HOME > 記事一覧

「黒塗り公文書」の闇を暴く(下)…「住宅付き」図書館という名のサプライズ、「病院跡地」は最初から蚊帳の外~市民を欺く「背信」行為!!??

  • 「黒塗り公文書」の闇を暴く(下)…「住宅付き」図書館という名のサプライズ、「病院跡地」は最初から蚊帳の外~市民を欺く「背信」行為!!??


 

 「思い切ったプランを持ってきた。図書館と親和性の高い事業で、駅利用者や来街者で賑わうイメージ。地域の人が集えるイメージである」―。「花巻市まちづくり勉強会」の最終回が開かれた2018(平成30)年10月3日、市側は「花巻/新図書館プロジェクト」(計画資料案)と銘打った資料をJR側に提示した。しかし、22枚にのぼる肝心の本文部分は全部、黒塗りされていた。おそらく、この闇(やみ)の中にこそ、外部には知られたくない“不都合な真実”が書かれているにちがいないと思った。

 

 「花巻市まちづくり勉強会」と「花巻駅周辺整備調査定例会」が解散された直後の2019(平成31)年1月9日、今度は副市長をトップに据えた「新花巻図書館整備プロジェクトチーム」(PT会議)が立ち上げられた。図書館整備に特化した形の組織で、2022(令和4)年7月6日まで10回の会議を持っている。公民連携の手法で紫波図書館などを手がけた(株)オガールの代表取締役、岡崎正信さんがオブザーバーとして参加するようになったのは(平成31年)4月24日以降の3回の会議。以下の発言に見られるように、専門用語を駆使した岡崎さん主導型の図書館構想が次第に輪郭を見せつつあった。

 

 「公共性や花巻らしさがあるものがベスト。電車通勤者の住宅の需要もあり、高校生も多いので塾やカフェも必要」、「市側としては、どんなテナントが良いか。図書館との親和性を持ったものを考えたい」、「JRから土地を借りて、まちづくり会社を作り、SPC(特別目的会社)を立ち上げ、市はまちづくり会社とSPCに出資。JRにはAM(投資用資産などの管理業務)とPM(不動産の管理や運営の代行業務)を担ってもらう」、「発表で地価が上がる恐れもある。タイミングを考える必要がある。テナントについては再考が必要だが、住宅と賃料をどれだけ安くできるか、再検討する」…

 

 「新花巻図書館複合施設整備事業構想」―。岡崎さんをアドバイザーに迎えた約9カ月後の2020(令和2)年1月29日、私が「1・29」“事変”と名づける、いわゆる住宅付き図書館の「駅前立地」構想がまさに青天の霹靂(へきれき)のように天から降ってきた。50年間の定期借地権を設定した上で、賃貸住宅を併設するというこの構想案は蜂の巣をつついたような騒ぎに発展した。上田(東一)市長本人はたぶん、大向こうを唸らせる“サプライズ”だと思っていたにちがいない。それが完全に裏目に出た。コロナ感染症が日本で初めて確認されたのはちょうどその2週間前。ソーシャルディスタンスと3密防止が叫ばれる中、図書館“迷走劇”はコロナ禍と並走するようにして泥沼化していった。

 

 「駅前の賑わい創出?まるで、今次のパンデミックに逆行するような図書館論議ではないか。50年たったら、撤去しなければならない公共施設など聞いたことがない。」―。議会側は直ちに「新花巻図書館整備特別委員会」を設置。市民の意見を聞くために急きょ、開かれたWS(ワークショップ)ではこの案に賛意を示す参加者がゼロという前代未聞の結果に終わった。岡崎さんに丸投げされた形の、いわゆる”上田私案”は1年も持たずにその年の11月12日、住宅併設と定期借款の部分の撤回に追い込まれた。ちなみにこの際、岡崎さんに支払われた業務委託料はざっと500万円にのぼった。

 

 図書館に複合的な付加価値を付けることを求めていたJR側の攻勢がこの前後から目立つようになった。当時の会議録や復命書にはこんな強気の発言が載っている。

 

 「住宅が上に乗ることで、賑わいの観点でプラスアルファがあるという意味合いもあり、今回協力することにしているので、それが変わるとなると振り出しに戻る可能性があると思う」(令和2年8月26日付)、「大元の『賑わいのある図書館』というところから、借地(50年間の賃貸借)プラス複合施設ということを想定して協議させていただいてきたと認識している。その後だんだん、(JR)用地を買うことを検討するとか、図書館単体という形など状況が色々変わってきているので、根本的な部分が心配である」(同10月9日付)…

