朝日町エコミュージアム|大朝日岳山麓 朝日町見学地情報
朝日町エコミュージアム|大朝日岳山麓 朝日町見学地情報
海野秋芳を聴く/いとう柚子氏(詩人)
九月はじめ一枚のCDが届いた。その一週間ほど前の山新に、朝日町が生んだ詩人海野秋芳の詩を、町の有志グループ「燭の会」が朗読しCDに収めたという記事が出ており、早速朝日町エコミュージアムを通して取り寄せたのだった。
海野秋芳については、『やまがた現代詩の流れ-2006/やまがたの詩の存在-』で、鈴木直子氏による紹介文を通してはじめて知った。大正六年(1917)生まれの海野秋芳は十六歳で小学校高等科を卒業し上京、薬局の住み込み店員となる。詩に目覚めたのはこの頃だが、その後泉與史郎に師事し本格的に詩作に取り組み、精力的に作品を発表する。薬局を退職後金属工業所の職工として働くが、腎臓結核で太平洋戦争のさ中、昭和十八年(1943)二十六歳の若さで夭折した。
今回CDとして世に出されたのは、詩人25歳の時に発刊された、唯一の詩集『北の村落』の朗読。町で五年前に開催された「海野秋芳シンポジューム」の参加者の中から数人が集まり「秋芳の詩を読む会」を結成、「燭の会」と名づけ、月一回の集まりで彼の作品を読み解く活動を重ねてきたとのこと。CDには高村光太郎から寄せられた序文と34編の作品すべてを載せたブックレットも添えられている。朗読は、11人の会員がそれぞれ3〜4編を担当しているが、最年少のメンバーは秋芳の大甥にあたる青年で、詩人が亡くなったときとほぼ同じというのも縁のように思われる。
CDからはじめに流れてくるのは、どこか懐かしい想いにつつまれるメロディー。電子音楽による手作りの曲は朝日連峰の裾野を吹きすぎる風のようだ。集中何度か挿入され特注ののテーマ・ミュージックといったところ。
高村光太郎の序文に続いて詩の朗読がはじまる。ふるさとの風景や情景、当時の貧困にあえぐ寒村の様子、その故郷への思慕、労働にたずさわる者の思索、そして戦争への複雑な感情-、様々なテーマの作品が、淡々と、読み続けられる。ドラマティックな展開やパフォーマンス的な表現はほとんどない。感情移入も極力抑えられているように思われる。演劇や朗読のプロ、あるいはセミ・プロ的な人が読めば、ずっと違った〈作品〉に仕上がったであろう。率直に言わせてもらえば、いわゆる‘上手な朗読’とはいえないものもある。また‘正しいアクセント’や‘イントネーション’などにこだわって、注文をつけようと思えばいくらでもつけることはできるかもしれない。が、そんなことはここでは瑣末なことだと思わずにいられない。読み手は、生半可な色などつけずに、それぞれの詩のことば一つひとつをていねいに、いとおしむように読んでいる。むしろそれ故に聴き手は自分なりの秋芳の世界をイメージすることができるといってもいい。
小さな町で制作された素朴な一枚のCDから、海野秋芳はわたし(たち)の宝物」という、会の人々の熱い想いがまっすぐに伝わってきて、手放しで嬉しく、同時に詩人生誕100年にあたる2017年の、詩集『北の村落』復刻版の出版を心から応援したい気持ちでいる。
最後に短い作品をふたつ紹介しよう。
故園
あの頃のほころびを
木綿針でつついて
日向ぼっこの婆さんがいる
土
この生活(くらし)になれても
苔むした無縁墓石に
何の希(ねがい)をかけようか
都会がへりの人見れば
ゆらぐこのこころ
聞かないでくれ
粧ひのまぶしさ
百千の金 何になろう
稲穂天を指す秋
一杯の粥すすりあふても
しぶとく生き抜いて
俺ら
みのりする秋を知っている
