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「新図書館」構想⑫ 南からの、新しい風…「二人爺ィ」に抱腹絶倒

  • 「新図書館」構想⑫ 南からの、新しい風…「二人爺ィ」に抱腹絶倒

 

 「なぜ、図書館の上層部に賃貸住宅を建設しなければならないか理解できません。『図書館の自由に関する宣言』(日本図書館協会)によると、図書館には『公共施設の美』としての評価もあります」(陳情書)―。花巻市議会文教福祉常任委員会(本舘憲一委員長ら8人)での陳情審査(3月9日)の席上、はっきりした口調で「(図書館の)単独整備」を要求する意見陳述を聞きながら、私はハッと気が付いた。先月14日に花南振興センタ-で開かれた議会報告会で、鋭い意見を表明した女性がいたのが強く印象に残っていた。今回の陳情者の山下牧子さんがその人だったことを初めて知った。

 

 先の議会報告会は2月中旬、市内12か所で3日間にわたって、開催された。中心市街地に位置する「まなび学園」の参加者がわずか3人だったのに対し、私の地元である花南振興センタ-に足を運んだ住民は27人と最高を記録した。山下さんら女性が先導する形で議論が白熱した(2月14日付当ブログ参照)。なぜ、これほどまでの盛り上がりを見せたのか―その時以来、ずっと考え続けてきた。約10日後に催されたあるイベントをのぞいて、その謎が少し、解けたような気がした。

 

 「『北芸の会』創立35周年記念公演」と銘打った演劇が2月23日、隣接する北上市の「日本現代詩歌文学館」の中ホ-ルで披露された。「北芸」は北上を中心に芝居好きが集まった素人劇団である。日本で唯一、詩歌に特化した図書館であるこの文学館の誕生の経緯については2月27日付当ブログ(「するべじゃ」の鶴の一声)で触れた。この日の演目は当時、理事として文学館の立ち上げに尽力した同市出身の詩人で脚本家の相沢史郎さん(故人)の不朽に遺作『二人爺ィ』。昭和61年以降、東京をはじめ全国を縦断した主なお披露目だけで50回近くに及ぶ。

 

 「二人で待づべな、昔雑魚(ざっこ)釣りした時みでぇぬよ。金三。な~」―。舞台では老人ホ-ムで暮らす二人の老人…清助と金三の悲喜こもごもの人生が演じられていた。その絶妙のセリフと仕草に腹を抱えて笑い転げていた時、ふいに文学館の生みの親、「五郎さん」(当時の北上市長、斎藤五郎さん)の言葉を思い出した。いま、隣り町は半導体記憶装置フラッシュメモリ-を製造する「キオクシア(東京、旧東芝メモリ)」のオ-プンで話題が持ちきりだが、斎藤市長は40年近くも前にこう語っていた。

 

 「東芝などの企業進出で北上市は、工業都市としての発展がほぼ約束されたと思う。しかし、せっかく文学的な風土があるにもかかわらず、その象徴になるものがない。工業砂漠だけにはしたくない」(昭和59年1月25日付「岩手日報」)。ふと、目を舞台に移すと、三代目「金三」役の小笠原百治さんが世をはかなんで首にひもを回そうとしている。「自死」は不首尾に終わるが、迫真の演技である。83歳の小笠原さんは私の自宅近くでリンゴ園を経営する親しい仲である。大学で演劇を学んだ本格派の「金三」さんがニヤッと笑って言った。

 

 「この地区は北上と背中合わせ。だから、“五郎”精神というか、文化の香りがする風もビュンビュン吹いてくるんだよ。花巻の町方とちょっと、違う風土があるのかもしれんな。それに賢治精神って言ったらいいのか、賢治を身近に感じることができる土地柄だし…」―。宮沢賢治が「羅須地人協会」を設立し、近隣の農民らと“農民芸術”を論じたのもこの地だった。そういえば、花南地区は市内で唯一の人口増加地区でもあり、自宅をここに構えて、車で15分ほどの工業団地に通勤する“新住民”も増えつつある。

