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辻立ち“交響曲”…木枯らしとともに

  • 辻立ち“交響曲”…木枯らしとともに

 

 肌を刺す木枯らしを吹き飛ばすかのように、街のあちこちで声をからした辻立ち“交響曲”が交差するようになった。花巻市の次期市長選(令和4年1月16日告示、同23日投開票)まで2カ月を切ったある日のJR花巻駅前…「賃貸住宅付き」図書館構想や東西自由通路(駅橋上化)問題で揺れる市政課題のチェックポイントで、賛否の意見がぶつかり合った。「現市政が進める政策こそがまちの将来を約束する」―。賛成派のハンドマイクをさえぎるような声に思わず、耳がそばだてた。

 

 「この約1年半、新型コロナウイルスにより世界中が恐怖のどん底に陥りました。それぞれの経済、ひとりひとりの生活が一変しました。が、その中で、今まで他人事であったことを自分事に置き換えることであったり、政治に関心を持つことの重要性に気がついた人たちがたくさんおります。この花巻も今、大きな分岐点に立っております」―。意表を突く言葉で始まった“辻説法”はこう続いた。「皆さんご存知のように、新図書館やここ花巻駅の東西自由通路は、大変重要な案件です。私達はそれに反対しているわけではありません。しかし、十分な議論も交わされず、いきなり公表された、賃貸住宅付き図書館構想や橋上化構想について、このような市政運営で良いのか?と大きな疑問を抱きました。1年に2度も議会から否決されるような市政運営は前代未聞です」

 

 

 宮澤賢治の童話『風の又三郎』をイメ-ジしたオブジェ「風の鳴る林」の前を通勤・通学生が次々と通り過ぎていく。ポールに取り付けられた風車が木枯らしをうけて、くるくると回った。何人かが足を止め、のぼりを持つ市民グループの声に耳を傾けた。「この花巻には、宮沢賢治や新渡戸稲造といった素晴らしい先人がおります。そして、現在活躍中の菊池雄星・大谷翔平選手により、花巻の名が世界中を駆け巡っております。世界に誇れる花巻のまちづくりを一緒に考えていきませんか?誰ひとり取り残さない、ワクワク花巻の実現に向けて皆さんの声をお聞かせ下さい」……

 

 「現在、このまちなかでは、旧料亭まん福の解体が始まっています。今後、旧花巻病院も取り壊されます。そして、新興製作所跡地も瓦礫の山になっておりますが、これもどうにかしなければいけません。これらの跡地に、皆さんなら何が建って欲しいですか?こういったものが欲しい、ああいったものが欲しい。そうしたまちづくりを考えると、ワクワクしませんか」―。女性弁士の話に促されて、市中心部にある旧料亭「まん福」跡地に車を走らせた。原型はほぼ姿を消し、取り壊された廃材がそぼ降る雨に濡れていた。

 

 

 現職と新人の一騎打ちの公算が強い次期市長選の“舌戦”は事実上、スタ-トした。今度こそ、本物の”新しい風”を吹かせてほしいと思った。

 

 

 

 

(写真は雨の中、傘をさしながら、市政課題について訴える市民グル-プ=11月24日午前7時半すぎ、JR花巻駅前で)

 

 

 

 

《追記》~兵どもが夢の跡(コメント欄に写真掲載)

 

 約1か月前に足を運んだ時にはまだ、往時をしのばせる大広間の建物が残っていたが(10月21日付当ブログ参照)、今日はご覧の通りに跡形もなく撤去され、庭石に使われたと思われる巨石がゴロゴロ転がっていた=11月25日午後、花巻市吹張町の旧料亭「まん福」跡地で)

 

知る権利とプライバシ-保護の間合いにて…“人権感覚”ゼロの恐怖!!??

  • 知る権利とプライバシ-保護の間合いにて…“人権感覚”ゼロの恐怖!!??