 

 「駅前か病院跡地か」―。一見、中立性が担保されてきたかのような“立地”論争も黒塗り公文書の裏側から見れば、一貫してJR主導型で進められてきたことが手に取るように分かる。その主従関係を象徴するような発言がある。“サプライズ”構想が暗礁に乗り上げつつあった時期、市側はひれ伏すばかりにこう、訴えている。

 

 「お願いの部分ではあるが、市が土地を購入することについて、再検討してもらえないかというのが1点目である。2点目は定期借地とは違い普通借地は期間を更新することになるので、普通借地権を設定してもらえないかということである。3点目は定期借地権の期間について、50年という期間が短すぎるという意見もある。この期間を長くすることは出来ないかという相談である」(令和2年9月14日開催のPT会議)

 

 全文黒塗りの「花巻/新図書館プロジェクト」には一体、何が描かれていたのか。「思い切ったプラン」と胸を張ったその“のり弁”にはおそらく、行き交う人々で賑わうJR花巻駅前のイメージ図が付されていたはずである。そのシンボルともいえる、住宅付き図書館の「駅前」立地構想がコケてしまった。ある意味で、絵に描いたような“失政”劇である。

 

 「図書館と橋上化とは別物のプロジェクト」と言い続けてきた上田市長がこの攻防戦の後、ポロリと本音をもらしている。「JRは花巻駅の橋上化をやりたいと思っており、橋上化の話が進めば、土地の売買について真剣に話をしてくれる可能性はある。橋上化がなくなった際には、駅前に図書館を建設することについてもどうなるか分からない」(令和4年6月開催の市政懇談会での発言)―

 

 「駅橋上化事業の見返りが図書館の駅前立地だった」―“のり弁”の背後から次第にこんな構図が輪郭を伴って、姿を現してきた。社有地の売却には一貫して否定的だったJR側は駅橋上化の基本協定の締結を受ける形で令和5年12月、駅前用地(スポーツ店敷地)の譲渡に応じるという方針転換に踏み切った。ある意味、双方にとっての“手打ち式”だったのかもしれない。

 

 あの“サプライズ”騒動からさらに5年が過ぎた。いま、「駅前と病院跡地」に絞られた立地場所の意見集約が大詰めを迎えている。しかし、その前提になる候補地の事業費比較では病院跡地の”災害リスク”がことさらに強調されるなどその公平性に疑念が生じている。さらに、最終的な意見集約をする「対話型市民会議」の応募参加者はわずか75人(実際の出席者は第1回目が65人、第2回目が64人)で、民意を反映するにはほど遠い構成になっている。

 

 一方、昨年12月21日に開催された第2回市民会議では二つの建設候補地をめぐるフィールドワークが実施されたが、参加者はたったの9人。「我こそは」と手を挙げたという、これが市民会議参加者の実際の姿である。50年どころか「百年の大計」とも呼ばれる文化施設―図書館の立地。その現場に足を運ばずして、建設候補地の「メリット・デメリット」を判定しようという、その傲慢さに私は怒りさえ覚えてしまう。「知の殿堂(図書館)に対する冒涜(ぼうとく)ではないのか」と…。他方、「病院跡地」への立地を求める市民グループの署名数は北海道から沖縄まで(宮沢)賢治愛好家や図書館ファンを含め、その数は10,269筆にのぼっている。この数値の歴然たる乖離に目を凝らしたい。双方を比べること自体が愚行というものである。

 

 和歌山市や広島市がそうであったように、当市イーハトーブはなまきの図書館問題も結局は「駅前再開発」と一体化した“不動産”案件…賑わい創出のための“ダシ”にすぎなかったのだろうか。だとすれば、この5年間に費やされた膨大な時間と莫大な金はドブに捨てられたも同然の税金の浪費(ブルシッド・ジョブ=どうでもいい仕事=壮大なる無駄)…つまりは市民に対する“背信”行為だったと言わざるを得ない。

 

 それにしても、市側はなぜこれほどまでに「駅前」立地にこだわるのだろうか。「ワンセット」構想がもたらす相乗効果によって、駅前の賑わいを創出したい―。最初からそう説明した方が市民の納得が得られやすかったのではないのか。なのになぜ…。何か表には出せない事情でもあったのであろうか。「黒塗り公文書」の闇の向こうにもうひとつの「闇」がほの見えてくる。さらにどす黒い何かが…。“暗黒”行政という名のトンネルの先には何が待ち受けているのだろうか。注目の市民会議の最終回は1月26日(予備日は2月15日)に開催される。

