朝日町エコミュージアム|大朝日岳山麓 朝日町見学地情報

16.朝日町ワイン : 住民学芸員のお話
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お話 : 白田重明氏(朝日町ワイン総務部長)

〈朝日町ワインの歴史〉
 朝日町ワインの前身である山形果実酒製造有限会社は昭和19年(1944)に創業している。本社は山形市宮町にあり、工場が農協の大谷支所の所にあった。当時は軍の保護を受けてぶどう酒を作っていた。ぶどうに含まれる酒石酸が結晶すると「酒石」というきれいな結晶を作り、それが無線機の一つの部品になった。
 戦争が終わり必要なくなると、今度はサントリーの赤玉ポートワインの原料を作っていた。ところが、昭和50年頃に甘口ワインの需要が減り、納められなくなった。農家を守るのが農協の使命ということで、ぶどう酒を瓶に詰めて「サンワイン」として売ってみたが、飲めたものじゃなかった。
 私は昭和50年に農協に入り、町と共同出資のぶどう酒工場に勤めるようになったが、その頃の農協の宴会では、酒は豊龍、ビールはアサヒ、残るのはいつもサンワイン。なにしろポートワインは、砂糖と香味料と色素を入れて作るものだったので、大量の安いぶどうを原料にしていた。農家もたくさん成らせないと収入にならなかったので、あまり良いぶどうではなかった。それをそのまま瓶詰めして売ったから酸っぱくて飲めなかった。管理も悪いので、酢酸の菌がワインのアルコールを食べて繁殖し、酢の酸っぱさになった。それがワインだと思ってみんな飲んでいた。
 当時の白田要衛門組合長から、ワインが酸っぱくならない方法と美味しくなる方法を東京で勉強してこいと言われて行った。いろんな先生に習ったが、「科学的な方法よりも、問題は原料のぶどうにある」ということを教えられた。当時は一反歩から4〜5tのぶどうを成らせていたが、それではぶどうは小豆色位にしかならず黒く熟さない。完熟しないから酸っぱい。収量を半分の2t位におさえることを薦められた。
 さっそく農家の皆さんに価格を倍にして作ってもらった。量が少なくても単価が高ければ、経費も掛からないので農家にも好都合。そのように改善して昭和54年頃から良いぶどうが作れるようになり「朝日町ワイン」が生まれた。平成2年には、電話がきても名のりづらい「山形果実酒製造有限会社」の社名を改め、呼びやすい「有限会社朝日町ワイン」に変更することができた。
 その間、昭和50年頃からいろいろな農林水産省の補助事業をいただいて仕込み倉や貯蔵庫を整備できた。平成12年に試飲のできるワイン城と周りのぶどう畑を整備して、ついにワインを作っている場所という雰囲気になってきた。おかげさまでオープン以来徐々に観光客も増え、繁忙期の4月〜11月で2万5000人位いらしてもらえるようになった。売店の販売額も増えている。ワインの売れない時代だが、求め安い価格でおいしいワインを提供でき、会社としても流通と違ってマージンを取られないので大変良い施設となっている。
(お話 : 白田重明さん 平成22年2月)
続き

白田重明氏(しらた・しげあき)
昭和32年(1957)生まれ。昭和50年に上山農業高校を卒業し山形朝日農協に就職。山形果実酒製造(有)に出向し、国税庁醸造試験所(東京都)へ研修。翌年研修を終了し、ワイン醸造に取り組む。以後、フランス、ドイツ、スペイン、アメリカなど数回のワイン海外研修を重ねる。国産ワインコンクールの審査員を第1回(平成15年)より4年間務める。有限会社朝日町ワイン総務部長。山形県ワイン酒造組合・事業推進委員長。

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お話 : 白田重明氏(朝日町ワイン総務部長)

〈ワインの造り方〉
 ワインは大きく分けると赤ワインと白ワイン。原料は黒いぶどうと白いぶどうがある。
 赤ワインは黒いぶどうからへたの部分だけ取り除いて皮ごとつぶしてタンクにいれワイン酵母を入れて温度管理をして撹拌しながら2週間くらい発酵させる。皮に含まれるうまみ成分を出してから搾るのが赤ワイン。皮に含まれている色素や種にある渋みなどが入るので、赤ワインは酸味があって渋みがあって少しクセがある。それをタンクに入れて2~3年熟成させる。
 白ワインは白いぶどうをつぶしてすぐに搾り、果汁だけを発酵させる。皮の成分は搾る時に少し出るが、渋みや苦みがほとんどない。
 ロゼは白ワインと同じ製法で黒いぶどうを使って作る。これが基本的な三種類のワインの造り方。うちではやっていないが、赤ワインと白ワインを混ぜて造っているところもある。
 赤ワインはボデイがあり渋みなど味の幅がある。白ワインは軽めでフレッシュ感がある。たとえば、赤ワインは皮ごと仕込んだのを2週間かかるところを4日位で抜けば、通常の三分の一の色になる。

