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号外―ルポ「としょかんワ-クショップ」その3…「夢のとしょかん」の“夢の跡”

  • 号外―ルポ「としょかんワ-クショップ」その3…「夢のとしょかん」の“夢の跡”

 

 「世代を超えて、図書館の夢を語り合おう」と勇んで出かけたが、いきなりハシゴを外されたような不愉快な気分になった。市主催の第3回「としょかんワ-クショップ(WS)」が27日に開かれ、今回から10代の高校生など若い世代も参加。7班に分かれ、この日のテ-マである「話そう みんなで夢のとしょかん」がスタ-トするはずだったが…。事前に渡された資料を見て、腰を抜かした。「本・資料・情報」、「運営・サ-ビス」、「建物・環境・施設・家具」といった文字がおどっているではないか。「これじゃ、夢を語るのではなく、賃貸住宅付き図書館の駅前立地という当局側の構想を補強する(つまりはアリバイ作り)ためだけのWSになりかねない」―急に不安が広がった。

 

 それだけではない。進行役のファシリテ-タ-の中に当局側の「新花巻図書館」構想の推進母体である「新花巻図書館周辺整備室」など建設部所属の職員3人が加わっていることにも違和感を抱いた。しかも、学校図書の運営を担う教育委員会の顔ぶれはゼロ。たとえば、図書館法(第3条)には「図書館は、更に学校教育を援助し得るように留意し…」と規定されている。「これについて、市川清志・生涯学習部長は「中身(ソフト)を充実するためには、建設部関係の職員にも入ってもらう必要がある。また、図書館は生涯学習の場であり、教育委員会が直接、所掌するわけではない」と話した。現在、当局側の構想については、議会側の「新花巻図書館整備特別委員会」が見直しを求めているほか、市民団体が10月から、構想案の撤回を訴える街頭署名運動を始めることにしている。若い世代に負けるまいと、私はこの日のために「夢のとしょかんセレクト5」を考えた。せっかくだから、この場を借りて紹介させていただく。

 

 

●日本一の「イ-ハト-ブ」図書館の実現

 

~花巻市は将来都市像として「市民パワ-をひとつに歴史と文化で拓く笑顔の花咲く温(あった)か都市(まち)/イ-ハト-ブはなまき」というスロ-ガンを掲げている。「イ-ハト-ブ」とはいうまでもなく、宮沢賢治が思い描いた理想郷「ドリ-ムランド」(『注文の多い料理店』広告チラシ)を指す。賢治ファンだけではなく、観光客の誘客も期待した“賢治ライブラリ-”を。

 

●“棺桶リスト”(「死ぬまでに行きたい世界の図書館15選」)へのノミネ-トを目指して

 

~旅行口コミサイト「トリップアドバイザ-」がかつて、全米を沸かせた映画「バケットリスト」(棺桶リスト)にあやかって、「世界の図書館15選」を公表。日本では「まちとしょテラス」(長野県小布施町立図書館)と「京都マンガミュ-ジアム」(京都市)が見事、選ばれた。「イ-ハト-ブ」図書館もぜひ、「死ぬまでに行きたい」15選入りを目標に。ちなみに、第1位はメキシコシティのヴァスコンセロス図書館。建築家アルベルト・カラチのデザインで、書架を天井から吊るした姿はまるでSF映画のようだという。100万冊までの拡張性があると言われている。

 

●『つづきの図書館』のような図書館を

 

~本書は当市出身の童話作家、柏葉幸子さんの作。「図書館のつづき」ではなく、自分の本を読んでもらった本の側が読書好きのその少女の「つづき」を知りたくなったという奇想天外な物語。図書館から本たちが飛び出してくるような、そんなワクワクする光景が目に浮かぶ。宮崎アニメの傑作「千と千尋の神隠し」は、柏葉さんの『霧のむこうのふしぎな町』が下敷きになったことでも知られる。4年前、野間児童文芸賞を受賞した、3・11(東日本大震災)を題材にした『岬のマヨイガ』は来年2月以降、舞台化される。

 

●たとえば、「ホ-ムレス」など〝変な人”でも自由に出入りできるー「誰にでも開かれた」図書館の実現を夢見て

 

~この“変な人”発言は実は市主催の若者世代対象のWSで出された。揚げ足を取るつもりは全くない。現在、公開中の米国映画「パブリック-図書館の奇跡」は寒波の中で、ホ-ムレスが図書館を占拠するという筋書きになっている。どうして、図書館側はホームレスの要求を受け入れたのか。逆にこの発言が「図書館の役割とは何か」―を根本から考え直すきっかけになれば。

 

●「成長し続ける有機体」としての図書館…進化する図書館とは!?