 

 実は山下さんもこの地区の住民で、南からの「ビュンビュン」風を日ごろから感じているのかもしれない。「今回の新図書館構想には驚きと同時に失望を感じた」…山下の陳述を聞きながら、私はドキュメンタリ-映画「ニュ-ヨ-ク公共図書館」の場面を脳裏に浮かべていた。入り口に2頭のライオン像が置かれた建物は、19世紀から20世紀にかけたボザ-ル様式の傑作といわれ、1911年のオ-プン当時は米国一の総大理石建造物として話題をさらった。図書館とはまさに山下さんが指摘するように、「公共施設の美」としても存在するのである。

 

 

 

(大の仲良しの清助と金三が取っ組み合いのけんかをする場面も。げんこつを食らわせているのが「金三」役の小笠原さん(右)=2月23日、北上市本石町の詩歌文学館中ホ-ルで)

 

「新図書館」構想⑪ 追認機関と堕した“図書館人脈”…教委も蚊帳の外

  • 「新図書館」構想⑪ 追認機関と堕した“図書館人脈”…教委も蚊帳の外

 

 

 「生涯学習の委員会については今週にかけて、住宅の建設も含めて皆さんから大変好評だったと聞いています」(2月20日開催の記者会見での市長発言)―。ここで指摘された「花巻市社会教育委員会議」(議長=石橋恕篤・富士大学教授、委員20人)は2月17日に開催され、踏み込んだ意見交換がないまま「商業施設的なイメ-ジをあわせ持つこじゃれな図書館をつくっていただいきたい」という意見に集約される形で、全員一致で新図書館構想を原案承認した。このように、本来は公正・中立であるべきはずの審議会などの各種組織が当局側の追認機関に成り下がっている実態が次々に明らかなりつつある。さらに、組織運営や委員構成などでのル-ル違反も目立ち、もはやその存在自体に首を傾げる市民も多い。

 

 たとえば、“シャンシャン”承認を決めた同上会議の委員の中に「教育振興運動推進協議会」の肩書を持つ人物の名前を見つけた。「もしや」と思って確かめたら、現職の花巻市議と同一人物だった。市議会先例集には「法令に規定されているものを除き、各種委員会、審議会等の委員には議員は選出しないこと」という申し合わせ事項がある。明らかに、ル-ル違反である。この日の会議には欠席していたが、3月定例会の一般質問で件(くだん)の議員は新図書館構想を前提にしたうえで、「周辺広場を芝生化するということだが、祭りの山車の運行によって、芝が傷つく心配はないか」などとトンチンカンな質問をする始末。この議員は一方で、図書館問題のあり方を調査・研究する「市議会特別委員会」に身を置く立場にあり、“二股膏薬”(ふたまたこうやく)ぶりを発揮した。

 

 さらに、図書館と最も至近距離にあると考えていた「花巻市立図書館協議会」(坂本知彌会長、委員10人)は2月26日に開催され、白熱した「図書館(理念)」論争を期待したが、これも肩透かしに終わった。当局側の説明席に目をやると、これまで面識のなかった男性が最前列に座っていた。突然、手を上げて新図書館構想についての補足説明を延々と始めた。後で確認すると、アドバイザ-として出席していた富士大学経済学部の早川光彦教授(図書館学)だとわかった。かねてからの助言者だとは知っていたが、たとえアドバイザ-としての立場だとしても公正な議論が求められる場の発言としてふさわしいのかどうか。果たせるかな「複合化する賃貸住宅には入居者を確保する見通しはあるのか」―などと理念論争をわきに置いた的外れな意見が続き、最終的に当局原案を「了」とすることに落ち着いた。

 