 

 被処分者のHP上への実名掲載の削除を求めた「市長へのメ-ル」(10月26日付)に対する回答が17日あり、同日付で実名がやっと削除された。この間、ざっと1年10か月。一個人の「人権」に関わる対応になぜ、これだけの時間を要したのかについては以下に全文を掲載する長々とした“弁明”をとくとお読みいただきたい。悪文の典型みたいなこの文章は皮肉なことに、我が首長の「人権感覚」のなさを見事なまでに浮き彫りにしている。「花巻市個人情報保護条例」(平成18年1月1日)と合わせ読むと、その自己保身の”卑劣“さが余計に透けて見えてくる。―「この条例は、市の実施機関における個人情報の適正な取扱いの確保に関し必要な事項を定めるとともに、市の実施機関が保有する個人情報の開示、訂正及び利用停止を求める個人の権利を明らかにすることにより、個人の権利利益の保護を図ることを目的とする」…「偽善者」という言葉がこれほどぴったりの人物を他にしらない。

 

 

 当市においては、市民に対する説明責任を果たし市政の透明性を高めるとともに、職員の服務に関する自覚を促すことにより公務員倫理の保持を徹底し、同様の不祥事の再発を防止することを目的として、花巻市職員の懲戒処分に関する公表基準を設けており、職員の懲戒処分は原則として公表することとし、社会的な影響が大きな事件に係る懲戒処分については、所属名、氏名も公表することもあるとしております。

 

 ご指摘の案件につきましては、運転免許停止処分を受けた消防職員が救急車を運転したという重大な事案であり、説明責任を果たすと共に、再発防止を徹底するために特に必要があると認められるものとして所属名、氏名を含め、公表したものであります。

 

 懲戒処分については、被処分者の名誉・プライバシーに関わる事項であり、これに配慮しなければならないことは当然ですが、ご指摘の案件を含めた社会的影響が大きいと認められる重大事案については、市民の皆様の知る権利を確保するために生じる説明義務を果たす上で、氏名を含めて公表する必要性が認められると考えています。ホ-ムペ-ジに氏名を含めて公表した場合について、法令等においてその削除をするとの規定はないものと認識しておりますが、当市においては、1年以上掲載したのち、氏名を削除した例はあります。しかしながら、当市においてはその削除に関する明確な基準は設けていなかったところです。

 

 また、人事院の懲戒処分の公表指針ではホ-ムペ-ジにおける氏名の掲載についての記述はなく、中央官庁においては、懲戒処分の事案は報道機関への投げ込みだけを行い、ホ-ムペ-ジには掲載しないという場合もあれば、ホ-ムペ-ジに数年間にわたり氏名を含めた事案の情報を掲載し続けている場合もあり、一律の基準はないようです。

 

 一旦ホ-ムペ-ジに氏名が掲載された場合、懲戒処分に関する氏名を含めた情報がホ-ムペ-ジへの掲載を契機としてネットで拡散されることがあり、またホ-ムペ-ジにおいて氏名を削除した後も削除前にネットで拡散した情報がさらに拡散する可能性があることは現代のネット社会においては否定できないところです。そのことから、市民の知る権利から生じる市の説明義務により、氏名を含む情報を公表するとしても、その方法としては、ネットによる際限のない拡大をできるだけ防ぐという観点から、報道機関への投げ込みだけを行い、ホ-ムペ-ジの掲載はしないということも考えられます。

 

 もちろん、報道機関の報道を契機として、氏名を含む情報がその後ネットで拡大する可能性は否定できないところです。従って、本人のプラバシ-を守るとの観点からは、報道機関への投げ込みの場合も含めて、本人の氏名を一切公表しないということも考えられます。

 

 しかしながら、報道機関を含めて特に重大事案の場合には氏名の公表を求める要求も強いところでありますので、当市としては、「知る権利」と「プライバシー」のある意味で相反する権利を最大限尊重するとの観点から、今後この問題に関する社会全般の考えが変わらない限り、氏名の公表が求められる重大事案に関して、氏名の公表は報道機関への公表のみにとどめ、当市のホ-ムペ-ジでの事案の掲載においては氏名の掲載は行わないこととしたいと考えます。

 

 このことを踏まえて、ご指摘の案件については、今後既に流布しているネット情報等からではなく、当市のホ-ムペ-ジを見ることにより氏名を知ることとなることを防ぐとの観点から、氏名を削除することとします。

 

