そんなものを数えるよりも、新たに手に入れたものを大切にしたい。たとえば、つまらないことに神経を煩わされなくなったぶん、集中力が増したこと、自分のことだけでなく周囲に目配りする余裕ができできたこと…。
女優としてだけでなく、人として生きていくうえで、必要な力がやっとついてきた感じがします。
夫婦が長続きする秘訣は
夫婦の関係も、ずいぶん変わりました。結婚当初は、まだ20代の血気盛んな頃で、ケンカばかり。私は、よよと泣き崩れるような女性をたくさん演じてきましたが、実は立ち向かっていくタイプなので、なかなか激しいバトルもありました。そんな私たちも結婚して27年。その間に、息子と娘を授かり、さらには二人の孫にも恵まれ、気がついたら、ケンカにならない形で、自分の意見を言い合う大人の知恵を身につけていました。夫(映画監督の高橋伴明さん)との会話は、かなり多いほうだと思います。二人とも白黒つけたがるタイプなので、なあなあで丸く収めてしまうと気持ちが悪い。だから、結論がでるまで話す。ケンカではなく、意見を感情的にならずに伝え合います。意見が平行線で、絶対に一つの結論を導き出すことができないときは、じゃあ、あなたはこうしてね、私はこうするわ、というふうに落ち着くことが多いですね。自分の意見は譲れないけれど、相手が別の意見であることは認め合う、という感じでしょうか。なんていうと、たいへんな議論をしているかのようですが、そんなことはまったくなくて、お話しするのが少々恥ずかしいような些細なことでなぜか意見が分かれるんですよ。先日は、「携帯電話での連絡方法」が争点になりました。うまい解決法を見つけられるようになったのも、年の功。いかげさまでさじ加減というか、塩梅がわかってきました。長続きの秘訣があるとしたら、詮索しないということでしょうか。何年ともに過ごしたところで、相手を知り尽くすことできない、と最初から思っているところが私にはあります。あります。あります。すべ知りたがるのは独占欲で、それこそしがらみのもと。相手には相手の人生があり、私には私の人生がある。それぞれの人生という二つの輪は一部分だけ共有していて、その共有部分について濃密であれば十分という気がするんです。そもそも人って固定的なものではなく、成長したり、衰えたり、変化したりするものなのだから、知り尽くそうなんて傲慢です。わからない部分が残っているからこそ、相手にドキドキもできるし、幻滅させられることもある。
それこそが、人生の味わい深さではないかと思います。
更年期のトンネルを抜けて
振り返ってみると、やはり更年期はひとつの区切りだったように思います。48歳のとき、理由もないのに体が重く、食欲もない、首も痛む…という日々が続くようになりました。驚いたのは、なにをするにもプラス思考の私が、「だめかもれない」と、マイナスの発想をするようになったこと。つらくなると病院に行き、ホルモン補充の注射を打ってもらい、漢方薬も飲みました。そんな日々が2年くらい続きましたが、気がついたらトンネルを抜けていて、再びプラス思考全開の私に戻っていました(笑)。娘によると、私は、更年期を境に[NOと言える人]になったとか。人生の残り時間を意識するようになったので、つまらないことに時間を割いていたらもったいない、と思うようになったせいかもしれません。とはいえ、あと何十年もあるのだからまだまだ相当なことができる。私と同世代の方が、再婚したり、恋愛したりしている姿を見ると、いい時代になったなあと思います。
出会ってしまったのなら突き進むのも悪くない。恋に落ちるなんてありえないとか、すべきでない、とは思わない方がいいように思います。夫婦の間でも安心しきって中性になってしまうのは、なんだか悲しいですよね。せっかく別々の性に生まれたのだからそれを堪能しないと。異性を意識するということは、いくつになってもとっても大切。わからないところ、自分とは違うところがあるからこそ、男と女は惹かれ合うんだと思うんです。だから、私は、相手に常に興味を持ち、相手の優しさや強さ、自分の持っていないものに感動できる人であり続けたいです。そのためには自分もまた相手に、興味を持ってもらえる人でいなくては。年齢を重ねるにつれて、人には多くを求めてしまう。私ってまだまだだな、と思う。そんな気持ちが私を前へ前はと向かわせるのかもしれませんね。
年齢を重ねることで磨かれていくもの、満たされていくものって、やっぱりある
プロフィール
高橋 惠子
たかはし けいこ 女優。
1955年、北海道生まれ。70年、映画「高校生ブルース」でデビュー。82年、映画監督の高橋伴明と結婚し、関根惠子から高橋惠子に改名。2009年、舞台『ガブリエル・シャネル』『細雪』などに、出演。テレビ、映画などで活躍中
2010.01.12:yuchan:[いろいろ記事]