 「不存在」―。花巻市教育委員会協議会の会議録の文書開示請求(2月21日付)への回答はたったの3文字だった。ここ数年来の教育委員会改革によって、それまで政治的中立性が求められてきた教育委員会の一部事務が行政部門に移管したが、それでも図書館が学校教育の柱であることに変わりはない。今回の新図書館構想をまとめるに当たって、教育現場を管轄する教育委員会はどう関わったのか―というのが私の当初からの重大関心事だった。当該会議が1月27日に開催されたことを知り、会議録の開示を求めた結果がこれである。不存在にした理由について、佐藤勝・教育長は「協議会は自由意見を述べる場で、今回は当局の新図書館構想案の説明を受けるにとどめた。規則上、会議録の作成は必要ではない。教育委員会の方向性は今後、表明していきたい」と話した。

 

 さらに、構想案提示の際の議論を「記録」として残すべき最低限の業務を放棄したとあっては、国レベルの公文書の改ざんや廃棄に勝る重大な責任放棄と言わざるを得ない。「百年の計」ともいわれるこのビッグプロジェクトについて、教委側にはいま現在、「記憶も記録ない」という摩訶不思議がまかり通っている。

 

 「専門家の方々にもおほめをいただいている」―上田東一市長はことあるごとにこう口にしてきたが、新図書館構想に“お墨付き”を与えた組織の実態はまさに追認機関そのものだったことが白日の下にさらされた。逆に言えば、こうした“図書館人脈”のお墨付きをアリバイ的に利用しようという当局側の魂胆も浮き彫りになった。いまとなっては、最初から「異議なし」委員を選出していたのではと皮肉のひとつも言いたくなる。やはり、今回の新図書館構想はそもそも“無理筋”だったのである。図書館関連予算の撤回は遅きに失したと言わざるを得ない。

 

 

 

(写真は現図書館の郷土資料コ-ナ-。宮沢賢治や高村光太郎など郷土ゆかりの資料整理も乱雑で、ソフト面の充実が課題になっている。だからこそ、市民の多くは本が“生きてある”存在を願っているのだと思う=花巻市若葉町で)

 

 

 

 

東日本大震災から9年…一体、何が変わったのか?いや、何も変っていない!いやいや、さらなる闇の彼方へ!!~「新図書館」構想は事実上の撤回へ

  • 東日本大震災から9年…一体、何が変わったのか?いや、何も変っていない!いやいや、さらなる闇の彼方へ!!~「新図書館」構想は事実上の撤回へ

 

 

 「質疑に入る前に、ひと言だけお祝いの言葉を申し述べたいと思います。委員長は本日をもって62歳の誕生日ということで、おめでとうございました。それで、実は不肖(ふしょう)私も本日をもって71歳ということで、お互いに健康で議場でまみえることができるというのは、ひとえに神のご加護と感謝を申し上げたいと思います」―。ちょうど、9年前のこの日(2011年3月11日)、私はちょっぴり気取った調子で、予算特別委員会の質問をこう切り出した。藤原晶幸委員長(現副議長)に「誕生日が同じ」というよしみで冒頭での質問を申し出た結果、快く受け入れてもらったのである。約4時間余りがたった午後2時46分、議場全体が大きく揺れ、一部の壁がくずれ落ちた。議席の下にもぐり込んで身を守った。「東日本大震災」はこんな光景の中で発生したのだった。

 

 「(議会側に)図書館に関わる特別委員会が設置されることを受け、一般会計に計上していた関連予算(4,337万円)を削除し、改めて修正案を提出したい」―。あの日から9年が経過したこの日、神妙な表情の上田東一市長は前代未聞の「予算案」撤回の理由をこう説明した。「場所や中身を含めて、再検討することか」と問われた上田市長は「いったん、今回の構想案を取り下げ、議会とのコンセンサスを探りたい」と事実上、「新図書館」構想を白紙撤回することを認めた。全議員がこれを承認した。本来なら、内閣総辞職にも匹敵する事態である。しかし、“迷走”に至った経緯について、上田市長の口からその責任に言及する発言は最後までなかった。この人ならではの”開き直り”なのかもしれない。

