『健康を阻害しない温度』のお話

寒くなってきましたので、この話をしたいと思います。

以前にもご紹介した記事ですが、なぜ高断熱・高気密が必要なのか・・・

住宅性能で健康を阻害しないための大事なお話です。

 

断熱施工が行われる理由は、理想的には住宅全体を均一な温熱環境に近づけるためです。上の図は、同じ住宅モデルを用いて、昭和55年(1980年・省工ネ基準:等級2)、平成4年(1992年・新省工ネ基準:等級3)、平成11年(1999年・次世代省工ネ基準:等級4)、平成11年(1999年・次世代省工ネ基準:等級4+α等級:2012年基準相当)の4種類の住宅の一日中暖房していない1階トイレの温度を表したものです。(盛岡Ⅲ地域)

2012年基準相当の断熱性能が高い住宅ほど、終日温度が高くなっていることが判ります。起床時間の6時の温度を比較すると1980年基準の住宅と比較して、1999年基準の住宅では4.7℃、2012年基準相当では6.7℃も高くなっています。

ヒートショックの危険のある温度は、室温10℃以下からリスクが高くなり増加してくることが判っています。従って健康を守るためには、トイレなどの無暖房室でも室温は10℃以下に下げない事が重要になります。

1999年基準(次世代省工ネ基準:等級4)の温熱環境は、健康を守るために最低限必要な温度環境であることが判ります。

しかし現状では既存住宅5000万戸の内、5%ぐらいしか1999年の「次世代省エネルギー基準」に達している住宅は無いと言われています。ほとんどの住宅が暖房設備が稼働していない状況では、10℃という健康保全温度を満たすことは出来ません。

断熱性能が重要なのは、暖房していない部屋の温度も低下させない効果です。断熱性能が高いと冬季間の窓からの日射熱や人体、照明、家電からの熱も屋外に放熱させにくくするからです。

従来の高断熱住宅は冬場対策だけが考えられて、日射遮蔽等の夏場対策が不足していました。そのために高断熱住宅は、夏暑いというマイナスイメージがありましたが、冬の環境を快適にするダイレクトゲイン等の夏場対策と共に、自立循環型住宅など夏・冬共に快適な高断熱住宅が開発されています。

我が国の省エネルギー基準もようやく、住宅が無暖房状態でも人の命を守れる水準を実現できるレベルに達してきています。

 

しっかりとした断熱・気密施工のされた高性能住宅でなければ、長きにわたり家族の健康を維持することは、難しいでしょう。無暖房状態でも人の命を守れる水準を維持し、快適な住環境を創造することが、私達住宅産業に携わる者の使命であると考えています。

 

2017.10.29:m-seino:[清野 光芳/レポート集]

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