 

 

 

<蛇足>~「黒塗り公文書」というミステリー

 

 黒塗り公文書の「闇」と格闘しているうちに妙な醍醐味みたいな感覚を覚えるようになった。たとえるなら、推理小説のなぞ解きに挑戦するような…。なにせ、100枚近くに及ぶ、いわゆる“のり弁”の肝心の部分は隠されているのだから、この謎解きはまさに「当たるも八卦当たらぬも八卦」―。もしも、私の見立てが見当違いだったら、是非とものり(海苔)をはがして、弁当の中身を見せて欲しいものである。とくにも、22個の“のり弁”の中にはどんな「マル秘」(隠し味)が隠されていたのかを…

 

 

 

 

(写真は旅先の仕事部屋を占拠した、100%黒塗りの“のり弁”の山。その数は何と22個にも)

 

「黒塗り公文書」の闇を暴く(中)…そもそもの始まりは図書館と橋上化との「ワンセット」構想だった!!??

  • 「黒塗り公文書」の闇を暴く(中)…そもそもの始まりは図書館と橋上化との「ワンセット」構想だった!!??

 

 上掲の写真を見ていただきたい。「最大スペックのラフデザイン」と名づけられた花巻市作成のイメージ図で、JR盛岡支社に提供された資料である。日付は2017(平成29)年7月10日。現在も立地予定地のひとつであるスポーツ店敷地跡に建つ図書館(当時の構想は3階建て)と橋上駅とが通路で繋がっているのが見て取れる。長い間の市政課題だった新花巻図書館と駅橋上化(東西自由通路)という二大プロジェクトは当初は実は「ワンセット」構想だったという動かぬ証拠である。「駅前か病院跡地か」―という立地場所の意見集約が大詰めを迎える中、すでに8年も前に新図書館の「駅前」立地が既成事実化していたことをこのイメージ図は物語っている。

 

 上田(東一)市政の政策基盤である「花巻市立地適正化計画」(2016年=平成28年6月策定)には駅橋上化事業とともに、新図書館の立地先については「(旧花巻病院跡地を含む)生涯学園都市会館(まなび学園)周辺」と明記されていた。ところが、翌年(2017年=平成29年)8月に策定された「新花巻図書館整備基本構想」の中では「候補地を数か所選定した上で、基本計画において場所を定める」と変更された。この候補地の拡大方針の直前に「ワンセット」構想が秘かに想定されていたことを考えれば、基本構想の策定は新図書館を「駅前」立地にシフトさせるための政策変更だったことが誰の目にも明らかである。

 

●「JR花巻駅橋上化(東西自由通路整備)及び新花巻図書館の駅前立地にかかるJR東日本盛岡支社との交渉記録文書すべて」(令和4年11月12日付)
 

●「平成29(2017)年の花巻市議会9月定例会の補正予算案(都市再生事業費)の質疑の中で存在が明らかになった、同年6月発足の『まちづくり勉強会』(JR東日本盛岡支社と花巻市で構成)にかかる復命書や会議録など関連資料」(令和5年3月30日付)―

 

 「まず、駅前ありき」を疑った私は上記2件の行政文書の開示請求をした。その結果、「花巻市まちづくり勉強会」(平成29年6月7日から同30年10月3日まで10回開催)や「花巻駅周辺整備調査定例会」(平成29年12月15日から同30年8月7日まで9回開催)などの組織の存在が明らかになった。駅前再開発を協議するJR東日本盛岡支社との間の非公開の合議体で、市側からは図書館を所管する生涯学習部と駅橋上化を担当する建設部が常に同席する形で進められた。この二つの組織の中では一体、何が話し合われたのか。判読可能な断片的な文脈の背後から双方が「ワンセット」構想に向け、合意形成に至る経緯が少しづつ見えてきた。

 

 「駅舎以外、市として図書館とともに機能付けするものは何か」(JR)、「さくらんぼ東根駅舎(山形県にある奥羽本線「さくらんぼ東根駅」)は2階通路が開放的に作られ、そのまま行政組織(図書館)につながっている」(JR)、「図書館と複合施設によって描くまちづく案と自由通路や駅舎の整備に関するオ—ソライズのタイミングが合うと分かりやすい」(市)、「上層階が図書、低層が多機能スペ-スかと。これらを一体で運営できる手法があるとよい」(JR)、「図書館と複合の事業で周辺の価値を高めていく。その分周辺の価値が上がり、税収をペイできる」(市)、「駅舎、図書館複合、店子等全体事業を紐づける理論武装が必要になる」(JR)…

