「陳情不採択」顛末記―会議録から(上)

  • 「陳情不採択」顛末記―会議録から(上)

 

 花巻市議会6月定例会に提出していた「辺野古・普天間」問題に関する陳情が付託先の総務常任委員会に引き続き、本会議最終日でも委員長や議長を除く全員の反対で不採択になった経緯については当ブログでその都度、取り上げてきた(5月13日、6月7日、6月13日)。今回、文書開示請求に基づき、不採択の根拠とされた総務常任委員会の会議録を入手した。この陳情に関しては今年3月、ほぼ同趣旨の内容が東京都小金井市議会で可決採択され、意見書がすでに内閣総理大臣など関係先に送付されている。なぜ、同じ地方議会の間でこんなにも天と地ほどの乖離(かいり)が生じたのか―。

 

 以下に陳情審査に際しての私の参考人陳述や質疑応答、各委員の意見表明などを趣旨を損なわない範囲で簡略に採録する。何回、読み返しても私にはその真意が伝わって来ない。ひょっとすると、審査に臨んだ各委員は陳情内容をよく理解しないまま、結論を急いだのではないか。だとすれば、憲法で保障された「請願(陳情)権」に対する明らかな冒涜(ぼうとく)であり、議会の自殺行為である。いや、待てよ。それ以前の議員の資質あるいは能力、そして議員としての使命感の欠如にこそ、問題の根源が潜んでいるのではないか。まずは小金井市議会の意見書を目を皿にして読んでいただきたい。この内容に異議を唱える人は余りいないと思う。ところが、わがイ-ハト-ブ議会の議員諸賢は全員がこぞって、異議を申し立てたのだった。!?!?

 

【参考資料】~小金井市議会の意見書全文

 

 沖縄県名護市辺野古において、新たな基地の建設工事が進められていることは、日本国憲法が規定する民主主義、地方自治、基本的人権、法の下の平等の各理念からして看過することの出来ない重大な問題である。

 

 普天間基地の海兵隊について、沖縄駐留を正当化する軍事的な理由や地政学的理由が根拠薄弱であることは既に指摘されており、沖縄県議会はこれまで何度も政府に対して「在沖海兵隊を国外・県外に移転すること」―を要求する決議を可決採択している。「0・6%に70%以上の米軍専用施設が集中する」という沖縄の訴えには、「8割を超える国民が日米安全保障条約を支持しておきながら、沖縄にのみその負担を強いるのは『差別』ではないか」という問いが含まれている。

 

 名護市辺野古に新基地を建設する国内法的な根拠としては、内閣による閣議決定があるのみである。沖縄の米軍基地の不均衡な集中、本土との圧倒的な格差を是正するため、沖縄県内への新たな基地建設を許すべきではなく、工事は直ちに中止すべきである。

 

 また、普天間基地の代替地について、沖縄県外・国外移転を、当事者意識を持った国民的な議論に決定すべきである。安全保障の問題は日本全体の問題であり、普天間基地の代替施設が国内に必要な否かは、国民全体で議論すべき問題である。そして、国民的な議論において、普天間基地の代替施設が国内に必要だという世論が多数を占めるのなら、民主主義及び憲法の精神にのっとり、一地域への一方的な押付けとならないよう、公正で民主的な手続きにより決定することを求めるものである。なお、この意見書は米軍基地の国内移設を容認するものではない。

 

 よって、小金井市議会は国会及び政府に対し、以下の事項(略)の解決を強く求めるものである。以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

 

 

【参考人陳述】(要旨)

 

 今回の陳情の大きな背景には新聞やテレビで報じられている、いわゆる普天間飛行場(普天間基地)の辺野古移設問題があります。この問題を通じて、民主主義とは何か、あるいは地方自治はどうあるべきかということを根本的に議論していただければと思います。若干、論点整理をしたいと考えます。この種の問題に関して、地方議会でいつも持ち出されるのが国の「専管事項論」です。安全保障や軍事、防衛に関する事項はもっぱら、国にゆだねられるべきで、地方議会にはその権限はないという論法です。

 

 ところがよく調べてみると、専管事項を定めている法的な根拠は一切ありません。国が一方的にそう言っているだけで、逆に憲法上では地方自治に関する規定が4項目にわたって明記されています。とくに、重要なのは第95条です。これは一つの地方自治体に関わる“特別法”を制定する場合には、当該自治体の住民投票で過半数の賛成を得なければならない、と規定されています。法哲学者の井上達夫さんや憲法学者の木村草太さんらは「辺野古への移設は実質的な新基地建設に相当するので、第95条が適用されるべきだ」と主張しています。

 

 そろそろ、この専管事項論の“呪縛”から抜け出すべきだと考えます。もうひとつ、これに関連して、地方自治法第99条は「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる」と規定しています。この場合の「公益」と沖縄の米軍基地との関係もしばしば、論議の中心になります。ご存じのように、日米安全保障条約は日本全体の防衛義務(安心・安全)を定めた条約です。世論調査では国民の約8割がこの条約の必要性を認めています。つまり、花巻市民の安心・安全も沖縄県にその7割以上が偏在する米軍基地によって支えられている。この認識が非常に重要です。

 

 今回の陳情については、東京都の小金井、小平両市議会が同趣旨の意見書を採択しています。私自身を含め、「沖縄」問題へのかかわりを遠ざけている根っこには、実は沖縄への差別意識があるのではないかと感じています。その入り口に私たちはいま、立たされているのではないかと思います。

 

 

(写真は現職時代の質問光景。議会の外に出てみて、その閉鎖性が逆によく見えるようになった=花巻市議会議場で)

 

 

 

2019.07.11:masuko:[ヒカリノミチ通信について]

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