 

 

 「あの日も予算委の真っ最中だったな。でもあれは防ぎようのない自然災害。失政による今回の“人災”とはまるで違う」…とボソボソと独り言(ご)ちながら、私は9年前の「ドタバタ」劇を昨日のことのように思い出していた。

 

 あの大震災は私が市議に初当選した約8ケ月後に起きた。当然のことながら、予算委は急きょ散会となり、議員たちは救援のために被災地の現場へと散った。私自身も仲間に声をかけ、支援組織「ゆいっこ花巻」を立ち上げ、大槌町など甚大な被害を出した沿岸被災地を行き来した。その一方で、喫緊(きっきん)の支援策を論議するために開かれたその後の臨時議会や(2011年)6月定例会では信じられない出来事が続発していた。全国から寄せられた義援金を法律を無視して市の一般会計に計上した「義援金流用」疑惑、議会傍聴に来ていた内陸避難者に向けられた、議員による暴言(「さっさと帰れ」発言)、この問題を追及した私が逆に「議会の権威を損ねた」という理由で、処分を受けるという異常事態…。私はこの経緯を『イ-ハト-ブ騒動記』と題する本にまとめた。

 

 満80歳の誕生日を迎えた今日この日の早朝、私は北上川周辺をぶらつく恒例の散歩に出かけた。コ-スの途中には宮沢賢治の「雨ニモマケズ」詩碑が建っている。「東ニ病気ノコドモアレバ/行ッテ看病シテヤリ/西ニツカレタ母アレバ/行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ/南ニ死ニサウナ人アレバ/行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ/北ニケンクヮヤソショウガアレバ/ツマラナイカラヤメロトイヒ」―。彫刻家、高村光太郎の筆によるおなじみの詩句が雲間から顔を出した陽光に光っていた。9年という時空の流れが走馬灯のように目の前を去来した。「このまちは賢治の精神から随分と遠く離れた所に来てしまったな」―。私は拙著の「はじめに」に当時、次のように記した。

 

 「『あの日』から5年がたった。戦後日本の行く末を決定づけるとその時は誰しもが考えていたはずの『東日本大震災』―まるであの災厄が夢まぼろしでもあったかのように、記憶の風化がいま、加速しつつある。『3・11』以降、この国はどう変わったのか。いや、変わらなかったのか。この物語は震災直後、詩人で童話作家の宮沢賢治の理想郷『イ-ハト-ブ』の足元で繰り広げられた、見るも無残は光景を当事者の立場で再現する内容になっている。…賢治は自作の詩『雨ニモマケズ』の中で受難者に『寄り添う』ことの大切を『行ッテ』と直截(ちょくせつ)に訴えている。『イ-ハト-ブ騒動記』の中で暴かれた光景の数々はまさにこの精神の対極に位置していた」―

 

 予算案の撤回に揺れるインタ-ネット中継による議場の光景をぼんやりと眺めながら、私はその「日時」の一致に一瞬、ギクリとした。「義援金流用」疑惑の発端になったのも「3・11」のこの日だった。そしていま、目の前では貴重な税金の使途を決める予算審議が紛糾を極めようとしている。懸案が山積みの「新図書館」構想、コロナ騒動、降ってわいたような行政トップによるパワハラ疑惑…。『「上田」残酷物語』はいままさに進行中である。世間では東日本大震災の教訓になぞらえて、「コロナ危機」によるライフスタイルの見直しが一部でささやかれている。 

 

 「この9年間に積み上げられた残骸の山を見れば、それは虚しい願望だよな」と妙に力(りき)んでいる自分に苦笑する。そろそろ、騒動記の続編を書き始めなければなるまいか。あの時もいまこの時も「なにひとつ変わっていない」―という書き出しで…。予算特別委の冒頭、照井省三委員長が「震災発生時刻に合わせて、犠牲者の霊に全員で黙とうを捧げたい」と宣言した。議場に参集した関係者はどんな気持ちで、「あの日」と「この日」に思いを致したのだろうか―