 

 一見、順調に進みかけていた「ワンセット」構想だったが、新図書館の立地を優先させたい市側と駅橋上化を急ぎたいJR側との間に次第に隙間風が吹くようになった。後述(このシリーズの「下」)するが、この時期ある驚くべき図書館プロジェクトが降ってわき、上を下への大騒ぎに発展しつつあった。水面下での攻防を伝える、二つの会議とは別の復命書(2020年8月26日付)にこんなやり取りがある。

 

 「図書館整備との関連性で、図書館が決まらない限りは、自由通路整備は進められないということか。単独で進めることは可能か」(JR)、「図書館と自由通路はセットで考えるものであり、図書館の話が駅前で出来なくなった場合に、自由通路を単独で整備するかどうかを別に判断することになると思う」(市)、「市民的にも議会的にも自由通路整備をやろうとなったとしても、図書館が決まらないうちに、自由通路だけ先に進むのはまずいのか」(JR)、「現在は図書館とセットとすることで、事業効果が高くなるとしている。セットにすることで図書館的にも自由通路的にも良い」(市)―

 

 商工団体や農業関係者、PTAや同窓会、観光業者…。この機と前後して、駅橋上化の早期実現を求める各種団体の動きが活発になった。要請書の内容はほぼ同じだった。市議会の質疑で「図書館との一体化を狙うやらせ要請ではないか」という疑念が巻き起こった。当時の私のブログにこんな記述がある。「コロナ禍のうっとうしい日々、二人の男が地域に分け入り、その地のボスたちと何やらヒソヒソ話し合う姿があちこちで目撃された。“やらせ要請”の旗振り役と目され、一人は市長の後援会事務局長を名乗る革新系会派の現職市議で、もう一人は建設畑が長い副市長。この二人三脚ぶりはつとにまちの評判になり…」(2021年6月9日付)

 

 「駅前再開発」=「ワンセット」構想という基本原則は崩さないまま、駅橋上化(東西自由通路)事業は2024年(令和5)年6月、ひと足先に基本協定の締結にこぎつけ、令和10年度末の供用開始を目指している。その一方では、宮沢賢治とゆかりがある「旧総合花巻病院跡地」への立地を求める声も草の根ように広がりつつあった。病棟群が撤去され、霊峰・早池峰がその雄姿を現した瞬間、「図書館立地の最適地はここしかない」―。こんな声の高まりを背に複数の市民団体が賛同を求める署名運動に立ち上がった。他方の市側は遅れがちな図書館の駅前立地に向け、秘かに起死回生の打開策を模索し始めていた。

 

 

 

 

(写真は「ワンセット」構想のイメージ図。黒塗りだらけの文書の中で、このイメージ図だけがなぜか、開示された。うっかりミスだったのか)

 

「黒塗り公文書」の闇を暴く(上)…92%が真っ黒けの「暗黒」行政~対岸の火事にあらず!!??

  • 「黒塗り公文書」の闇を暴く(上)…92%が真っ黒けの「暗黒」行政~対岸の火事にあらず!!??

 

 「コモン(公共物)の収奪作戦」「1400枚の黒塗り公文書」「自治体のデタラメ行政」「役所VS.市民」「官製談合疑惑」「不存在」「民間委託の闇」…。こんな章立ての本書を読み進むうちに鳥肌が立つような感覚に襲われた。迷走を続ける新花巻図書館の“立地”論争の背後に同じ闇(やみ)がうごめいているのを感じ取ったからである。

 

 「その文書の裏側では、透明性のある行政とはほど遠い。何か尋常ではないことが、いまこの瞬間も着実に進行していることが、改めて感じられた」―。『「黒塗り公文書」の闇を暴く』の著者、日向咲嗣さんはまえがきにこう記している。本書は著者が6年の歳月をかけて、いわゆる“のり弁”の闇を暴いたスリリングなルポルタージュである。「陰の主役」「出来レース」「アリバイづくり」「寝耳に水」「内部告発」「逆ギレ」…。文中に散りばめられたこんな言葉の数々にこっちの肌感覚がいちいち反応した。足元のイーハトーブはなまきでも寸分たがわない事態が同時進行しているからに他ならない。

 

