今回より、樹脂サッシと住環境についての記事をご紹介いたします。
初回は住宅の開口部の歴史と特殊性についてです。
我が国では現在でもまだ開口部は、アルミサッシが主流ですが、実際には世界的に見てもアルミサッシは少数派で、これだけアルミサッシが開口部に使用されているのは我が国の特殊性でもあります。
アルミサッシは熱伝導率が極めて高く、結露を起こしやすい材料で、実際には開口部に最も向いていない材料といっても過言ではありません。
高性能住宅になればなるほど、開口部の性能が重要になってきますが、アルミサッシがあまりに一般的に使用されてきたために、開口部はアルミサッシが適しているものだというう思いこみが、建て主ばかりでなくビルダーの側にもあったように思われます。
戦後のバラック建築の時代には、開口部といえば粗末な木製の建具に単板ガラスがはめ込まれたものが主流でした。この木製建具サッシは、同じ木製でも欧米の木製サッシとは似て非なるものでした。
我が国の住宅も高性能化が始まり、気密性能が求められてハウスメーカーの当時の最新住宅と共に登場したのが、アルミサッシでした。
開口部枠にビスをねじ込むだけで簡単に取り付けアルミサッシは、建て付けの悪かった木製建具「窓」の隙間を防ぎ、当時の住宅の温熱環境を格段に高めました。それ以降、我が国の一般住宅では、開口部はアルミサッシで造るものだという認識が定着していったようです。
アルミサッシに問題があると気付いたのは、住宅を高断熱・高気密化すればするほど、アルミサッシ開口部の熱伝導率が高過ぎて、結露を防ぎきれないことが分かったからです。
住宅の先進国では、RC構造でも鉄製か木製サッシが多く使用されています。木造住宅の場合は、ほぼ100%近くが木製サッシか樹脂サッシを採用してきました。
木製サッシの場合は、製品によっては撥水対策はしてあるものの、こまめに手入れが必要で湿度の高い我が国では、長期間使用する間にメンテナンスを怠ると、サッシにカビが生えたり塗装がはげるなどの経年劣化を起すことも心配されました。ヨーロッパでは開口部は定期的に取り替える(20年程度)ものという認識がありました。
現代ではヨーロッパでも木製サッシからメンテナンスが比較的容易で経年変化の少ない樹脂サッシに急速に置き換わっています。