朝日町エコミュージアム|大朝日岳山麓 朝日町見学地情報
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大谷風神祭の神事
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大谷風神祭の神事について
お話 豊嶋宏行さん(白山神社宮司)
■風祭りについて
私は大谷白山神社の代々の神職ではなく、南蔵院の小野さんから船渡の日月神社の田原さんが引き継ぎ、次に私の祖父、そして私が受け継いだ。
風神祭(風祭り)は、白山神社だけでなく農村地区ではよく行われている。特に朝日町ではほとんどの神社で行われている。氏子の人達にとっては稲作が重要。秋の稲刈りまで風や雨、洪水などの災害がないように風神、氏神様に祈る祭典。風神のためのお祭りではない。立春から数えて二百十日目が9月1日にあたる。その日からよく台風が来るということで、その前日に前もってお祭りするのが白山神社の風祭りだ。
■神事について
どの神社も同じだが、まず参列された皆様をお祓いして、お清めしてから、お供え物を捧げ、祝詞を奏上、玉串奉奠(たまぐしほうてん)という形でご参拝していただく。最後にお供え物を撤下(てっか)して終わる。その流れはどの神社も同じように斎行している。
白山神社には、大谷の村中にあった神社8社が合祀されている。その神々に風の災いが起きないようにお願いするとともに、併せて奈良県の龍田大社に風の神様として祀られている志那津彦命・志那津姫命(しなつひこのみこと・しなつひめのみこと)を、氏神神社を通して遥拝する。遠くからお参りするという意味合いでお祭りをする。祝詞では「龍田大社の志那津彦・志那津姫命を遥かに拝(おろがみ)奉る」と申し上げる。
■貴重な白山神社の笙
神事の中で、お供えする時や玉串で拝礼する時に楽(がく)を奏するところがあり、笛を吹いてもらっている。
白山神社に笙が有るのを見つけた。音が鳴らなかったので直すことになり、調べたら大正15年のもので、楽器屋さんによると、蒔絵も入っている素晴らしい立派な笙で、相当吹いている痕跡があるということが分かった。
今の白山神社の楽奏は篠笛しかないが、もしかしたら笛や篳篥(ひちりき)の三管がそろって、譜面もあって、盛んに楽をしていたのではないか。
現在の白山神社の篠笛の皆さんは、氏子区域から選ばれた人を養成しているが、日本では、楽家という家柄があって、代々平安時代から引き継いでいる。有名な東儀秀樹も篳篥の楽家。この辺だと谷地八幡宮の林家も奈良出身の笙専門の楽家だ。大谷も京都からいらした先祖と聞いているのでそういう人がいたのかも知れない。
■神輿渡御/分霊の移動
白山神社では、そのあと町の中にご利益が行くように町の中を練り歩く「神輿渡御(みこしとぎょ)」を行っている。神様が町内を回る事を神幸(みゆき)と呼ぶ。
まず、神輿の中に、白山大神様のご神体の一部の分霊(わけみたま)を移動しなければならない。神様に「これからこちらの神輿にお遷りいただいて行列を組んで町を回りますよ」という祝詞を申し上げる。
そして、社殿内を暗くしてご神体を移動する。実は、ご神体には光を当ててはならないので、昔からお祭り自体は日が沈んでからするのが本当。そういうことをしている所は少なくなった。
分霊を御神輿に遷す時は、暗くして「おーっ」という警蹕(けいひつ)を掛ける。神職は手袋とマスクをして、ご神体にけっして息が掛からないようにしてそっと移動する。
白山神社の分霊は、藁で編まれたマントのような風を思わせるもの。そんなに大きくはない。それをご神体がわりとして御神輿の中に移す。それは誰にも見せないので総代さんたちも知らない。私が前宮司から引き継いだ時にそれを分霊とすることを受け継いだ。
ご神体は別にある。本殿の中には神仏習合時代のたくさんの仏像があって、どれがどの神様のご神体かは私も確認できていない。立派な金襴の小さな社があって、そこにご神体が入っている。それに関しては神職も見た事がない。基本的にご神体を見る事は恐れ多くて神職もしない。よく見たいという方がいるが断っている。
■神輿渡御/行列について
行列は天狗から始まるが、実は猿田彦命(さるたひこのみこと)という神様。古事記にあるように天津国から天照皇大神の子孫、ニニギノミコトが高葦原瑞穂國(たかあしはらのみずほのくに)=日本を治めるために降りてきた時に先導した神。天狗のような恰好をしていたといわれていて、あのような装束になっている。神幸の際はどこでも必ず猿田彦命が先導する。
大獅子の露払いは、神様が通る道を清めて行く役割をしている。
