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 まるで海藻のヒジキが陸に生えているさまから、その名が付いた。オカヒジキはもともと、海辺の砂地に自生するアカザ科の一年草。今では初夏の訪れを感じさせる、山形県置賜(おきたま)地方の伝統野菜だ。
 栽培の始まりは江戸時代初期。庄内地方の浜で採れた種が船で最上川を上り、船着き場の砂塚村(現在の山形県南陽市)で植えられ、発祥の地となった。「置賜でヒジキといえば、オカヒジキのこと。食卓に欠かせない脇役です」と、JA山形おきたまの大沼清男さん(53)は話す。
 オカヒジキは、ビタミンやミネラルなど栄養がたっぷりの緑黄色野菜。さわやかな香りと、癖がなくシャキシャキとした食感が持ち味だ。
 JA山形おきたまには、生産者八人でつくる「南陽おかひじき部会」がある。副部会長の大友一彦さん(65)方のビニールハウスでは、今年最初のオカヒジキが、つややかに生い茂っていた。土から高さ十五センチほど、一面、芝生のように広がる緑色のじゅうたんは、触るとふわふわで、気持ちが良い。
 毎朝午前四時半から、包丁一本で刈り始める。「作業しながら数本口に入れて、味を確かめている」と大友さん。農薬は一切使わない。作付けは三月中旬から十一月末までに五回。種まきから春は四十五〜五十日、夏はその半分で収穫する。
 「最初は苦労した。分かんないことだらけで」。八年前に脱サラし、オカヒジキ専門の農家になった。きっかけは、両親の介護。「母ちゃんだけに世話をさせるわけには」と、五十四歳で早期退職した。見送った後は、「夫婦でできるし、頑張ってみっか」と、未経験の農業を始めた。
 病気や立ち枯れでハウスが全滅したときもあったが、持ち前の前向きさで乗り切ってきた。「自分がやった通り、素直に育ってくる。うまくいけば満足だが、失敗したらまた考える。それが寝なくてもいいくらい、楽しい」
 サラリーマン時代と違って、定年はない。大友さんは「体が動く限りやる。死ぬときはハウスの中だ」と、はじけるような笑顔で冗談を飛ばす。旬のオカヒジキとともに、実りの時季を迎えている。 (発知恵理子)

陰陽おじさんの知恵袋より
 「オカヒジキ」の名称は、外見が海草のヒジキに似ていることに由来しています。本来は日本全国の海岸の砂地に自生する野草ですが、江戸時代に山形県の現 南陽市で栽培されるようになり山形の代表的な野菜として6月初旬に収穫されます。
 現在はハウス栽培が盛んになり、3月下旬〜11月上旬まで市場に出回っています。美しい緑色と独特のシャキシャキした食感、また栄養価にも優れた食材です。
 効能は、肝機能を強化して、精神や感情を鎮め、胆汁の分泌を促して、悪玉コレステロールを減らし、動脈硬化や高血圧を防ぎ、糖質のエネルギー代謝を高め、糖尿病を抑制し、貧血の改善に役立ち、視力の低下や筋肉のひきつれ、手足のしびれなどの予防と改善に有効です。
 また、腎臓の蔵精作用を高め、骨や歯を丈夫にし、骨粗鬆症や足腰の衰え、関節炎、虫歯などの予防と改善に働き、体内の水分量をコントロールして、むくみや排尿困難を改善する効果があります。
 そして、腸内の善玉菌を活性化させて腸内環境を整え、便秘などを改善して、便の量を増やし、排泄をスムーズするのに役立ちます。


【2012/05/05】東京新聞WEB
2012.05.05:supobun:count(3,000):[メモ/⇒南陽のひと]
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