特別展「上杉謙信の祈りと信仰」資料紹介

ただいま開催中の特別展「上杉謙信の祈りと信仰」から展示紹介をいたします。

 

展示紹介①

黒い法衣を着た法体姿の謙信像(泰巖歴史美術館様ご所蔵、前期展示のみ)。 法体姿でありながら、身辺に武器を配した構図は、謙信の武将と僧の二面性を伝えています。同様の作例が確認でき、一般的な謙信のイメージを表現したと見られます。

Uesugi Kenshin in black robes, seated on a striped mat. Japanese calligraphy text is visible above the figure.

 

展示紹介②

「朱皺漆紫糸素懸威六枚胴具足 三宝荒神形兜付」を描いた甲冑と考えられ、武将姿の謙信の肖像画と見られます(新潟県立歴史博物館様ご所蔵、前期展示のみ)。この甲冑は謙信所用として伝来しています。

なお、この図像は、「親慶」という絵師による作品であることが分かりますが、この絵師の詳細については現在のところ不明です。

 

資料紹介③

謙信が青年期に武者修行で廻国した際に用いられたと伝わる笈(泰巖歴史美術館様ご所蔵、前期展示のみ)。 江戸時代には米沢城内の文庫に保管され、「謙信一世秘蔵ノ道具」として伝来し、謙信の信仰が後世に語り継がれたことを示しています。

笈を開扉すると、内側は金箔が捺されており、上下それぞれに引き出しがついています。

「謙信公年譜」天文12年夏条によると、「加能越三箇国ヲ巡見有テ十月末ニ栃尾ニ帰リ玉フ」とあり、謙信の北陸巡行の記事を載せていますが、他資料での裏付けができず、現時点では伝承の域を出ません。

 

資料紹介④

川中島合戦で、謙信が善光寺から持ち出した仏具(法音寺様・熊野大社様ご所蔵)。これらの仏具は、弘治元年(1555)の戦いで越後に移され、謙信の信州支配を正当付けようとしました。前期展示では、善光寺ゆかりの宝物類を一堂に展示しています。

手前から、金銅五鈷鈴(重要文化財)、金銅五鈷杵(重要文化財)、金銅舎利塔(県指定文化財)、金銅宝珠塔、如来尊宝印を展示しています(全て法音寺蔵)。

善光寺銘金銅華鬘(南陽市指定文化財、熊野大社蔵)。中央下に「善光寺」の銘が入っています。

金銅三坪旛(南陽市指定文化財、熊野大社蔵)。

 

 

皆さまのご来館を心よりお待ちしております。

 

【お問い合わせ】

米沢市上杉博物館  0238-26-8001

2025.10.03:denkoku:[博物館情報]

10月の体験学習室

  • 10月の体験学習室

10月の体験学習室についてお知らせいたします。

季節企画は「お月見」(9/26(金)~10/21(火))です。
造形体験は「ハニカムシートでつくろう」(9/26(金)~10/21(火))です。

薄い紙を貼り合わせて作った「ハニカムシート」という材料を使って、いろんなものを作ってみましょう。型紙も用意しているので、「何を作ったらいいか分からない……」という方も気軽にお楽しみいただけますよ。

※ご利用の際は感染予防にご協力ください。
※発熱や、風邪症状のある方はご利用をお控えください。
※5人以上のグループでのご利用は、事前にご相談ください。
※定員は20名です。混雑時はお待ちいただくこともございます。

それではご来館を心よりお待ちしております。
お問い合わせは 米沢市上杉博物館0238-26-8001までどうぞ。

2025.09.25:denkoku:[体験学習室]

令和7年度 上杉文華館「謙信・景勝に手紙を出す」⑦

令和7年度 上杉文華館「謙信・景勝に手紙を出す」②

令和7年度の上杉文華館は「謙信・景勝に手紙を書く」と題して、国宝「上杉家文書」などを展示します。

 戦国時代、書状は一定の規則に則って書かれました。このような規則を書札礼といい、差出人と受取人の関係が反映されていました。それをまとめた書札礼書 も作られました。そこには差出者の社会的地位に応じた規範が示されています。その適用は厳密であり、ゆえに実際の書状の書き方から両者の関係を知ることも できます。東国の大名間では、差出は実名に花押、宛名は名字に殿の尊称という表記が、原則的に対等な関係を示していました。特別な内容や礼状などでは、宛名に「謹上」のような上所、差出の実名に官途や姓などを加えて厚礼とし、より丁寧な気持ちを表すこともありました。