〈30種類のワイン〉
 色をうすく出す事ができる。白ワインは皮をすぐに取り除かないで二、三日浸けてから取り除皮のうまみが少し出る。そんなふうに少しずつ製法を変える事により様々な味のワインを作ることができる。売店にある30種類のワインはそうやって造っている。
(取材/平成22年2月)

白田重明氏(しらた・しげあき)
昭和32年(1957)生まれ。昭和50年に上山農業高校を卒業し山形朝日農協に就職。山形果実酒製造(有)に出向し、国税庁醸造試験所(東京都)へ研修。翌年研修を終了し、ワイン醸造に取り組む。以後、フランス、ドイツ、スペイン、アメリカなど数回のワイン海外研修を重ねる。国産ワインコンクールの審査員を第1回(平成15年)より4年間務める。有限会社朝日町ワイン総務部長。山形県ワイン酒造組合・事業推進委員長。

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お話 : 白田重明さん(朝日町ワイン総務部長)

〈オーナーワイン制度〉
 平成3年から始めたオーナー制度は、工場や畑の案内、収穫体験、芋煮会形式の交流会を開いている。開始当時は5年後にワインが送られる方法だったので次第に入る方が減ってしまう問題があった。平成6年からは、白ワインは1年後、赤ワインは2年後の短期のオーナー制度に変えた。現在は全国から250人の会員で350口数入っていただいている。交流会は半分の120人位の会員+家族で350人位の集まりになる。ワインは置いておけばおくほど良くなるものではないので、作っておいしい時に飲んでもらって、また次の生産につなげることが大事だと思っている。そのためにも、商売のみに終わらず、届くワインがどういう場所で、どういう人達が関わって、どういう風にして作られているかということを伝えられるとてもいいシスデムだと思っている。

〈親子体験事業〉
 もう一つ2002年から中学3年生の親子体験事業に取り組んでいる。当時の学年委員長だった松谷屋の白田和好さんと相談してブドウのもぎ取りを始めた。カベルソービニヨンというぶどうは5年熟成させるとおいしくなる。樽で2年。瓶につめて3年。15歳の三年生が成人する頃にちょうど良くなる。いただいた体験料をあてて成人式の4月29日に届けるようにしている。成人を祝う初めてのお酒は朝日町ワインを飲んでもらいたいし、町や県から出ていった時に朝日町ワインのことを話せるようになってもらいたいと願っている。ラベルは5年前にいただいたグループごとの写真をレイアウトして貼っている。結婚式で、オリジナルラベルを貼ったワインを使う方も増えている。少しずついい方向に繋がってきていると感じているので大事に続けていきたい。

〈畑に来て欲しい〉
 ワイン城に一番人が訪れるのは、サクランボの季節や10月頃。見学にいらしたお客様に一番面白いと好評なのは、タンクや機械の工場の説明よりも畑。畑には入っていけないと思っているので、なるべく声かけして入ってもらっている。たとえば、カベルソービニヨンの完熟前のピーマンのような香りを嗅いでもらう。どこかで買ったカベルソービニヨンワインにピーマンの香りがしたら、完熟前のぶどうを使ってしまったことになる。そんなことをお話しすると、納得して帰られる。畑には畑でしか体験できないことがある。
(取材/平成22年2月)

白田重明氏(しらた・しげあき)
昭和32年(1957)生まれ。昭和50年に上山農業高校を卒業し山形朝日農協に就職。山形果実酒製造(有)に出向し、国税庁醸造試験所(東京都)へ研修。翌年研修を終了し、ワイン醸造に取り組む。以後、フランス、ドイツ、スペイン、アメリカなど数回のワイン海外研修を重ねる。国産ワインコンクールの審査員を第1回(平成15年)より4年間務める。有限会社朝日町ワイン総務部長。山形県ワイン酒造組合・事業推進委員長。
※写真は朝日町ワインホームページより抜粋
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お話 : 白田重明さん(朝日町ワイン総務部長)