『E詩14号』( E詩の会 2009.10発行)より抜粋
朝日町エコミュージアム協会
:[
メモ
/
12.五百川峡谷エリア:詳細について
]
Home
ニュース&イベント情報
ニュース&イベントデータ
朝日町エコミュージアムの訪ね方
01.朝日連峰エリア
01.朝日連峰エリア:見学場所
01.朝日連峰エリア:住民学芸員のお話
01.朝日連峰エリア:詳細について
01.朝日連峰エリア : 関連団体・書籍
01.朝日連峰エリア : 関連もよおし
01.朝日町から見える大朝日岳ビューポイント33
02.朝日川エリア
02.朝日川エリア:見学場所
02.朝日川エリア:住民学芸員のお話
02.朝日川エリア:詳細について
02.朝日川エリア : 関係団体・書籍
03.空気神社エリア
03.空気神社エリア:見学場所
03.空気神社エリア:住民学芸員のお話
03.空気神社エリア:詳細について
03.空気神社エリア : 関係団体・書籍
04.佐竹家エリア
04.佐竹家エリア:見学場所
04.佐竹家エリア:住民学芸員のお話
04.佐竹家エリア:詳細について
05.八ッ沼エリア
05.八ッ沼エリア:見学場所
05.八ッ沼エリア:住民学芸員のお話
05.八ッ沼エリア:詳細について
05.八ッ沼エリア : 関係団体・書籍について
06.椹平の棚田エリア
06.椹平の棚田エリア:見学場所
06.椹平の棚田エリア:住民学芸員のお話
06.椹平の棚田エリア:詳細について
06.椹平の棚田エリア : 関係団体・書籍
07.豊龍神社エリア
07.豊龍神社エリア:見学場所
07.豊龍神社エリア:住民学芸員のお話
07.豊龍神社エリア:詳細について
08.館山エリア:見学場所
08.館山エリア:住民学芸員のお話
08.館山エリア : 詳細について
08.館山エリア : 関係団体・書籍
09.町のりんごエリア
09.町のりんごエリア:見学場所
09.町のりんごエリア:住民学芸員のお話
09.町のりんごエリア:詳細について
09.町のりんごエリア : 関係団体・書籍
10.沢内エリア
10.沢内エリア:見学場所
10.沢内エリア:住民学芸員のお話
10.沢内エリア:詳細について
11.杉山と長谷地エリア
11.杉山と長谷地エリア:見学場所
11.杉山と長谷地エリア:住民学芸員のお話
11.杉山と長谷地エリア:詳細について
11.杉山と長谷地エリア :関係団体・書籍
12.五百川峡谷エリア
12.五百川峡谷エリア:五百川峡谷の魅力
12.五百川峡谷エリア:見学場所(北部)
12.五百川峡谷エリア:見学場所(中・西部)
12.五百川峡谷エリア:住民学芸員のお話
12.五百川峡谷エリア:詳細について
12.五百川峡谷エリア:関係団体・書籍
12.五百川峡谷エリア:事業報告
五百川峡谷ビューポイント
14.秋葉山エリア
14.秋葉山エリア:見学場所(大谷)
14.秋葉山エリア:住民学芸員のお話
14.秋葉山エリア:見学場所(川行)
14.秋葉山エリア:詳細について
14.秋葉山エリア : 関係団体・書籍
13.大沼浮島エリア
13.大沼浮島エリア:見学場所
13.大沼浮島エリア:住民学芸員のお話
13.大沼浮島エリア:詳細について
13.大沼浮島エリア : 関係団体・書籍
15.大隅遺跡エリア
15.大隅遺跡エリア:見学場所
15.大隅遺跡エリア:住民学芸員のお話
15.大隅遺跡エリア:詳細について
15.大隅遺跡エリア : 関係団体・書籍
16.朝日町ワイン
16.朝日町ワイン:見学場所
16.朝日町ワイン : 住民学芸員のお話
16.朝日町ワイン:詳細について