 永禄4年(1561)、謙信(長尾景虎)は上杉憲政から名跡と関東管領の地位を譲られ、上杉氏を名乗ったことはよく知られています。これによって謙信、景勝 はその地位に応じた書状を受け取ることになりました。宛名には、「上杉殿」や「上杉弾正少弼殿」などの名字を冠したもの、「山内殿」や「越府」、「春日山」 などの地名を記すもの、また本人ではなく、報告を求めて側近に宛てたものなどがみられます。これらは差出人の立場によって選ばれますが、その基準をみていくことで、謙信や景勝の地位、諸大名家の権力構造、東国社会の変容などがみえてくると思われます。

2025年度はこの解明に取り組んでいきます。

 

第7回《大名家の事情Ⅰ…北条》

 

 【展示期間】9月25日(木)~10月21日(火)

 

  展示目録はこちら

 

 上杉謙信と北条氏はともに関東管領の地位に拠って、関東支配をめぐって対立していました。永禄11年(1568)12月、北条氏と同盟を組んでいた武田信玄が、同じ く同盟者であった今川氏真 うじざね を攻撃して懸川 かけがわ (静岡県掛川市)に逐 お いました。これに対して北条氏は氏真への支援を表明し、劣勢を挽回するため、謙信と同盟を結びま した(越相 えっそう 同盟)。この同盟締結の要請から破綻 は た ん に至る約三年間の北条氏から上杉氏への書状が伝わっています。  北条氏の書状は、当主(前当主)、一門間、家臣、それぞれで様式に違いがありました。特に一門間の相違については、この同盟交渉における上杉氏に対する北条氏 の姿勢という観点から理解されています。一方で、そのような差異が北条氏内の序列を反映しているとみることもできます。今回は、北条氏の序列の視点から文書をみ ていきます。

 

▼ コレクショントーク

 日時:10月5日(日)  14:00

 場所:常設展示室 上杉文華館

 ※入館料が必要です。

 

令和7年度上杉文華館展示スケジュールはこちら

 

皆さまのご来館を心よりお待ちしております。

 

【お問い合わせ】

米沢市上杉博物館  0238-26-8001

2025.09.25:denkoku:[博物館情報]

企画展「藍のものがたり紅花のものがたり」みどころ

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ただいま開催中の企画展「藍のものがたり紅花のものがたり」のみどころを紹介いたします。

 

 

みどころ①

『浅葱色麻地菊水模様裏紅染女児着物』藍染に手描きの菊模様を配し、裏地は紅染めです。紅色のもので身体をつつむことで疫病(特に天然痘)を除けるとの言い伝えがあり、可愛い女児の成長を願った着物です。美しい紅色を是非間近でご覧ください。画像

 

 

みどころ②

昭和26年、中学理科教師の鈴木孝男は、幻の花、紅花栽培復興に取組みます。その後88年の生涯をかけた紅花染研究の成果は、県内のみならず国内の染色関係者にも大きな影響を与えました。本展ではその知られざる研究の一端を紹介しています。

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みどころ③

藍と紅花の色彩には、玉虫色に輝く瞬間があります。藍建てでは、「もう染められますよ」という合図の藍華、紅花は高純度の口紅、笹紅です。発酵という過程が美しい色彩を生み出す二つの色。計り知れない自然の力を感じます。

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みどころ④

1%しかない紅の色素を取り出すために、黄色色素が染まらない麻や綿を赤色色素で染色し(ぞくといわれる)、それを灰汁につけ再抽出します。この純粋な紅の染色液で幾度も染めることできらめくような色彩が生まれるのです。

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みどころ⑤

長板中形は型紙で糊置き防染する技法です。表裏に寸分違わず糊置きされ、藍に浸され白地が際立つ浴衣地になります。江戸時代木綿の普及とともに大人気となった藍染。染め残すことで表れる白い模様の美しさと伝統の技術を是非ご覧ください。

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みどころ⑥

奈良時代、紅花の濃染は「紅の八塩」といわれ何度も染められた深紅のことでした。高価で『禁色』となっても平安貴族たちを魅了し『韓紅』と呼ばれ憧れの色となりました。高い染色技術で染められた様々な紅染の色彩を堪能しにご来館ください。

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みどころ⑦

藍と紅の色彩は様々な伝統技術でさらに美しさが際立ちます。「紅藍暈地相良玉結刺繍桜流水模様小袖」は藍と紅花の暈染めに玉結びを繰り返して模様を表現する相良刺繍の立体感が見事です。裾に描き出される美しい情景から目が離せません。