 

 

 

 

 

(写真は賢治の「行ッテ」精神が刻まれた詩碑。このメッセ-ジとは真逆な上田「ワンマン」市政がまかり通っている。=3月11日朝、花巻市桜町4丁目で)

 

 

 

《追記》~夢まぼろしの“お化け屋敷”

 

 本来ならば、喧々諤々(けんけんがくがく)の論戦が予想された予算特別委員会(照井省三委員長)だったが、当局側がいったん提案した図書館関連予算案を突然、撤回したため(3月9日付当ブログ参照)、12日開催の同特別委は修正・再提出された「令和2年度一般会計予算案」を全会一致の賛成で可決した。今回の「新図書館」構想が公表されて1ケ月余り―この間の“図書館”騒動は一体、何だったのか。

 

 この日、撤回に至った責任や今後のスケジュ-ルの変更などについて、上田東一市長に問いただす質問は一切なかった。「予算に計上されていな案件については答弁を差し控えたい」という上田市長の”術中”にまんまとはまった格好だ。今後の展開は図書館問題に特化した「特別委員会」に移されることになるが、こんなことでは先が思いやられる。市民を巻き込んだ図書館フィ-バ-はまるで「なかった」ことのように雲散霧消してしまった。まこと、わが「イ-ハト-ブ」は魑魅魍魎(ちみもうりょう)が跋扈(ばっこ)する(3月6日付当ブログ)“お化け屋敷”に成り果ててしまったようだ。議会側の奮起を待つしかない。

 

 

速報~前代未聞!?…花巻市が当初予算案を撤回

  • 速報~前代未聞!?…花巻市が当初予算案を撤回

 

 花巻市は開会中の花巻市議会3月定例会に上程している「令和2年度一般会計予算(案)」を撤回することを9日付のHPで公表した。予算総額は482億3,050万円。この中には人件費などの必要経費が含まれており、予算案そのものを全面撤回するのは前代未聞。HPによると、予算特別委員会が開催される今月11日午前10時から本会議を開き、図書館関連予算を減額したうえで、改めて必要経費などを盛り込んだ“修正案”を再提案するものとみられる。このため、同委員会の予算審議は午後1時からに先延ばしされた。今回の措置は新図書館構想の事実上の「白紙撤回」と言えそうだ。

 

 この異常事態の背景には「新図書館」構想をめぐる議会側との対立がある。上提案の中には新図書館関連の予算として、①「図書館整備事業費」(新図書館整備基本構想作成費)1,528万円、②「都市再生推進事業費」(花巻駅周辺基盤整備検討調査実施費)2,809万円の計4,337万円が計上されていた。しかし、議会側が図書館のあり方を調査・研究する「特別委員会」の設置を決めているほか、市民無視のやり方や調査委託先との不明朗な関係が取りざたされ、この際いったん「白紙」に戻す選択を余儀なくされたものとみられる。ただ一方で、“強引”ともいえる手法で、このプロジェクトを進めた上田東一市長の政治責任が問われるのは必至で、今後の対応が注目される。

 

 一方この日、文教福祉常任委員会(本舘憲一委員長ら8人)は新図書館の単独整備を求めていた陳情審査(2月25日付当ブログ参照)を行い、「議会としても特別委員会の設置を予定しており、今後、さらに議論を深める必要がある」として、委員長を除く全員一致で「継続審査」に付することを決めた。参考人陳述に立った「新花巻図書館を考える会」の山下牧子代表(提出者)は「今回の新図書館構想を知った時は驚きと同時に失望した」と単独整備を強く求めた。

 