〈ロゼ部門3年連続最優秀カテゴリー賞受賞〉
 国産ワインコンクールが始まった7年前から出展している。審査は瓶に黒いビニールを巻いてどこのワインか分からないようにして行われる。一年目は出品したが全く受賞できなかった。二年目にセレクトルージュの赤が入賞した。そして3年目に3アイテム、4年目には4アイテムが入賞した。転機になったのは2006年に「マスカットブラッシュ夢色」が銅賞を受賞したこと。1100円のものが受賞した。
 元々ロゼはあまり売れなかった。10年位前の赤ワインブーム以前の売れる割合は、赤ワインは2割、 白ワイン7割、ロゼワインは1割。ブーム後は、赤ワイン6割、白ワイン3割、ロゼワイン1割。朝日町ワインは、はじめ赤ワインを作り、次にロゼワインを作った。その後、白ワインを作れるようになって売上が伸びてきた。反面、ロゼワインはだんだん売れなくなって、作る意欲もなくなってきていた。味が悪くなって廃棄処分したこともあった。
 2004年に若手の醸造担当職員から「一タンク作ってみたい」と申し出があり、真面目に作らせてみた。それが二年後に受賞した。「まぐれでもたいしたものだ」と、みんなで大変喜んだ。これ位認められるならとまた頑張って作り、翌2007年には、なんと銀賞のロゼ部門最優秀カテゴリー賞をもらった。2008年にもマスカットブラッシュ夢色が同じ銀賞のロゼ部門最優秀カテゴリー賞をもらった。そして2009年にロゼがまたもらった。3年連続でロゼが受賞した。合計では7アイテムも入賞するに至った。

〈スパークリングワイン〉
 はじめて入賞したスパークリングワインのナイアガラとミュラーは、営業に回っている職員がこれからはスパークリングワインの人気が出て来ることを察知して、作ってみたのがはじまり。まずはノズル一本の機械を買って作り、販売してみたら評判がよく、今度はノズル3本の機械やエアーで詰める設備を整備して、需要に堪えられるようにした。営業で得てきた情報をうまく生産につなげるようにしている。
 大手のようによそからぶどうを仕入れて作るのではなく、朝日町産のぶどうでワインを作り、賞を取ることにこだわっている。今年もいくつ入賞するかは分からないが出展することにしている。
(取材/平成22年2月)

白田重明氏(しらた・しげあき)
昭和32年(1957)生まれ。昭和50年に上山農業高校を卒業し山形朝日農協に就職。山形果実酒製造(有)に出向し、国税庁醸造試験所(東京都)へ研修。翌年研修を終了し、ワイン醸造に取り組む。以後、フランス、ドイツ、スペイン、アメリカなど数回のワイン海外研修を重ねる。国産ワインコンクールの審査員を第1回(平成15年)より4年間務める。有限会社朝日町ワイン総務部長。山形県ワイン酒造組合・事業推進委員長。

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お話 : 白田重明さん(朝日町ワイン総務部長)

〈ワインは飲めば分かる〉
 ワインそのものの説明については、いつも「飲んでいただくと一番わかる」と説明している。ドブ臭かったり靴下の汗くさい臭いのするワインが、仮にあったとしたら大変な事(笑)。タンクが不衛生で雑菌が入ってしまい変な熟成がしたものをそのまま瓶詰めしたことになる。

〈売店のジュースがおいしい理由〉
 ワイン用のぶどうはおいしくないと思われがちだが、ワインがおいしいということは、ぶどうもおいしい。食用の水っぽいおいしさとは違うが、皮ごと噛んでいると味わい深さを楽しめる。売店で出しているマスカットベリーや山ぶどうのジュースがその証拠。子供や運転する人など試飲できない人のために置いてあるが、とてもおいしいと評価をいたただいている。あのジュースがおいしくなかったらうちのワインはすべておいしくないということになる。いいぶどうを使っていることをあのジュースで表している。

〈古いワインについて〉
 よく頂き物などの古いワインが飲めるかどうか問い合わせがあるが、栓を開けて匂いをかいで酸っぱい香りがするものは料理に使えばいい。透かして見てくもりガラスのように濁っているものは
飲まない方がいい。ただし、くもったものが下の方に沈殿していて、上のほうは透明感がある場合は上だけを飲める。濁ったものは元々ワインに溶け込んであった成分が年数経って結晶して落ちたもの。静かに別の容器に移し替えて飲めばいい。

〈白田さんのやりがい〉
 朝日町ワインで働きはじめた昭和50年から35年になった。近頃はワイン作りの現場から離れて畑にいることが多くなった。10数年前からワインの作り方を教えた若手の職員たちが、現在意欲的にワインを作ってくれているのがなにより嬉しい。私は現在、畑から朝日町ワインの全体を見つめる役割を担っている。
(取材/平成22年2月)
※写真は畑を案内する白田さん
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白田重明氏(しらた・しげあき)
昭和32年(1957)生まれ。昭和50年に上山農業高校を卒業し山形朝日農協に就職。山形果実酒製造(有)に出向し、国税庁醸造試験所(東京都)へ研修。翌年研修を終了し、ワイン醸造に取り組む。以後、フランス、ドイツ、スペイン、アメリカなど数回のワイン海外研修を重ねる。国産ワインコンクールの審査員を第1回(平成15年)より4年間務める。有限会社朝日町ワイン総務部長。山形県ワイン酒造組合・事業推進委員長。