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みどころ⑧

静かな展示室で美しい手技と自然の色彩の着物たちを見ていると、糸や布をなぜ染めたのかをしみじみ感じる事が出来ます。美しい色は、日本人の暮らしと心を様々な意味で豊かにしてきたのですね。

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みどころ⑨

消えゆく伝統の手業をつなぐには何が必要か。材料、素材、道具、製品を作る人の生計が立たなければ、途絶えてしまう技術。日常に取り入れるためにまず知ることが大切だと思っています。ぜひ展示室で藍と紅花の伝統と現在を知ってください。

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みどころ⑩

藍染の伝統を現代の暮らしに近づけようとしている作家たちが活躍しています。繊細な紙や目の詰んだドリッパーバックを染めた藍の色彩の新たな表情を見せてくれます。いつまでも見ていられる用の美です。展示は31日まで、ぜひご来館ください。

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みどころ⑪

『紅花絵巻』には江戸時代から続く紅花栽培、紅餅づくり、出荷や輸送などが時系列にぞって描かれています。注目すべきは、紅餅作りの工程です。鈴木孝男はこの絵巻との出会いで紅染め研究への糸口をつかんだといいます。展示は31日まで。

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皆さまのご来館を心よりお待ちしております。

 

【お問い合わせ】

米沢市上杉博物館  0238-26-8001

2025.08.31:denkoku:[博物館情報]

令和7年度 上杉文華館「謙信・景勝に手紙を出す」⑥

令和7年度 上杉文華館「謙信・景勝に手紙を出す」②

令和7年度の上杉文華館は「謙信・景勝に手紙を書く」と題して、国宝「上杉家文書」などを展示します。

 戦国時代、書状は一定の規則に則って書かれました。このような規則を書札礼といい、差出人と受取人の関係が反映されていました。それをまとめた書札礼書 も作られました。そこには差出者の社会的地位に応じた規範が示されています。その適用は厳密であり、ゆえに実際の書状の書き方から両者の関係を知ることも できます。東国の大名間では、差出は実名に花押、宛名は名字に殿の尊称という表記が、原則的に対等な関係を示していました。特別な内容や礼状などでは、宛名に「謹上」のような上所、差出の実名に官途や姓などを加えて厚礼とし、より丁寧な気持ちを表すこともありました。

 永禄4年(1561)、謙信(長尾景虎)は上杉憲政から名跡と関東管領の地位を譲られ、上杉氏を名乗ったことはよく知られています。これによって謙信、景勝 はその地位に応じた書状を受け取ることになりました。宛名には、「上杉殿」や「上杉弾正少弼殿」などの名字を冠したもの、「山内殿」や「越府」、「春日山」 などの地名を記すもの、また本人ではなく、報告を求めて側近に宛てたものなどがみられます。これらは差出人の立場によって選ばれますが、その基準をみていくことで、謙信や景勝の地位、諸大名家の権力構造、東国社会の変容などがみえてくると思われます。

2025年度はこの解明に取り組んでいきます。

 

第6回《地名に送る》

 

 【展示期間】8月28日(木)~9月23日(火祝)

 

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 第6回目は、宛名に地名を書くことがテーマです。このような書き方を「小路名 こ う じ な 」といいます。「山内殿」の山内も、謙信が継いだ上杉氏が鎌倉で屋敷を構えて いたところなので、小路名ですが、今回はそれ以外の地名をみます。謙信・景勝宛にみられるのは「越府 え っ ぷ 」と「春日山」が主たるものです。ほかに「府内 ふ な い 」も1点 だけあります。これらは「山内殿」を使う大名よりも規模の小さい「国衆 くにしゅう 」に位置付けられる領主が主に使っていたと考えられます。「国衆」は規模は小さいなが ら、戦国大名同様の支配を行う存在でした。もっとも、「越府」と「春日山」の使い分けについては、はっきりとしないことが多く、今後の研究の深化が必要です。  また、「国衆」であっても、これらの小路名を使わず、より謙信・景勝に厚礼 こうれい な書札礼 しょさつれい である「披露状 ひろうじょう 」の様式を用いる領主もいました。これは謙信・景勝に直 接宛てずに、その側近や重臣に宛てて、伝達(披露)を求めるというものでした。そのような違いの理由にも目を向けていきます。

 

▼ コレクショントーク

 日時:9月7日(日)  14:00

 場所:常設展示室 上杉文華館

 ※入館料が必要です。

 

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皆さまのご来館を心よりお待ちしております。

 

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米沢市上杉博物館  0238-26-8001

2025.08.28:denkoku:[博物館情報]