 「知性と感性を醸成する場」―こんなスローガンを掲げた「和歌山市民図書館」がオープンしたのは2020(令和2)年6月5日。レンタル大手のTSUTAYAや蔦屋書店を展開する「(株)CCC」(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)が指定管理者の、いわゆる“ツタヤ図書館”である。立地場所は南海電鉄(本社、大阪市)が再開発を進める和歌山市駅前で、総工費123億円のこの事業には国庫補助など巨額の公費が投じられた。「図書館が駅前活性化のダシに使われるのでは…」―こんなうわさを聞き付けた日向さんは関連資料の文書開示請求に踏み切った。

 

 段ボールにびっしり詰められた開示文書が送られてきた。1400枚以上の文書のほとんど(約92%)が真っ黒く塗りつぶされていた。送り主が新図書館建設を担当する当の「市民図書館」だったことに日向さんはショックを受けた。「実施設計会議」「図書館定例会議」「南海和歌山市駅周辺活性化調整会議」…。辛うじて判読できた文書からこれまで外部には知られていなかった組織の存在が次々に明らかになった。13回にわたって開催された「図書館定例会」に至っては議事録の96・76%が真っ黒だった。「何かあるな」…

 

 県と市に南海電鉄を加えた「活性化調整会議」がスタートしたのは新市長が初当選する直前の2014(平成26)年6月。首長の交代を機ににわかに浮上したのが市民図書館の「駅前立地」構想だった。そんな中、関係者への突撃取材や市民団体の協力、そして内部告発者の決死の覚悟によって少しづつ、闇の実態が白日の下にさらされた。例えば、公募前にCCCだけが市長相手にプレゼンをし、その席に再開発を担当する部署と図書館を所管する教育委員会のスタッフが同席するなど癒着の構造も浮き彫りになった。まるで、“宝さがし”みたいな解読を進めていくうちに、日向さんはこんな発言に遭遇する。

 

 「市民図書館を誘致したいし、タイミングを逸したくない想いがある。新市長に直接お話をさせていただいて、トップダウンで決断をお願いしたいとも思っている」(2014年6月27日付)、「本社の意向として、市民会館と市民図書館の両方があった方がコミュニティをつくりやすいが、優先順位が高いのは市民図書館」(2014年7月9日付、いずれも南海電鉄側)―。「“暗黒”行政は和歌山だけには限らない」と日向さんは被爆地・広島の事例も紹介している。

 

 「JR広島駅前か、平和記念公園近くの現在の公園地内か」―。当市が図書館の”立地”論争に揺れていたと同じ時期、広島市でも市民を二分する論争が続いていた。2021年秋、市側は平和記念公園に近接する中央公園内の市立中央図書館をJR広島駅前の商業施設へ移転する構想を突然、公表した。市民参画もないままの「寝耳に水」に市民団体が署名運動に立ち上がった。「国際平和都市にふさわしい図書館はどうあるべきか」という呼びかけに1万7千筆以上の反対署名が集まった。一方、移転計画の経緯を知るために求めた開示文書はここでも真っ黒けだった。

 

 日向さんはこう書いている。「最初から結論が決まっていて、どんなに市民から批判されようとも、立ち止まって再考したり、丁寧に説明したりすることもなく、なりふりかまわず、その結論に向かって邁進していく。そんな広島市のこの問題での姿勢は、大量の公文書の黒塗りという目に見える形で現れたのだった」―。私は無意識のうちに「広島市」を「花巻市」と読み替えていた。「公共交通の利便性や駅周辺の活性化(賑わい創出)」―。こんなうたい文句の「駅前」移転案は2026年度の実現を目指している。まるで、当市と瓜二つの構図ではないか。

 

 「花巻市情報公開条例」(平成20年3月制定)はその目的について、高らかに謳う。「この条例は、地方自治の本旨にのっとり市民の知る権利を尊重し、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、市の保有する情報の一層の公開を図り、もって市の諸活動を市民に説明する責務が全うされるようにするとともに、市民の市政への参加を促進し、開かれた市政の推進に寄与することを目的とする」(総則)…よくもまぁ、真っ黒く塗りつぶしたくなるのはこっちの方である。

 

 

 

 

(写真は“暗黒”行政にメスを入れた日向さんの著書)

 

かけ声倒れの議会“改革”…「名ばかり」は当局だけではなかった~市民をなめるのもほどほどに!!??

  • かけ声倒れの議会“改革”…「名ばかり」は当局だけではなかった~市民をなめるのもほどほどに!!??