楽人は、現在は太鼓だけだが、昔はやはり三管それぞれいたのかも知れない。
御神輿には分霊が載っていらっしゃるので、通った時には参拝していただきたい。お祈りに関しては、二拝二拍手一拝の基本はあるが、手を合わせるだけでもいいと思う。どういった形であれ、神様に祈ることが大事である。
神幸で私が神輿の後ろを歩くのは、神様を守るためお供する。本来は神輿の前にも先祓いの神職がいてお清めしながら歩く。
道の砂は、暗いから砂を目印にして歩くために、神幸の通る道に置いたのがはじまりではないか。特に獅子舞の人達は前が見づらく下を見て歩かなければならない。それに、各家にも神様が来るようにと繋げるようになっていったのだと思う。
■大谷ならではの田楽提灯
風祭りは龍田大社や諏訪大社では大きくやっているが、大谷の風祭りも全国的にいっても有名と言えるのではないか。大谷の方々はお盆よりも風祭りに帰省される方のほうが多いとも聞いている。平日でもたくさんの人が集まってくる。花火をお祭りで上げるのもめずらしい。
特に、田楽提灯を持ちながら行列するというのは特殊。他では見た事がない。どうしてこの風習があるのか大変興味深い。子供達が提灯に絵を描いて参加できるのもとてもいい風習だ。この経験が、大人になってもこの祭りを守り伝えて行こうという気持ちになるのではないか。
子供の参加を大切にしていかないと祭りはどんどん廃れていってしまう。今、神輿が町を練り歩けなくなった神社がどんどん増えている。小さな町に限らず大きな町でも同じ状態。神社は地域のコミュニティーの中心になってきた。神社のことを町の人達が力を合わせてやっていく。これができなくなると町は発展せず続いてもいかなくなるのではないか。
■白山神社例大祭について
7月の白山神社の例大祭は、現在は氏子総代さんと区長さんとだけで細々と斎行している。昔は、例大祭記念剣道大会が体育館ではなく境内で行われて大変賑やかだったとも聞く。神職としては、この例大祭が最も由緒ある日なので、ぜひ多くの村の人にお参りに来ていただきたい。
(取材/2012年7月18日安藤竜二・竹原忠一)
豊嶋宏行(とよしま・ひろゆき)氏
1978年生まれ 國學院大學文学部神道学科卒業。豊龍神社本務権禰宜。里之宮湯殿山神社兼務権禰宜。山形県神社庁協議員、山形県神道青年会会長。大谷白山神社をはじめ大江町2社を含む12社の宮司を務める。
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大谷風神祭の神事について
お話 豊嶋宏行さん(白山神社宮司)
■風祭りについて
私は大谷白山神社の代々の神職ではなく、南蔵院の小野さんから船渡の日月神社の田原さんが引き継ぎ、次に私の祖父、そして私が受け継いだ。
風神祭(風祭り)は、白山神社だけでなく農村地区ではよく行われている。特に朝日町ではほとんどの神社で行われている。氏子の人達にとっては稲作が重要。秋の稲刈りまで風や雨、洪水などの災害がないように風神、氏神様に祈る祭典。風神のためのお祭りではない。立春から数えて二百十日目が9月1日にあたる。その日からよく台風が来るということで、その前日に前もってお祭りするのが白山神社の風祭りだ。
■神事について
どの神社も同じだが、まず参列された皆様をお祓いして、お清めしてから、お供え物を捧げ、祝詞を奏上、玉串奉奠(たまぐしほうてん)という形でご参拝していただく。最後にお供え物を撤下(てっか)して終わる。その流れはどの神社も同じように斎行している。
白山神社には、大谷の村中にあった神社8社が合祀されている。その神々に風の災いが起きないようにお願いするとともに、併せて奈良県の龍田大社に風の神様として祀られている志那津彦命・志那津姫命(しなつひこのみこと・しなつひめのみこと)を、氏神神社を通して遥拝する。遠くからお参りするという意味合いでお祭りをする。祝詞では「龍田大社の志那津彦・志那津姫命を遥かに拝(おろがみ)奉る」と申し上げる。
■貴重な白山神社の笙
神事の中で、お供えする時や玉串で拝礼する時に楽(がく)を奏するところがあり、笛を吹いてもらっている。
白山神社に笙が有るのを見つけた。音が鳴らなかったので直すことになり、調べたら大正15年のもので、楽器屋さんによると、蒔絵も入っている素晴らしい立派な笙で、相当吹いている痕跡があるということが分かった。
今の白山神社の楽奏は篠笛しかないが、もしかしたら笛や篳篥(ひちりき)の三管がそろって、譜面もあって、盛んに楽をしていたのではないか。