 

~インド図書館学の父と言われるランガナ-タンの言葉。賢治自身、「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です」(『春と修羅』序)と書いている。有機体とは実に永久不滅の現象で、その意味では「賢治」そのものが不滅ということでもある。たとえば、今年度の宮沢賢治賞は文化人類学者、今福龍太さんの『宮沢賢治/デクノボ-の叡智』が受賞し、ノンフィクション作家、梯久美子さんの最新作『サガレン』は新しい“賢治論”として注目されている。世代を継ぎながらの「賢治本」の集積に終わりはない。「イーハトーブ」図書館は進化し続ける。

 

 

 

 

(写真は世代を超えた市民が集い、「夢の図書館」を話し合うはずだったが…=9月27日午前、花巻市葛の市交流会館で)

 

 

 

 

号外―図書館特別委が「中間報告」…怒涛の“号外”3連発!?

  • 号外―図書館特別委が「中間報告」…怒涛の“号外”3連発!?

 

 「(図書館建設にかかわる)意向書の提出から早や3カ月がたとうとしているのに、市側からは何の応答もない」(6月23日付当ブログ「“意向書”なる摩訶不思議」参照)―。花巻市議会9月定例会最終日の24日、「新花巻図書館整備特別委員会」の伊藤盛幸委員長が語気を強めながら、4項目にわたる要望を中間報告の形で説明し、市側に対して前向きの対応を求めた。前日の議会運営委員会では、図書館をめぐる上田東一市長の“問題発言”がやり玉に挙がったが、この日、市長は沈黙を守り通した。反省を促すための議運での申し合わせとこの日の中間報告は小原雅道議長を通じて、上田市長に伝達される。「イ-ハト-ブ」を舞台とした“図書館戦争”はいっそう、苛烈になりそうな気配である。

 

 中間報告は―①市側の「「新花巻図書館」構想(1月29日)について、市民への説明がなされていない。すみやかに情報提供をすること、②「新花巻図書館整備基本構想」(平成29年8月)には市民の要望が網羅されており、この構想を忠実に反映すること、③「意向書」(6月25日)への誠意ある対応を求めると同時に、市民との意見交換会のアンケ-ト調査の結果を尊重すること、④事業の透明性と公平性を確保し、将来コストを見込んだ財政計画を明らかにすることの4項目。報告の中で、伊藤委員長は視察した一関図書館に触れ、「その整備に当たっては『市民による市民のための図書館』を念頭に置き、基本構想から基本計画、用地選定に至るまでまさに市民の参画と協働によって整備された」と話し、市民の頭越しに進められる当市の手法を痛烈に批判した。

 

 一方、市側が主催する「としょかんワ-クショップ」は27日に第3回目を迎える。1回目は「みんなでとしょかんに行ってみよう!花巻図書館・東和図書館」(8月23日)、2回目は「みんなでおさらい 基本構想」(9月13日)。そして、次回のテ-マは「話そう みんなで夢のとしょかん」…“夢”ときて、ハタと思い出した。そう、宮沢賢治のあの有名な文章を―「イ-ハトヴは一つの地名である。強て、その地点を求むるならばそれは、大小クラウスたちの耕してゐた、野原や、少女アリスガ(ママ)辿つた鏡の国と同じ世界の中、テパ-ンタ-ル砂漠の遥かな北東、イヴン(ママ)王国の遠い東と考へられる。実にこれは著者の心象中にこの様な状景をもつて実在したドリ-ムランドとしての日本岩手県である」(『注文の多い料理店』の広告チラシ)―

 

 ワークショップ(WS)の一般公募枠に選ばれた栄誉を汚さないよう、賢治にならって「夢のとしょかん」を大いに語ってこようと思う。みみっちい夢ではなく、大ボラでもいいから、でっかい夢を…。残り2回のテ-マは「つくってみよう みんなのとしょかん①」(10月11日)、「つくってみよう みんなのとしょかん②」ー。“市民参画”の後づけ(アリバイ)に利用されないよう、日本一の「イ-ハト-ブ図書館」を目指して!?そういえば、”図書館プロ”を自認する岡本真さん(アカデミック・リソース・ガイド代表取締役)は自戒を込めて、こんなことを語っていた。