 

 旅先で久しぶりに市のHP(12月27日付)をのぞいたら、花巻市議会「議会改革推進会議」(委員長、高橋修議員=明和会)」による「議会基本条例」(平成22年6月制定)の検証報告書が掲載されていた。この中で第12条の「(閉会中の)文書での質問」については「これまで実施した例はないが、議会の権利として、この条文は残しておくものとする」と仰々しく書かれていた。冗談じゃない。現職市議時代、私はいまに尾を引く「新興製作所」跡地問題に関し、「文書での質問」をした当事者だったからである。

 

 さっそく、藤原伸議長に経緯の説明を求めところ、「事実関係を精査し、訂正を含めて対応したい」という回答を得た。いまなお、瓦礫(がれき)が放置されたままになっているこの「跡地」問題こそが上田(東一)市政の“負の原点”とも言われている。なのに、議員としての重要な権利行使のひとつであるこの「文書での質問」についてはいつの間にか「なかった」ことに。かけ声倒れで名ばかりの“改革”の実態が透けて見えるではないか。

 

 ちなみに、委員長の高橋議員は新花巻図書館の立地問題で、候補地のひとつである「花巻病院」跡地へのネガティブキャンペーンの旗振り役の当事者である(12月1日付当ブログ参照)。「駅前」立地を第1候補に挙げる当局側への”忖度”ぶりは目をおおうばかりである。つけ加えると、件(くだん)の議員は議会改革のかなめでもある「議員報酬調査検討特別委員会」の委員長も兼ねている。

 

 以下に後学議員の参考に供するため、当時の質問内容をそのまま転載する。2014(平成26)年12月22日付で、当時の議長宛てに提出。同日付で上田市長へ送付され、同月26日が回答期限と決まった。その年の12月定例会が4日前に閉会したための緊急措置だった。市民運動にまで発展した「文書での質問」だっただけに、その重要性は今なお変わるところはない。逆に、その不行使を恬(てん)として恥じない現職議員には絶望すら覚える。この際、高橋議員には二つの委員長の肩書を潔(いさぎよ)く、返上すべきだと進言しておく。


 

《文 書 質 問》

 

 

 旧新興製作所跡地の民間への「売却」計画に関し、花巻市議会基本条例第12条(文書での質問)1項の規定に基づき、川村伸浩議長を経由して下記の事項について質問します。重要かつ緊急な事案と考えますので、同条2項の規定に従い、質問事項と回答内容を早急に市ホ-ムペ-ジ上で公開することを求めます。今回の計画については市民の間でも大きな関心を呼んでおり、よって市民の負託を受けている議員として、議会基本条例に基づいた権利を行使するものです。

 

 

1、旧新興製作所跡地は花巻城址に位置し、戦前までは「東公園」として親しまれてきた歴史的にも由緒ある土地である。さらに当該土地は「立地適正化計画による都市再構築」(案)で示された「事業実施の想定範囲」に含まれており、中心市街地の活性化とも密接不可分の関係にある。こうした関わりの中で、今回の「売却」計画をどう認識しているか。

 

2、「公有地の拡大の推進に関する法律」(公拡法)は第4条第1項で「当該土地を有償で譲り渡そうとするときは、当該土地の所在及び面積、当該土地の譲渡予定価額、当該土地を譲り渡そうとする相手方その他主務省令で定める事項を、…当該土地が市の区域内に所在する場合にあっては当該市の長に届け出なければならない」と規定している。今回の譲渡予定価額並びに譲渡の相手先を明らかにしてほしい。

 

3、旧社屋を含めた当該土地を「公共用地」として取得する意思はあるか。

 

 

 

 

(写真は花巻市議会議場。この神聖な空間で一体、何が起きているのか=インターネット上に公開の写真から)

 

 

 

《追記》~お詫びして、訂正します

 

 上記ブログの「文書での質問」に関し、「これまで実施した例はないが、議会の権利として、この条文は残しておくものとする」という以前の文面が9日付の市HPで、「平成26年12月に実施した例があり、議会の権利としてこの条文を残しておくものとする」ーに訂正されていた。ただ「残す」のではなく、ぜひ「行使」して欲しいものである。

 

 

名ばかりの“対話型”「市民会議」…「高齢者」排除の“底意”が見え隠れ~そして、韓国の非常戒厳!!??

  • 名ばかりの“対話型”「市民会議」…「高齢者」排除の“底意”が見え隠れ~そして、韓国の非常戒厳!!??