現在の白山神社の篠笛の皆さんは、氏子区域から選ばれた人を養成しているが、日本では、楽家という家柄があって、代々平安時代から引き継いでいる。有名な東儀秀樹も篳篥の楽家。この辺だと谷地八幡宮の林家も奈良出身の笙専門の楽家だ。大谷も京都からいらした先祖と聞いているのでそういう人がいたのかも知れない。
■神輿渡御/分霊の移動
白山神社では、そのあと町の中にご利益が行くように町の中を練り歩く「神輿渡御(みこしとぎょ)」を行っている。神様が町内を回る事を神幸(みゆき)と呼ぶ。
まず、神輿の中に、白山大神様のご神体の一部の分霊(わけみたま)を移動しなければならない。神様に「これからこちらの神輿にお遷りいただいて行列を組んで町を回りますよ」という祝詞を申し上げる。
そして、社殿内を暗くしてご神体を移動する。実は、ご神体には光を当ててはならないので、昔からお祭り自体は日が沈んでからするのが本当。そういうことをしている所は少なくなった。
分霊を御神輿に遷す時は、暗くして「おーっ」という警蹕(けいひつ)を掛ける。神職は手袋とマスクをして、ご神体にけっして息が掛からないようにしてそっと移動する。
白山神社の分霊は、藁で編まれたマントのような風を思わせるもの。そんなに大きくはない。それをご神体がわりとして御神輿の中に移す。それは誰にも見せないので総代さんたちも知らない。私が前宮司から引き継いだ時にそれを分霊とすることを受け継いだ。
ご神体は別にある。本殿の中には神仏習合時代のたくさんの仏像があって、どれがどの神様のご神体かは私も確認できていない。立派な金襴の小さな社があって、そこにご神体が入っている。それに関しては神職も見た事がない。基本的にご神体を見る事は恐れ多くて神職もしない。よく見たいという方がいるが断っている。
■神輿渡御/行列について
行列は天狗から始まるが、実は猿田彦命(さるたひこのみこと)という神様。古事記にあるように天津国から天照皇大神の子孫、ニニギノミコトが高葦原瑞穂國(たかあしはらのみずほのくに)=日本を治めるために降りてきた時に先導した神。天狗のような恰好をしていたといわれていて、あのような装束になっている。神幸の際はどこでも必ず猿田彦命が先導する。
大獅子の露払いは、神様が通る道を清めて行く役割をしている。
楽人は、現在は太鼓だけだが、昔はやはり三管それぞれいたのかも知れない。
御神輿には分霊が載っていらっしゃるので、通った時には参拝していただきたい。お祈りに関しては、二拝二拍手一拝の基本はあるが、手を合わせるだけでもいいと思う。どういった形であれ、神様に祈ることが大事である。
神幸で私が神輿の後ろを歩くのは、神様を守るためお供する。本来は神輿の前にも先祓いの神職がいてお清めしながら歩く。
道の砂は、暗いから砂を目印にして歩くために、神幸の通る道に置いたのがはじまりではないか。特に獅子舞の人達は前が見づらく下を見て歩かなければならない。それに、各家にも神様が来るようにと繋げるようになっていったのだと思う。
■大谷ならではの田楽提灯
風祭りは龍田大社や諏訪大社では大きくやっているが、大谷の風祭りも全国的にいっても有名と言えるのではないか。大谷の方々はお盆よりも風祭りに帰省される方のほうが多いとも聞いている。平日でもたくさんの人が集まってくる。花火をお祭りで上げるのもめずらしい。
特に、田楽提灯を持ちながら行列するというのは特殊。他では見た事がない。どうしてこの風習があるのか大変興味深い。子供達が提灯に絵を描いて参加できるのもとてもいい風習だ。この経験が、大人になってもこの祭りを守り伝えて行こうという気持ちになるのではないか。
子供の参加を大切にしていかないと祭りはどんどん廃れていってしまう。今、神輿が町を練り歩けなくなった神社がどんどん増えている。小さな町に限らず大きな町でも同じ状態。神社は地域のコミュニティーの中心になってきた。神社のことを町の人達が力を合わせてやっていく。これができなくなると町は発展せず続いてもいかなくなるのではないか。
■白山神社例大祭について
7月の白山神社の例大祭は、現在は氏子総代さんと区長さんとだけで細々と斎行している。昔は、例大祭記念剣道大会が体育館ではなく境内で行われて大変賑やかだったとも聞く。神職としては、この例大祭が最も由緒ある日なので、ぜひ多くの村の人にお参りに来ていただきたい。
(取材/2012年7月18日安藤竜二・竹原忠一)
豊嶋宏行(とよしま・ひろゆき)氏
1978年生まれ 國學院大學文学部神道学科卒業。豊龍神社本務権禰宜。里之宮湯殿山神社兼務権禰宜。山形県神社庁協議員、山形県神道青年会会長。大谷白山神社をはじめ大江町2社を含む12社の宮司を務める。
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