 

 

花巻市長 上 田 東 一

 

<担当部長 総合政策部長 松 田 英 基>

<担 当 者 人事課長 瀬 川 幾 子(電話24-2111 内線423)>

 

 

 

(写真は問題となったHP上の画面。1年10か月にわたって、“人権”が侵害された個人の実名はやっと消えた)

 

 

 

《追記》~職員に対する目線(サブロウを名乗る市民からの投稿)

 

 コロナ対策に関してもそうでしょう。市長には法律上のコロナ対策の権限はほぼ無いと言ってよいですが、コントロールできる(と思い込んでいる)職員の移動や食事には半ば強制力をもって介入します。幹部職員にそのつもりはなくても、総体として愚かで驕っている市役所になっているのでしょう。職員を大事にしない役所がきちんとした仕事をできるわけがないのに。

 

 

 

 

《お知らせ》「第1回小原まさみちと語るまちづくり懇談会」

 

 現職と新人の一騎打ちになりそうな次期花巻市長選(令和4年1月16日告示、同23日投開票)への関心がいまひとつ盛り上がりに欠けている。“お任せ民主主義”という無関心がどんな結果をもたらすのかということに関しては、当ブログでも縷々(るる)指摘したとおりである。今後、両陣営の政治理念を聴く機会があれば、その都度、当ブログでも案内をしていきたい。トップバッタ-は新人候補の元市議会議長の小原雅道さん。多くの人の参加をお待ちします。

 

 

 どなたでもフリ-に花巻のまちづくり関して語り合える会を開催します。特に若い方の参加も大歓迎です。またオンライン(zoom)での参加も受け付けます。お気軽にご参加下さい。

・日時:11月29日(月)午後7時~

・場所:花巻市東町 旧ホテル花城2F

・対象:花巻市に居住する方

●テ-マ:花巻のまちづくりに関して、特に花巻市新図書館、JR花巻駅橋上化についてなど

 

・参加申込方法:電話、FAX、メ-ル、SNSのDMにて

 電話:0198-41-3987

 FAX:0198-41-3986

  mail:obaramasamichi@gmail.com

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<申込書>

お名前:

お住いの地域:

 

 

 

 

「もう、リコ-ルしかないんじゃないのか」!!??―「処分人事」疑惑の対応の遅れに市民の怒り

  • 「もう、リコ-ルしかないんじゃないのか」!!??―「処分人事」疑惑の対応の遅れに市民の怒り

 

 花巻市の「処分人事」疑惑に関連して文書開示請求をしていたHP上への「公表基準」について、11月16日付で開示決定があった。「花巻市職員の懲戒処分に関する公表基準」で、上田東一市長が就任したその年の平成26年8月27付で制定された。「公表対象」は原則として「懲戒(免職、停職、減給、戒告)と、その監督責任に関して行う訓戒はすべて公表する」と規定。さらに、「公表内容」については「個人は識別されないものとする」とする一方で、「社会的影響の大きな事件に係る懲戒処分については、所属名、氏名も公表することもある」と定めている。

 

 今回、「市長へのメ-ル」(10月26日付、同日付当ブログ参照)で、実名公表の削除を求めた案件は令和2年1月14日付で市のHP上に掲載され、いまだに削除されないままになっている。消防職員が道路交通法違反に関わって懲戒免職処分になった案件で、1年10か月以上が経過した本日(11月16日)現在、実名がさらされたまま。一方、有印公文書偽造・同行使で有罪判決を受けた市職員は平成29年3月21日付で同じ処分を受けたが、HP上では匿名扱いになっている(10月29日付当ブログ参照)。この扱いの違いについて、人事担当者はこう話した。「後者についても約1年以上実名が掲載されていたが、その後削除した。後者の今後の対応については現在、公表のあり方や人権、掲載期間などを考慮しながら、基準の見直しを図っている」

 

