消防団において、班長に就任する前の私の役職は、班の会計だった。班長になったので、当然会計は他の班員に引き継がなければならないのだが、ただ今ちょうど収支決算書作成の真っ最中だ。
ちなみに班の収支決算書は、私が昨年から作成しており、たぶん班設立以来初めての試みだったと思う。そのため、その決算書上から班の財政面において驚くべき事実が判明したのだった。 まず収入については、消防団からの出動手当金や報酬等が全体の約1/2を占め、残りが班員による積立金や負担金で1/4、地区からの助成金や雑収入で1/4といった割合になっている。これは特に問題がない。問題は支出だ。他への寸志やお祝いなどのわずかな交際費用を除けば、ぶっちゃけほとんどアルコール代だ。ほぼ収入=酒。酒を飲むためだけにお金を集めているようなものだ。よく世間では「消防団はヒマさえあれば酒飲んでばかり」という偏見を持つ人が多いが、ちょっと待って欲しい。それは偏見ではなく揺るぎない事実だ。…っつーか、冒頭「驚くべき事実」なんて言ったけど、別に驚くほどのことでもない。 ただ正直、はたして酒飲む以外にお金を使うことがあるのだろうか。消防団活動で使うのは金じゃなく、もっぱら己の肉体と精神のみではないのか。いくら科学が進歩して機械設備が充実しようとも、災害に立ち向かい人を救うにはやっぱり強い心と熱き血潮が必要だ。大事なのは金じゃねぇぜ。火災よりも激しく燃えるこのハートさ! あー、なんかテンション高くなってきたぁ!よーし、この調子で冷蔵庫からもう一本ビール持ってこようっと。やっぱ飲まなきゃやってらんねぇっつーの、こんなの。 ...続きを見る |
先々週の早朝、消防団の我が部の部長が自宅にいらっしゃって、1枚の紙を私に渡していかれた。紙には「幹部会のご案内」と書かれてある。キター!召集令状、赤紙だ。私が班長になって初めての幹部会。案内の最後にはご丁寧に「新任の班長は必ず出席のこと」と脅迫めいた注意書きまで記されている。
幹部会…。それは弱肉強食の消防団組織の中、死屍累々を踏み越えて幹部まで駆け上がってきたツワモノどもが阿鼻叫喚の地獄絵図を繰り広げる戒厳令の下、徹底的な思想弾圧が行なわれ、腐った精神、怠惰な日常、優柔不断な性格や弱い心を完膚なきまで叩きのめして排除する、恐怖政治にも似た究極の秘密集会…と私は思い込んでいる。私のようなリアルのび太君は真っ先に抹殺されるに違いない。ガクガク、ブルブル…。 実際、以前に誰かから「幹部会に初めて出た人は、日本酒をバケツでイッキ飲みするのが消防団の伝統」と確かに聞いた覚えがある。ただでさえ消防団は明確な命令系統の上に厳格な縦社会を確立している。その中枢をなす幹部会では何をかいわんや、糞をしろと言われたら捻り出さなければならないし、糞を食えと言われたら必ず手洗いをしてから「いただきます」を言わなければならないのだ。あぁ…。 そんな絶望的な気持ちで迎えた昨日、ついに幹部会開催当日がやってきた。 …っつーか、いたって普通の穏やかな会議と懇親会でした。よかったよかった。そういえば、「日本酒をバケツでイッキ…」と私に教えた人は、確か酒屋さんだったような…。 ...続きを見る |
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そして今朝の当番が私だった。班長がサボってしまってはアレなんで、目覚まし5コ位セットしてやっとの思いで6時前に起床した。実は今日は私の誕生日。何が悲しくて自分の誕生日に朝こっ早く年寄りみたいに目を覚ましてカネ叩きせにゃいかんのだ…などと半分夢の中で思いつつ、半鐘のあるポンプ庫に夢遊病者のようにたどり着いた。せっかくの誕生日なので、年の数だけ鐘を叩いてやろうかとも思ったが、30回を越えたところでだんだん悲しくなり、やめた…。なんか自分の人生に警鐘を打ち鳴らしている気がしてきたのは気のせいではないと思う。
でも真面目に誕生日の日ぐらい、何か良いことがないものだろうか。例えば、私が鐘を叩いていると、近所のマンションに住むきれいなおねえさんが「おかげで目が覚めたわ。ありがとう。私、低血圧で朝に弱くて…。明日から毎朝部屋までモーニングコールしに来てね」なんていうシチュエーションがあったりする…わけないですよね。ありえねえっつーの。百八つの鐘で煩悩吹き飛ばしてきま〜す。ではまた来年!良いお年を…
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