 

 「市民参加を謳って開催されるワークショップですが、たとえば付箋にアイデアを書いて貼り出すという手法も、『なんとなくやった気にはなる』ものの、その結果として出てきたものに主催者・参加者は本当に満足しているでしょうか。往々にして起こりうるのが『ワークショップという名のヒアリングをおこなったにすぎない』という状況です。図書館関係者だけでなく、社会の多くの人がこのワークショップの罠に陥っていると思うのです。(こうしたWSは)基本的には失敗していると思っていいでしょう」(『未来の図書館、はじめませんか?』=森旭彦さんとの共著)

 

 

 

 

(写真は激しい口調で「新花巻図書館」構想を批判する伊藤委員長=9月24日午前、花巻市議会議場で。インタ-ネット中継の画面から)

号外―議会側が「市長発言」を問題視…厳重注意へ

  • 号外―議会側が「市長発言」を問題視…厳重注意へ

 

 「市政運営の基本が分かっていない」、「市民の声を無視し、地域差別を助長しかねない」、「職員への対応も強圧的。異論を許さないような空気が充満している」、「あまりにも感情的な発言が多い」―。花巻市議会9月定例会での上田東一市長の答弁内容を“検証”するための議会運営委員会(瀬川義光委員長ら8人)が23日に開かれた。二元代表制のシンボルでもある議場における首長の発言が俎上(そじょう)に上ること自体が前代未聞。この日の委員会では「上田発言」の撤回・削除はあえて求めることはせずに「今回の事態をどう受け止めるのか。今後を見守りたい」として、小原雅道議長を通じて、議会側の意志を上田市長に伝えることになった。賃貸住宅付き図書館の駅前立地という「新花巻図書館」構想の質疑を巡って、問題発言が相次いだ。たとえば―

 

 「(調査を委託した)UR(都市再生機構)の報告書、隠すなんてつもりはまったくないですよ。見せてくれと言ったら、見せました。ただ、出来はあまり良くないと思ったんですよ、実は。だから、URと一緒にこの事業、そんなことをあまり公の場で言うのは良くないんですけどね、進めるつもりはなかったんですよ。だから、お見せしなかったんですけれども、そこが間違いだったんですね」

 

 「我われは平成30年12月の段階で、名前は言わなかったけど、(立地場所の「タケダスポ-ツ店」の)場所を言って、何も反対はなかった。令和元年の12月議会で、そこは賃貸だと言ったことについても何もなかった。だから、場所が決まらないと進まないから、(今年)1月の構想の段階で、その場所と言ったんです。皆さんが実は何も言わなかったということは賛成だという、反対はないだろうと思った我われが愚かだったということです」

 

 「(立地場所として過去に候補地になった)花巻病院跡地の解体について、議員から1回も質問がありません。今回、質問したくはないですか。もし、あそこに図書館を造るんだったら、どうなるんだ。解体できるのはいつになるのか…一切ない上で、(病院敷地にまたがる)まなび学園周辺がいいですと。なんでそんな議論ができるんだ、と正直思います」

 

 「たとえば、(市郊外の新幹線新花巻駅近くの)博物館のそばが良いという意見が出てますが、私はそれはよろしくないと。旧花巻市の中に図書館がなくていいのかということなんです。市の職員は同じ考えを共有しています。みんな同じ考えで、自分たちの考えが一番良い、他はできませんねって話をして…」

 

 録画中継の文字起こしをしながら、思わずため息やら怒りが込み上げてきた。議場という神聖な場所でかくも低俗な質疑応答がまかり通っていたのか―と!?そして、ハタと心づいた。号外とは、驚天動地(きょうてんどうち)のビッグニュ-ス、たとえば直近では「安倍首相退陣」とか「菅新政権誕生」とか、たまに発行するから「号外」であるはずなのに、昨日に続く発行と相成った。ということは、我が「イ-ハト-ブ」がいま、どんな状況に置かれているのか―当ブログ紙「ヒカリノミチ通信」(宮沢賢治の「精神歌」から命名)には、その“真実”を伝える使命が与えられているということなのかも知れない。近い将来、「退陣とか誕生とか」―こんな大見出しがおどる号外を発行しなければならない時が来るのだろうか。「以(もっ)て瞑(めい)すべし」と”観念”する今日この頃である。