 ????…。「人権」問題に少なからずの関心を持っていた私自身にとって、この手の会話はもっとも苦手とする部分である。「人事担当者こそ、もっとも人権に敏感でなければならないと思う。今回の案件はまさに“人権侵害”そのものではないか」と目の前の二人に問いかけ、反応を待った。しばし沈黙が続いたのあと????…。当方が当たり前と思っていたことが、実は相手にとってはそうではなかった…。つまり、共通認識が皆無だったことにこっちの方が腰を抜かした。人事を統括する八重樫和彦副市長に同じことを問うた。「あなたから『市長へのメ-ル』が届いていることは知っている。いま、現場が鋭意、対応を検討しているはずだ」

 

 「あぁ、もうダメだ」と思った。「次期市長選など待っておられない。“人権”麻痺の市政にはもはや、リコ-ル(解職請求)しかないんじゃないか」…こんな恨み節がもれ聞こえてくる。

 

 

 

 

(写真は過去の処分例を掲載した花巻市のHP=11日16日現在)

 

「愚民化」の権化か!!??…我が首長の恐るべき素顔とそれを取り巻く佞臣や寵臣たち

  • 「愚民化」の権化か!!??…我が首長の恐るべき素顔とそれを取り巻く佞臣や寵臣たち

 

 「為政者が国民を『愚民』と呼ばれる政治的無知状態に陥れ、その批判力を奪おうとする政策、つまり、民主主義の根幹である国民の政治参加を阻害する権威主義に基づき、人々の知性を意図的に非民主的な方向へ偏向させる政策である」―。ウィキペディアはいわゆる「愚民(ぐみん)政策」について、こう説明している。私が「市長へのメ-ル」(10月26日付当ブログ参照)で指摘した市職員の「処分人事」疑惑をめぐって、当市花巻の上田東一市長こそが「愚民化」の権化ではないかという思いを強くしている。「まさか」とは思いたいが、この問題の推移を見るにつけ、そうとしか思えない気持ちになってくる。恐ろしいことである。

 

 懲戒免職処分を受けた市職員の実名が1年8か月以上にわたって、市のHPに掲載されている件に関し「市長へのメ-ル」の中で、私が「人権擁護」の観点からそのすみやかな削除と掲載基準を明らかにするように求めたのは2週間以上も前の10月26日。回答がないのに業(ごう)を煮やし、この日(11月9日)、改めてその遅延の理由を担当部課に問いただしたが、就業時間内での返答はなかった。「愚民」というおぞましい言葉がふつふつと湧き上がってきたのは、その対応の冷たさに背筋が凍ったからである。

 

 今回の市職員の処分人事については、3回(10月26日、同29日、同31日付)にわたってその疑惑を指摘し、メ-ル(11月15日現在、未回答)とは別に「処分事案のHPへの掲載基準」や「処分理由の詳細な内容」などを求める文書開示請求も行った。掲載基準の回答期限は今月中旬とされているが、処分理由については「HPに掲載した以上の回答はない」(担当窓口)とニベもない。「火のない所に煙は立たぬ」、「頭隠して尻隠さず」…。我が「イ-ハト-ブ」(夢の国)がとんでもない奈落(ならく)に向かって転げ落ちていくような、そんな“悪夢”の日々を過ごしている。被処分者の実名がまるで、”さらし首”のようにHP上に掲載されたのは令和2年1月14日。1年10か月以上が経過した今日(11月15日)現在、いまだに削除されていない。

 

 そういえば、郷土ゆかりの新渡戸稲造はその著『武士道』の中に次のように記している。「ただ、主君の言いなりに無節操に媚びへつらい、主君のご機嫌をとりに終始する口先だけの家臣は『佞臣(ねいしん)』と評されます。また、どんな無理難題でも主君の言いなりで、奴隷のように主君に追従するだけの家臣は『寵臣(ろうしん)』と評されます。これらは、主君に命を託す武士道の忠節とは、全く違う次元のもので、軽蔑すべきもので武士道とは無縁です。…こう考えると、武士道の忠節とは、ただやみ雲に主君に絶対服従だけではないこともご理解頂けるかと思います。武士道の忠節とは、命を投げ出しても惜しくない主君を持ってこそ輝きを放つもの、私はこう考えます」(現代語訳)

 

 

 

 

(写真は胸に手を当てる上田市長。9月定例会の開会中、こんな仕草が目立った。「その胸中はいかに?」=花巻市議会議場で。議会のインターネット中継画面から)