 「当局側としては最善策の原案として、提示したつもりだったが、立地場所の変更を含めて、今後、再検討をしたい」、「もし市民の大勢が賃貸住宅との一体化を望まないということになれば、その考えを撤回することもあり得る」―。説明にたった市川清志・生涯学習部長の答弁は当初の威勢の良さはどこかに消え、「青菜に塩」状態に。新図書館問題の劣勢に加え、コロナ騒動やパワハラ疑惑が追い打ちをかける格好で、上田「ワンマン」市政はレ-ムダック(死に体)状態に陥りつつあるようだ。

 

 

 

 

 

 

(写真は断崖絶壁に立たされた花巻市庁舎=市内花城町で。インターネット上に公開の写真から)

 

「新図書館」構想(番外編) 上田流「謎の随意契約」の真実は…法律の専門家が法律を無視の巻

  • 「新図書館」構想(番外編) 上田流「謎の随意契約」の真実は…法律の専門家が法律を無視の巻

 

 今回は“ある筋”を通すことなく、私宛に直接、“怪文書”第2弾が送り付けられてきた。表題のようなタイトルのその内容は上田東一市長に対し、容赦なく手厳しい。いわく―「昼飯の出前を決めるようなめちゃくちゃな理由が、地方自治法施行令のどの随意契約理由に該当するか、あなたは理解できますか?―市民にはさっぱり理解できません。これぞ、法律の専門家上田市長!完全に地方自治法違反。法律の専門家が法律を無視。もしかしたら、(株)オガ-ルに随意契約しなければならない密約でもあるんですかねぇ~。流石(さすが)、パワハラ・強権・議会軽視・市民無視の“裸の王様”上田市長」―。返す刀でその矛先は私にも向かってきた。

 

 「あなたも元記者なら、ちまちました記事ばっかり書かないで、疑惑の新図書館構造(構想?)の核心に迫る記事をブログに掲載してちょうだいよ。陳情のコピ-や新聞記事の転写だけでなく、元記者なら足で取材して、疑惑の随意契約について、ちゃんと市の契約担当の偉い部長とか課長に取材して、謎の随意契約理由の真相究明をお願いします」―。お叱りを真摯に受け止め、さっそく担当者のレクチャ-を受けてきた。お説のように「随意契約」には厳格な法規制があることがわかった。それにしても最近、不思議な感慨にとらわれている。永田町界隈で繰り返され続けている“真相隠し”と今回の“怪文書”事件を見ていると、実はいわゆる「怪文書」の中にこそ、「真実」が隠されているのではないか、と…。以下に番外編として、送られてきた文書の内容をそのまま、掲載させていただく(傍線と太字は「怪文書」氏)

 

 

 

 

●「令和2年2月 定例記者会見」を花巻市ホ-ムペ-ジから一部抜粋

 

(記者) 株式会社オガ-ルとの契約は随意契約(注)での業務委託みたいな形になるか

 

(市長) 我々はそのように考えています。と言うのは、JRとの話し合い、橋上化の話もありますが、やはり全国には、①いろいろ公民連携の教科書がベストセラ—でありますよね。全国のそういう公民連携の事業を進めている本で、非常に評価の高い本だと思いますけれども、あれでも全国の公民連携の専門家の中で、岡崎(正信)さん(オガ-ル社長)の手腕について非常に評価が高いんです。それが一つですね。

 

 それから②もう一つは、花巻市において、そういうことについて経験のある方は多分いないと思います。県内にもいないということで、東京には多分いらっしゃるんですが、東京の方を含めて、しょっちゅうお会いして来てもらって話をするというのはなかなか難しいと思うんですね。

 

 それから③もう一つは、岡崎さんとの縁は前にもお話したと思いますけれども、私が市長になった直後からなんですね。平成26年2月に私市長に就任しましたけども、6月か7月ぐらいに、オガ-ルに行って岡崎さんとお会いしていろいろ話をしたんです。非常に発想が優れているなという印象でございます。

 