 

 「これじゃ、戒厳令下の市民会議と同じじゃないか」(11月14日付当ブログ)―。ほんの1カ月足らず前に胸中をよぎった不吉な予感が隣国の「非常戒厳」宣布によって、現実のものとなった。政権運営が危うくなる時、権力者がなりふり構わぬ非常手段に打って出ることは歴史が教えている。今回は韓国の民主的な世論がこの暴挙を押しのけたが、国家レベルだけではなく、足元の地方政治にまでイヤ~な雰囲気がじわじわと忍び寄ってきているような気がしてならない。以下は「イーハトーブ図書館戦争」に従軍してきた私の最新レポートの一端である。

 

 

 「駅前か病院跡地か」―。新花巻図書館の立地場所を話し合う「対話型市民会議」が11月17日から始まった。それに先立って公表された「傍聴要領」を見て、びっくりした。「会議を妨害し、又は人に迷惑を及ぼすと生涯学習部長が認める者(入場の禁止)」、「傍聴人がこの規則に違反したときは、生涯学習部長は、これを制止し、その命令に従わないときは、その者に退場を命ずることができる」(傍聴人の退場)…。「その者」だって。「官尊民卑」丸出し、まるで、“戒厳令下”ではないか。「本来、全市民に開かれるべきはずの市民会議が物々しい“厳戒態勢”の下で開かれるという前代未聞の事態である」とその時のメモにある。

 

 そして、第1回目のその日を迎えた。無作為抽出で選ばれた3、500人の中から、参加を希望した会議構成者(75人)は11班に分かれ、WS(ワークショップ)形式の意見交換に臨んだ。メインファシリテーター(進行役)の山口覚・慶応義塾大学大学院特任教授は冒頭、こうあいさつした。「4時間の長丁場ですので、30分間の休憩を2回取ります。おやつを自由に食べながら、リラックスして意見交換をしてください」―

 

 「まるで、ゲットー(ユダヤ人の強制隔離地区)ではないか」―。若々しい声が飛び交うWS会場を見た瞬間、今度はこんな時代がかった言葉がこぼれ落ちた。本当にそう感じたのである。停止線で区切られた傍聴席には15人ほどが詰めかけ、成り行きを見守っていた。ほとんどが高齢者で、周囲には“監視役”の市職員の目が…。齢(よわい)84歳の私は年のせいで小用が近く、その目を気にしながら何度もトイレに走った。同席した知人に話しかけようとすると、今度は「私語は禁止」と唇に人差し指を立てられた。「拷問じゃないか」と次第に腹が立ってきた。

 

 持参した茶菓子をポリポリかじりながら談笑する会場の光景を見回しているうちに、「オヤっ」と思った。高齢者の姿がほとんど、見当たらなかったからである。市側に確認すると、70歳以上の参加者は75人中、わずか6人に過ぎなかった。「4時間」という時間設定はもしかしたら、高齢者に二の足を踏ませるために仕組まれた“奥の手”ではなかったのか。こんな疑念さえもわいてきた。私自身、もう二度と足を運ぶことはあるまいと思った。寄る年波にとって「4時間」という拘束は心身の限界を超えることを身をもって知ったからである。

 

 「31・4%vs0・08%」―。前者は市内の四つの図書館(花巻、大迫、石鳥谷、東和)が実施した「来館者アンケート」(令和5年12月24日~同6年1月31日)の集計で、70歳以上の来館率が全体の3割以上を占め、世代間で一番高くなっている。後者は今回の対話型市民会議における70歳以上が占める比率で、この極端は数字の乖離こそが「高齢者」排除の実態を如実に物語っているのではないのか。図書館を一番利用する高齢世代が新しい図書館の立地場所を話し合うその場に居合わせない―これほどまでに逆立ちした構図はあろうか。

 

 二つの立地候補地の成否(メリット・デメリット)を論議する対話型市民会議は年を越して、来年まで続く。「イーハトーブ図書館戦争」も終結に向けて、大詰めを迎えつつある。一方に当局側のお先棒を担ぐような市議がおれば、その当局側はと言えば高齢者の声に耳を傾ける風もない。二元代表制ならぬ見事なまでの“二人三脚”の先に一体、どんな図書館が姿を現すのであろうか。

 

 ハタと思う。この国にもし「戒厳令」が発令された時、それを跳ね返すエネルギーが国民の側にありや否やと…。かたわらのテレビでは韓国の国会議長が叫んでいた。「いま、この国の民主主義が問われている。世界中の目がこの国に向けられている」―。渦中の尹錫悦大統領と上田東一市長とがす~っと重なった。その目の前には「裸の王様」(エコーチェンバー)に成り果てた独裁者の姿が…。