 

 

 

 

《追記ー1》~ひとり言

 

 HP上の実名掲載の削除を要求した「市長へのメ-ル」を送信した10月26日時点でなぜすぐに削除されないまま、いまに至っているのか。「人権感覚」などという前に私にはその”神経“がさっぱり、分からない。初動の判断ミスが後々の破滅を予言することは歴史が証明している。そう、あの太平洋戦争の発端がそうであり、ほとんど思考停止状態の中で無謀にも敢行された「インパ-ル作戦」が自滅の道を突き進んだように…。たった一人の「人権」さえも守ろうとしないこの人物のナゾはいまや、できの悪い推理小説の域にまで達しつつあるようだ。いわんや、「市民の安心・安全」においてをや―である。(瀬戸内)寂聴さんが旅立った。寂しい…

 

 

 

《追記―2》~”組織防衛”という名の機能不全!?

 

 「現在、いただいた『市長へのメ-ル』について、その回答を検討しています。もう少し、お時間をお貸しください」―。今回の「処分人事」疑惑をめぐって、担当の人事課担当者から2回にわたって、電話があった。弁解がましい言葉の裏が透けて見える気がした。「はは-ん、この連中は日々、一個人の人権が侵害されているという事の本質(重大性)を何も分かっていないな。次期市長選をめぐって、現職対新人の実質的な選挙戦が進行するさ中、”主君”(現職)にキズがつかないようにするためにはどう対応すればよいのか。そんな”自己保身“に汲々としているというわけだ」―。見事なまでの佞臣と寵臣ぶりに妙に得心した。了解!首を長くして(我が”首長”からの)回答を待つことにしよう。どんな中身なのか、いまから楽しみである。

 

 

《追記―3》~この恥知らず奴(め)が!!??

 

 地方自治体の市長など「常勤特別職」には特定の勤務時間はなく、「公務」以外の行動には原則制約がない。というわけで、我が首長は平日でも“政務”と称して、決裁書類の滞りなどどこ吹く風とばかり、次期市長選に向けたあいさつ回りにいそしんでいるらしい。で、休日ともなればその姿はまさに神出鬼没の勢い。某日には例の「処分人事」の実名掲載の元職員が住む地区に出没、「ご要望をお聞かせください」などと1時間近くにわたって話し込む姿が目撃されている。万が一、私がその場に遭遇したなら、こう詰問したにちがいない。「あんたに要望なんてないよ。いや、あるある。HP上に実名をさらすのはもう、いい加減にしたらどうなのか」。この無神経たるや尋常ではないどころか、もはや“狂気”の沙汰としか言いようがない。

 

 

《追記―4》~”凡庸なる悪“という不気味さ

 

 ドイツ出身の哲学者で思想家のハンナ・ア-レント(1906―1975年)はナチズムによるユダヤ人大虐殺について、「悪の凡庸」という表現でこう記している。「世界最大の悪は、ごく平凡な人間が行う悪です。そんな人には動機もなく、信念も邪心も悪魔的な意図もない。人間であることを拒絶した者なのです。そして、この現象を私は”悪の凡庸さ”と名付けました」(『エルサレムのアイヒマン』)―。未曾有の殺人を行った首謀者のアイヒマンは「上から言われたことをしただけ」と裁判で話した。考えることを放棄することで、誰もが”アイヒマン“になりうる可能性をこの名言は教えてくれる。宮沢賢治が「イ-ハト-ブ」(夢の国)と呼んだ我がふるさとが“凡庸なる悪”に染まっていく悪夢をみた。

 

 

次期市長への政策提言―「イ-ハト-ブ花巻有志の会」

  • 次期市長への政策提言―「イ-ハト-ブ花巻有志の会」

 