 私自身、前歴は法務担当で企業におりましたので、そういうことについて普通の方よりは知見があると思いますけれども、それでも例えば建物を造るについてのそういう積み上げですね、今まで公共単価という話をしましたが、積み上げていくとか、性能発注とか、よく分からないところがあります。

 

 そうすると、やはりその部分については、専門的な知見を持った人に入っていただかなくてはいけないということ、それをお任せするのではなくて、しっかり一緒にやっていきたいということなんですけれども、さっき申し上げたように、平成26年の夏ぐらいには岡崎さんとお話して、オガ-ルの説明をいただいて、8月ぐらいだったと思いますが、岡崎さんに進められてリノベ-ションの勉強会、研修を花巻で初めてしたんですね。そのときにリノベ-ションで有名な方で岡崎さんの紹介で清水義次先生に来ていただきましたけども、そこでそういう研修を受けた中から出てきたのが小友(康広)さん(花巻家守舎代表)とかですね、実際今、リノベ-ションやっている方々なんです。リノベ-ションスク-ルはその後も開いていますが、そのときに岡崎さんに来てもらっていろいろご助言をいただいたりしています。

 

 あとは花巻市の職員を岡崎さんのところに研修のような形で1年間出しています。そういうことで、信頼できるなというのが正直なところでございまして、我々の知らない方に頼むのはちょっと怖いということ、そして花巻市に近いところにお住まいの人ですから、しょっちゅうお会いできるということですね、これが大きな理由だと思います。①彼の実績、②それから知っているということ、③近いとこにいらっしゃるという三つではないでしょうか。

 

 

こんな、めちゃくちゃな理由で随意契約できるのでしょうか?

 

 

 以下、地方自治法施行令の一部抜粋(第167条の2)

 

(随意契約)

 地方自治法第234条第2項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる場合とする。

 

一 売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあっては、予定賃貸借料の年額又は総額)が別表第五上欄に掲げる契約の種類に応じ同表下欄に定める額の範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき

 

二 不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき

 

三 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律…以下、一部省略…普通地方公共団体の規則で定める手続により受ける契約をするとき

 

四 新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるところにより普通地方公共団体の長の認定を受けた者が新商品として生産する物品を、普通地方公共団体の規則で定める手続により、買い入れる契約をするとき

 

五 緊急の必要により競争入札に付することができないとき

 

六 競争入札に付することが不利と認められるとき

 

七 時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき

 

八 競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき

 

九 落札者が契約を締結しないとき

(以上)

 

 

 

《注》~「随意契約」とは(この項の文責はブログ筆者)

 

 官公庁が民間会社などと契約を締結する時に、相手方を決定するための契約方式は「競争契約(入札)」と「随意契約」の二つに分けられる。随意契約を採用する際の判断基準には、「少額随意契約」、「競争性のない随意契約」、「不落随意契約」の3種類がある。この中で、競争性を排除した契約方式は、研究用の精密機器など販売可能な会社が一社に限定されるなどのケ-スがほとんどで、官公庁の契約行為の中では「例外」とされる。たとえば、物品購入費が130万円以下(花巻市)などの場合に採用される「少額随意契約」が官公庁では一般的である。

 

 このほか、「プロポ-ザル」(技術提案書競技方式)と呼ばれる方式もあり、主に業務の委託先や建築物の設計者を選定する際に、複数の相手先に目的物に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を行った者を選定することを指す。さらに、発注者が複数の設計者から対象プロジェクトについての「設計案」の提出を求め、その中から最も良いものを選ぶ「コンペ方式」(設計競技方式)などもある。3月3日付当ブログ(「契約関係に重大“疑惑”」)で触れたように、オガ-ル1社との随意契約が結ばれることになれば、「怪文書」氏が指摘するように法抵触の疑義が浮上する。

 

 

 

 

(写真はリノベ-ションの成功例として知られる「オガ-ル」の全景。しかし。花巻市との親密すぎる関係には市民の間にも疑問符が?=岩手県紫波町で。インタ-ネット上に公開の写真から)