17.朝日町全エリア
エコミュージアムルームだより
エコミュージアムショップ
朝日町エコミュージアム協会
リンク
住民学芸員
カテゴリー
メモ
メール
Q&A
暦
リンク
地図
ウィキ
特集
プラン
ケータイサイト
問い合わせ
プロフィール
All Rights Reserved by asahimachi ecomuseum
海野秋芳については、『やまがた現代詩の流れ-2006/やまがたの詩の存在-』で、鈴木直子氏による紹介文を通してはじめて知った。大正六年(1917)生まれの海野秋芳は十六歳で小学校高等科を卒業し上京、薬局の住み込み店員となる。詩に目覚めたのはこの頃だが、その後泉與史郎に師事し本格的に詩作に取り組み、精力的に作品を発表する。薬局を退職後金属工業所の職工として働くが、腎臓結核で太平洋戦争のさ中、昭和十八年(1943)二十六歳の若さで夭折した。
今回CDとして世に出されたのは、詩人25歳の時に発刊された、唯一の詩集『北の村落』の朗読。町で五年前に開催された「海野秋芳シンポジューム」の参加者の中から数人が集まり「秋芳の詩を読む会」を結成、「燭の会」と名づけ、月一回の集まりで彼の作品を読み解く活動を重ねてきたとのこと。CDには高村光太郎から寄せられた序文と34編の作品すべてを載せたブックレットも添えられている。朗読は、11人の会員がそれぞれ3〜4編を担当しているが、最年少のメンバーは秋芳の大甥にあたる青年で、詩人が亡くなったときとほぼ同じというのも縁のように思われる。
CDからはじめに流れてくるのは、どこか懐かしい想いにつつまれるメロディー。電子音楽による手作りの曲は朝日連峰の裾野を吹きすぎる風のようだ。集中何度か挿入され特注ののテーマ・ミュージックといったところ。
高村光太郎の序文に続いて詩の朗読がはじまる。ふるさとの風景や情景、当時の貧困にあえぐ寒村の様子、その故郷への思慕、労働にたずさわる者の思索、そして戦争への複雑な感情-、様々なテーマの作品が、淡々と、読み続けられる。ドラマティックな展開やパフォーマンス的な表現はほとんどない。感情移入も極力抑えられているように思われる。演劇や朗読のプロ、あるいはセミ・プロ的な人が読めば、ずっと違った〈作品〉に仕上がったであろう。率直に言わせてもらえば、いわゆる‘上手な朗読’とはいえないものもある。また‘正しいアクセント’や‘イントネーション’などにこだわって、注文をつけようと思えばいくらでもつけることはできるかもしれない。が、そんなことはここでは瑣末なことだと思わずにいられない。読み手は、生半可な色などつけずに、それぞれの詩のことば一つひとつをていねいに、いとおしむように読んでいる。むしろそれ故に聴き手は自分なりの秋芳の世界をイメージすることができるといってもいい。
小さな町で制作された素朴な一枚のCDから、海野秋芳はわたし(たち)の宝物」という、会の人々の熱い想いがまっすぐに伝わってきて、手放しで嬉しく、同時に詩人生誕100年にあたる2017年の、詩集『北の村落』復刻版の出版を心から応援したい気持ちでいる。
最後に短い作品をふたつ紹介しよう。
故園
あの頃のほころびを
木綿針でつついて
日向ぼっこの婆さんがいる
土
この生活(くらし)になれても
苔むした無縁墓石に
何の希(ねがい)をかけようか
都会がへりの人見れば
ゆらぐこのこころ
聞かないでくれ
粧ひのまぶしさ
百千の金 何になろう
稲穂天を指す秋
一杯の粥すすりあふても
しぶとく生き抜いて
俺ら
みのりする秋を知っている
『E詩14号』( E詩の会 2009.10発行)より抜粋