 「国境の長いトンネルを抜けると雪国だった。夜の底が白くなった」(『雪国』)。ノ-ベル賞作家、川端康成の有名な書き出しを借用すれば、こんなイメ-ジになるのだろうか。「花巻駅に降りたら、賢治さんが目の前に立っていた。そこは銀河宇宙への入り口だった」―。私たち有志はこんな願いを込めて、「『イ-ハト-ブ』の実現を目指す花巻有志の会」(略称「イ-ハト-ブ花巻有志の会」)をこのほど、結成した(趣意書は10月15日付当ブログに掲載)。来年1月に誕生する新市長に対しては、こうした見果てぬ夢にもぜひ「聞く耳」を持ってほしいと思う。以下に記す当会の政策提言は将来の市政運営にとって、欠かせない基本施策だと考える。商工業や農業、健康・福祉、教育、少子高齢化、防災など社会のセーフティネット(安全網)に関わる基本分野については割愛する。

 

 

 

●合併15周年の検証

 

~旧3町と旧花巻市との平成の大合併から今年は15年。この節目の機会に総合支所体制やコミュニティ会議の役割や機能を再点検し、たとえば、総合支所の機能強化など見直しが必要な部分については大胆に変革する。「境界領域マネジメント」(役重眞喜子)手法の活用。

 

 

●旧3町のレガシ-(遺産・資源)の掘り起こしと再生

 

~大迫、東和、石鳥谷の旧3町には独自の歴史や文化、風土が育まれてきた。しかし、少子高齢化の影響をもろに受け、過疎化の波にほんろうされている。こうした逆境の中で求められるものこそが「発想」の転換である。

 

~国の重要無形民俗文化財の指定第1号で、ユネスコ無形文化遺産登録の「早池峰神楽」とハヤチネウスユキソウなど5種類の固有種が自生する霊峰・早池峰山、(最近では食害被害が多いが)山野をかっ歩する野生のニホンジカ、ワインの香り…。こうした自然環境をまるごと「ユネスコエコパ-ク」(生物圏保存地域)に登録申請し、自然と人間との共生を目指す。また、大迫高校に「神楽専攻科」を設置し、山村留学のモデル校として全国発信する。「SDGs」(持続可能な社会)の未来へ向けて。

 

~旧東和町は阪神淡路大震災(1995年)の際、全国に先駆けて「被災者受け入れ」条例を制定するなど移住者に広く門戸を開いてきた自治体として知られる。この時の体験は「川崎市との交流」や「全国東和町サミット」「滞在型農園」「山野草クッキングツア-」など様々な成果となって、現在に引き継がれている。こうした「移住定住」政策の先験に学ぶ。

 

~旧石鳥谷町は酒文化と南部杜氏のまちとして、大迫、東和とは別の歴史を歩んできた。音楽家の佐藤司美子さんが「酒つくり唄」(作業唄)を復刻・CD化するなど伝統文化の継承も盛ん。「記憶」の再生の大切さを学ぶ。

 

 

●上田(東一)市政のキ-ワ-ドのひとつ―「立地適正化計画」の総点検

 

~計画立案に至る経緯=「市長就任」(2014年=平成26年2月5日)→「改正都市再生特別措置法(立地適正化計画の創設)」(同2月12日閣議決定、同5月21日公布、同8月1日施行)→「花巻市立地適正化計画」が全国で3番目に策定(2016=平成28年6月1日)=補助金行政への過度の依存とそれに伴う独創性の欠如。

 

~総合花巻病院の移転・新築、花巻中央広場、新花巻図書館構想、JR花巻駅の東西自由通路(橋上化)構想の政策立案過程とその是非の検証。新花巻図書館については「図書館とは何か」という”そもそも”論に立ち、ゼロベ-スから議論をやり直す。橋上化についてはその受益者負担の不公平性や立案過程の不透明性、「レインボ-計画」というレガシ‐(遺産)の破壊につながるなどの観点から、全面白紙撤回へ。

 

 

●将来都市像「イ-ハト-ブはなまき」を実践するための具体的な処方箋の策定

 

~1市3町には宮沢賢治の愛好家らでつくる読書団体や読み聞かせグル-プが数多く存在する。いわば、花巻(イ-ハト-ブ)を全体として貫く「思索」の基軸ともいえる。全域の精神的な土壌(風土)としての新たな”賢治学”の創設へ。

 