 

 

 

 

(写真は市長発言を“検証”する委員たち=9月24日午前、花巻市議会委員会室で)

 

 

 

 

 

号外―「新図書館」構想の撤回に向け、署名運動へ…「考える会」で決議

  • 号外―「新図書館」構想の撤回に向け、署名運動へ…「考える会」で決議

 

 「ツイッタ-やフェイスブックなどのSNS(ソ-シャル・ネットワ-キング・サ-ビス)が身近な存在になった今こそ、これを駆使して直接、上田(東一)市長へ抗議の声を届けよう」―。約100人の参加者でふくれあがった会場は異様な熱気に包まれた。「新花巻図書館を考える会」(山下牧子代表)が22日に開いたパネルディスカッション「新花巻図書館に望む」では、賃貸住宅付き図書館という市側の「新図書館」構想に対し、反対の意見が相次ぎ、今後はこの構想自体の撤回を求める署名運動を展開することで全会が一致した。

 

 この日は元小学校長の佐々木信一郎さん、元高校教員の伊藤昇さん、主婦の吉田桂子さん、保育士の高橋静子さんの4人がパネラ-として、登壇した。「(宮沢)賢治のまちにふさわしい図書館を」、「豊かな自然に恵まれた場所に立地を」、「とくに子どもにとっては、本こそが心を育てる」、また障がいがある子どもさんの親である吉田さんは「誰にでも平等に解放された図書館をつくっていこう」…などとそれぞれの立場から意見表明した。

 

 「考える会」では独自に住民アンケ-ト調査も実施。250人から回答を得た結果、6割以上(64%)の160人が「図書館の単独整備」を求め、立地場所についても半数以上(56・8%)の142人が「生涯学園都市会館(まなび学園)周辺」とし、市側が公表した「JR花巻駅前のスポ-ツ店」に賛成したのは34人(13・6%)に止まっている。一方、市議会側が8月に実施した意見交換会でのアンケ-ト調査でも「単独整備」が53・8%、「まなび学園周辺」が60・4%とほぼ同じ傾向を示した。なお、山下さんが今年2月に提出した「単独整備」を求める陳情は現在、市議会で継続審査になっている。

 

 質疑の中で私は最近、繰り返している“持論”をこう強調した。「いわゆる反対論の中には無意識のうちに、建物(箱もの)の構造や建設場所などの是非に論議が傾いてしまう危険がある。そうではなく、コロナ禍という未知の脅威のただ中に生きざるを得なくなった今、市側が主張するコンパクトシティづくり(賑わい創出)、つまり上田市政が依拠する「立地適正化計画」そのものが今後、予想されるパラダイムシフト(価値の大転換)の時代には立ちいかなくなる可能性がある。たとえば、マスクの着用や三密の防止、テレワーク導入の加速化、ソ-シャルディスタンスの確保などはそう気が付かないままにすでに、私たちに行動変容をもたらしている。いま必要なのは発想自体の根本的な転換。当市はその意味で、すんでのところで“滑りこみセ-フ”だった。なぜなら、まだ建設前の構想段階だったから。この際、すべてをいったんご破算にして、ゼロベ-スから図書館論議を積み重ねるべきではないか」―

 

 何人かがうなずいてくれたが、果たして私の真意がどこまで分かってもらえたであろうか!?図書館の未来の在るべき姿を考えることを通じて、逆に人類が初めて経験した今回のコロナパンデミックとは一体、何であるのか―ということに想像力の射程を伸ばしたいという私の「真意」を……。こうした思惟的営為こそが、”知の殿堂”とも言われる図書館論議にふさわしいのではないかと考えるのである。

 

 

 

(写真は図書館への関心の高さを現したパネルディスカッションの会場=9月22日午後、花巻市四日町の花北振興センタ-で)

号外―あれっ、“平身低頭”路線へ転換!?…図書館特別委での椿(ちん)事

  • 号外―あれっ、“平身低頭”路線へ転換!?…図書館特別委での椿(ちん)事

 