 

 ウィキペディアはこの王様について、こう解説している。「身の回りに批判者や反対者がいないため、本当の自分が分かっていない権力者を揶揄するために用いられる。当然ではあるが、正当な批判・反論すらも聞かずに猛進するため、当人が破壊的な影響を及ぼすようになり、いずれ必ず当人も組織も大きなダメージを受けるため、組織人として見た場合には非常に有害な人物になる」 

 

 

 

 

(写真は若者の姿が目立った第1回「対話型市民会議」=11月17日午後1時~5時まで、花巻市のまなび学園で)

 

 

 

 

 

《追記ー1》~味見の量は少ないとダメ!!??

 

 「社会調査担当者」を名乗る方から、長文のコメントが寄せられた。「無作為抽出」という統計学上の“落とし穴”について、誰もが理解ができる解説になっており「なるほど」と納得した。さっそく、この“みそ汁”理論を実践してみた。買い置きのインスタントみそ汁にお湯を注いで、上澄みを飲んでみたら当然のことながら、味も素っ気もなかった。「無作為」の“作為”を垣間見た思いがした。以下にその全文を転載させていただく。

 

◇ ◇ ◇

 

 ある母集団の様子を観察するのに、その母集団から無作為抽出によって標本を取り、その様子を調べることで母集団全体の様子を推し量る方法は、世論調査といった社会科学的な分野だけではなく、医療研究など広く自然科学的な分野でも用いられている。

 

 この無作為抽出法はしばしばみそ汁の味見に例えられる。すなわち、みそ汁の味見では、良くかきまぜた後であれば、小皿に少しみそ汁を取って味見をすれば全体の味が分かる、ということである。ここでまず重要なことは小皿に取るみそ汁の量である。最初、小皿にいっぱいにみそ汁を取って味見しようとしたとき、誤って大部分をこぼしてしまったらどうだろう。小皿に残ったごくわずかのみそ汁を味わっても、みそ汁全体の味はわからない。

 

 市ホームページで公開されている新花巻図書館の建設候補地に関する市民会議の資料によると、参加者は15才以上の市民で無作為に抽出された方のうち、参加の申込をいただいた75名と書かれている。無作為抽出したもとの数はここには書かれていないが、増子氏ブログによれば市当局は3,500名を無作為抽出したようである。上記のみそ汁の例えに戻ると、本来、味見には3,500人が必要だったが、3,425人がこぼれてしまい、小皿に残ったのは75人、無作為抽出された3,500人に対して率にすると2.1パーセントとなり、小皿のみそ汁はほとんどこぼれてしまったことになる。

 

 すなわちこのような味見は小皿上の微量のみそ汁では味見は不可能であることは容易に想像できることである。統計調査ではこの種の現象を「非回答バイアス」とか「無回答バイアス」と呼び、調査に回答した人と脱落した人の差によっておこるバイアスとされている。一般に統計調査の結果報告においては回答率というものが示されるが、今回の市民会議の場合、この回答率は2.1パーセントということになる。

 

 回答率について言うと、例えばNHKの最近の世論調査の例は次のとおり書かれている「NHKは12月6日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかける『RDD』という方法で世論調査を行いました。調査の対象となったのは、2816人で、44%にあたる1224人から回答を得ました。」

 

 世の中で行われている世論調査の回答率がこういう率であることがわかると、今回の市民会議なるものの結論が、そもそも母集団である市民の意向を正確に表しているかどうかは容易に推測できよう。

 

 

 

《追記―2》~韓国の弾劾が可決!!??

 

 (ブルームバーグ): 韓国の尹錫悦大統領に対する2回目の弾劾訴追案が14日、国会本会議で可決された。これにより大統領の職務は一時的に停止される。尹氏は一時的な「非常戒厳」宣布で国民に衝撃を与え、強い非難を浴びていた。

 

 204人の議員が賛成票を投じた。可決には議員3分の2(200人)以上の賛成が必要だった。反対票は85だった。7日に行われた1回目の弾劾訴追案の採決では、与党「国民の力」議員の大半が退席したため不成立となった。今後は憲法裁判所が弾劾の妥当性を審査し180日以内に決定を下す。弾劾が妥当と判断されれば、大統領は罷免され、60日以内に大統領選挙が行われる(12月14日付電子版)

 

 

 

<お 知 ら せ>

 

 年をまたいで旅に出るので、しばらくの間、ブログを休載させていただきます。みなさま、良いお年をお迎えください。