~一方、賢治の影響を受け、宮沢賢治賞やイ-ハト-ブ賞を受賞した人たちは128の個人・団体にのぼっている。この中には高木仁三郎(物理学者、故人)や井上ひさし(作家、故人)、池澤夏樹(作家)、アフガンでテロの銃弾に倒れた医師の中村哲、高橋源一郎(作家)、吉本隆明(評論家、故人)、むのたけじ(ジャーナリスト、故人)、高畑勲(映画監督、故人)、色川大吉(民衆思想家、故人)の各氏など各界各層のキラ星のような人材が並んでいる。こうした“賢治人脈”の源流を探る。

 

~たとえば、「イ-ハト-ブ花巻有志の会」の趣意書にはこんな処方箋が示されている。「現在のJR花巻駅はそのまま残し、隣接する地下道には賢治童話をイメ-ジしたメルヘンチックな空間を創出し、『銀河鉄道始発駅』みたいな雰囲気のまちづくりを目指したい」。どこでも賢治と“遭遇”できるまちづくりへ。

 

 

●遊休跡地の有効活用~未来世代を見つめて

 

~旧花巻市内の中心部には「末広町」(旧花巻警察署)、御田屋町(旧新興製作所=花巻城址三の丸)、吹張町(旧料亭「まん福」)、花城町(旧総合花巻病院)などの一等地が遊休跡地として放置されたままになっている。その立地条件の良さの有効利用こそが将来のまちづくりの生命線と言える。

 

~たとえば過日、開催された「まん福」跡地の利活用を話し合うワ-クショップ(WS)ではその地の利を生かしたアイデアが多く出された。中でも現在、建設場所をめぐって迷走を続けている「新花巻図書館」については「この高台こそが最適地ではないか」という意見が3人から出されて注目された。一方、花巻駅前への立地計画もJRとの土地取得交渉が不透明な状況にあり、さらに候補地のひとつとされている「花病跡地」の建物撤去作業は大幅に遅れる見通しが明らかにされるなど難問が山積している。

 

~こうした状況下、「新興跡地」の市有地化なども視野に入れ、一部受益者だけではなく、旧3町を含めた全市民の意見集約を市政課題と位置付ける。新幹線「新花巻駅」誘致を成功に導いた全市民的な“住民運動”の記憶を呼び戻す。

 

 

 

●中心市街地の活性化~「賢治」の息遣いが聞こえるまちに

 

~賢治の生家や賢治童話『黒ぶだう』の舞台とされる菊池捍(きくちまもる)邸、交流施設「賢治の広場」などが集中するこの一帯を「賢治」と一緒に散策できるゾ-ンに。賢治は生前、「下の畑」で収穫した野菜や花きなどをリヤカ-積み、この界隈で売り歩いた。この「リアカ-」行商を復活させる現代版「楽市楽座」(どでびっくり市=フリ-マ-ケット)の常設化。「まん福」跡地への新花巻図書館立地が実現すれば、一体的な導線効果も期待できる。

 

 

●理念型観光ル-トの確立~「メルヘンル-ト」の形成

 

~「平泉」(藤原清衡ら”奥州藤原3代”の歴史と記憶)―「花巻」(宮沢賢治、新渡戸稲造、佐藤昌介、島善鄰、高村光太郎、萬鉄五郎らの風土的な足跡)―「遠野」(柳田国男、佐々木喜善、 伊能嘉矩らの民俗史の軌跡)―「釜石・大槌など三陸」(井上ひさしの全身小説家としての奇想天外譚)を結ぶ観光ル-トをめぐりながら、単なる物見遊山型観光から「理念型」観光への脱却。

 

 

●広域行政の模索~隣市・北上との対話の促進

 

~工業化が進む北上市では現在、住宅ラッシュは続いている。ほとんどが「キオクシア」など大規模な工場団地で働く労働者向けの住宅建設で、空き地に余裕がなくなった同市では居住地を「花南」地区など温泉地・花巻に求める動きが加速している。こうした一体的な地域開発にとって不可欠なのは行政トップ同士の意思疎通。市境の壁を取り払って、広域行政のモデルを構築する。

 

 

 

 

(写真はJR花巻駅前の「風の鳴る林」を取り入れた、賢治をイメ-ジさせるチラシ)