 「市民がどんな図書館を望んでいるかということが一番、大切なことだ」―。思わず、わが耳を疑った。賃貸住宅付き図書館という「新図書館」構想の強行突破の陣頭に立ってきたはずの二人の副市長が一転、これまでの手続きなどの不手際を謝罪したからである。18日に開かれた市議会側の「新花巻図書館整備特別委員会」に初めて、藤原忠雅(新花巻図書館整備推進PT・総括プロジェクトマネ-ジャ-)と長井謙(同プロジェクトマネ-ジャ-)の両副市長がそろって出席。この日の特別委では議会の総意として、中間報告の形で「市民への情報提供」や「事業の透明性、公平性の確保」などを市当局に求めることで一致したが、それに先立って議員の間から質問が相次いだ。

 

 当局側は生涯学習部と建設部の職員で今年2月に発足した「新花巻図書館整備推進プロジェクトチ-ム」(推進PT)のメンバ-が勢ぞろい。「すべてが秘密裏に進められてきた」「そもそもがボタンのかけ違い」「“住宅ショック”(賃貸住宅付き)に襲われた」…。議員たちの質問攻勢に市川清志・生涯学習部長がひとり、守勢に立たされた格好。私は目の前で無言の行を決め込む副市長のたたずまいに突然、ある種の“卑劣”をさえ覚えた。たまりかねた議員のひとりが「お二人の副市長さんはこの間の経緯をどう思っているのか」と矛先を向けた。立ち上がって頭を下げるでもなく、口をついて出たのが冒頭の謝罪発言である。5ケ月ほど前、同じ部屋で繰り広げられた光景がふと、よみがえった。

 

 「行政の政策立案に当たっては、“利益”があるかどうかが決め手になる。コストパフォ-マンス、つまり費用対効果を考える際、その事業にもうけが生じるかどうかがポイントだ。賃貸住宅との複合化構想は行政判断として間違ってはいない」―。議会側の特別委の初会合(4月21日)に出席した長井副市長は胸を張ってこんな持論を展開した。これが同じ人物の口なのか…そんな思いにとらわれた。件(くだん)のその男が今度は目の前で、こんなことをしゃべくっているではないか。「(構想案の)描き方や公表の仕方、そのタイミングなどすべての点でまずかった。反省したい。市民が望む『自分たちの図書館』こそが理想だ」―。反吐(へど)が出そうになった「ハラの底などわかったもんでない」と心底、そう思った。

 

 市長に対して、助言や補佐する立場の人物がこんなんじゃ、部長をはじめ配下の職員たちもたまったもんじゃあるまい。「市役所内には自由に議論する雰囲気がない。閉塞感というか、風通しが良くない気がする。図書館問題こそが職員全員の英知を結集する場ではないか」とある議員が発言した。その通りだと感じつつも、PTトップ2のこの体たらくを目の前に見せつけられては、第一線の職員たちに同情したい気持ちにもなるのだった。

 

 「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛(か)む」―とはこのことか。複数の議員から「12月定例会をメドに議会独自の図書館像を提示すべきだ」という意見が出され、小委員会で今後、その方向に向けた議論を深めることになった。この日は「新花巻図書館整備特別委員会(伊藤盛幸委員長ら議長を除く議員25人全員で構成)が発足してちょうど半年の節目。今からでも遅くない。発想を根本から転換し、「これぞ、図書館」という夢のある未来を私たち市民の前に示してほしい。世界最大級の”知の殿堂”と言われる「ニューヨーク公共図書館」(NYPL)の映画化(2017年)を手がけたフレデリック・ワイズマン監督はこう語っている。「NYPLは最も民主的な施設です。すべての人が歓迎されるこの場所では、あらゆる人種、民族、社会階級に属する人々が積極的に図書館ライフに参加しているのです」ー。議員諸賢の奮闘を心から期待したい。

 

 

 

(写真は質問の矢面に立たされる市川生涯学習部長(マイクの人)。前列の右側が藤原副市長、その左側が長井副市長=9月18日午前、花巻市役所の委員会室で)

 

 

 

《追記》~舌の根も乾かぬうちに…

 

 当ブログで副市長の”謝罪”を報告した、その舌の根も乾かない同日午後、市のHPに「花巻市のこれからのまちづくり―地域創生の実現に向けて」と題する87ページに及ぶ文書がアップされた。「花巻市立地適正化計画による市街地活性化と公共交通網の維持」という項目には堂々と「新花巻図書館の整備検討」がラインナップ入りを果たしていた。だから、言ったじゃないか。「ハラの底などわかったもんでない」と…。議会側への正式な”宣戦布告”と見た方が良さそうである。